
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
kai
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2025年06月07日(土) ■ |
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『昭和から騒ぎ』 |
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シス・カンパニー『昭和から騒ぎ』@世田谷パブリックシアター
ア゛ーーシェイクスピアのロマコメってイライラする〜〜(笑)それは何故か? というのを昭和という時代を通して丁寧に腑分けして見せられた気分。また役者が揃って巧いもんだからも゛ーーー ナレーターも豪華! 『昭和から騒ぎ』
[image or embed] — kai (@flower-lens.bsky.social) Jun 7, 2025 at 21:38
ロマコメというかラブコメか。
あれよ、シェイクスピアくらいになると「あー、当時の価値観はそうだったんですよね。大昔だもんねー」で笑って済ませられるんですが、それが昭和の設定となると、微妙〜な昔なのでその変わってなさに余計イライラ度が増すんですよ(笑)。令和の今観たからこそ、かも知れません。つまり観る側の価値観はアップデートされている。『から騒ぎ』の初版は1600年、つまり425年前。今作の舞台設定は昭和25年とのことなので75年前。ちなみに今年は昭和100年だそうです。
三谷幸喜による翻案上演。舞台は鎌倉となっています。昭和の鎌倉といえば小津安二郎。美術(松井るみ)、衣裳(前田文子)、ヘアメイク(佐藤裕子)もそれを意識したと思われるテイスト。これは眼福でした。白いブラウスに白いスカート(照明によってはセピア寄りのアイボリーに見える)、原節子のような佇まいの宮沢りえの美しいこと! その宮沢さんが堂に入った阿波踊りを披露する衝撃! ここでいちばん笑った。つまり台詞によるものではないシーンがいちばん面白かった。あとカーテンコールの大泉洋の話芸ね。本編関係ないやん。
舞台設定はうまいことアレンジされている。屋敷の縁側と客間でストーリーが繰り広げられ、花火大会がハレ、縁側がケというシチュエーションになっているのが素敵。少し大仰に聴こえる言葉のやり取りも、昭和30〜40年代の映画を意識したのかなと思えば違和感はない。大泉さんのリアクション芸とボヤキ芸、高橋克実のボケ芸、山崎一のスットボケ芸、竜星涼の天然芸。そして素晴らしかったのは峯村リエの間の巧さ。若手ふたり(松本穂香、松島庄汰)も汗臭さを感じさせないスマートさ。役者が揃いも揃って巧い。
作品紹介にある「聞き耳、立ち聞き、盗み聞き…/虚実が飛び交い、騙し騙され振り振られ」を楽しめるかどうかでも好みが分かれそうです。あとゴシップ好きかどうか。立ち聞きするなよ。盗み聞くなよ。と思ってしまうひと(私だ)は終始イライラしっぱなしになります。そうね、私『家政婦は見た!』を観るとうんざりするもん。『家族八景』も「七瀬早くお暇もらって!」って感想がいちばんに来るもん。
皮肉として楽しめるところもありますが、素直にドッカンドッカン笑うには引っ掛かりが多過ぎた。身体的特徴をあげつらうところとか、本人も普段自虐ネタとしていることではあるけどやっぱり気持ちのいいものではありません。「しょうがねえなあこのひとたち」という笑いが憐れみを帯びるようになってくる。憐れむ笑いって虚しいんですよね。この家に母親が不在なのは何故か、という説明が舞台上ではされないところにすら含みを感じてしまう程でした(ニッコリ)。
これで「あーやっぱシェイクスピアって、三谷幸喜って面白い!」「昭和っていい時代!」と思える観客がどのくらいいるだろう、という疑問が残ります。これだけのキャストを揃えられるプロダクションは決して多くない。それなのに……? と首を傾げてしまう。なんか勿体ないなー、恋にときめく大泉さんと宮沢さん、とても愛らしかったんだけどなあ。役者を堪能する、という意味ではいい公演だったのかな。
導入のナレーションが昭和のテレビ番組の──これも30〜40年代辺りのものに限られるかな──テイスト。観る側を昭和気分にスイッチングするいい効果になっていました。ちなみにこれ、最後の最後にナレーターが誰か明かされて場内がどよめいた。ニュース読むときと全然声のトーンが違う! お見事でした。
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河合祥一郎さんによる新訳なんでこんなチラシも入ってました
[image or embed] — kai (@flower-lens.bsky.social) Jun 7, 2025 at 21:49
KADOKAWAから河合さんで全訳出す予定があるようです。近年シェイクスピア作品だと認定された4作品中2作も本邦初訳されるとのこと。 「河合祥一郎訳(KADOKAWA版)はこんなにすごい!」という圧強めの文言もあり、「新刊を出すには、既刊をたくさんの方々に読んでいただかなくちゃ!」「新作を読みたいと思ったあなた! ぜひともご購読ください」とも書かれていたのが昨今の翻訳出版事情を反映していてせつない。いやホントこの業界苦しいですよね……(悲)
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