「部長、この前の御報告をしたいので少しばかり、お時間を頂けないでしょうか」と帰 り支度を済ませたローラが、加賀美の机の側ヘ来て言った。 「うまく進んだかね、今日は大した仕事もないからお茶でも飲みに行こうか」 会社の近くにあるルノアールという喫茶店でコーヒーを注文すると、加賀美は単刀直入に切り込んだ。 「結婚することに話は纏まったの」 「はい。お陰様でなんとか纏まりました」 「相手は誰ですか。まさか社内の人間ではないでしょうね」 「ところがそうなんです、会社の工事課にいる珠洲河昴さんです」 「えっ、入社二年目の彼が」 「よく、社内の噂にもならずに巧くやったね」 「苦労しました」 「御両親は了解されましたか」 「はい。苦労しましたが、やっと納得してくれました」 「一番反対された点は何処でした。年齢ですか、それとも経済基盤」 「両方です。特に経済基盤のことを言われました。でもこれは子供ができるまで共稼ぎすれば克服できることですし、親と同居することにしましたので家賃もかかりませんし」 「それは良かった。だけど子供が生まれたら、幼稚園だ、学校だで費用は掛かるし働くことも難しくなると思うがね」 「それは、覚悟のうえです。母が孫の面倒は見てあげると言ってくれていますし」 「でも、どうしても分からないのは、あなたのように美人で聡明な女性が何故年下の男性と結婚するかということです。いくら流行りとは言え8才も年下とは」 「今だから言いますが私には人間のタブーを破った血が流れているのです」この言葉を口にした時のローラの顔は青ざめていたが、目の輝きは何かを思い詰めたもののみが持つ有無を言わせぬ険しいものであった。
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