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2025年08月03日(日)
高橋徹也 × 山田稔明『YOU'VE GOT A FRIENDーCan we still be friends?』

高橋徹也 × 山田稔明『YOU'VE GOT A FRIENDーCan we still be friends?』@good tempo

いや〜よかった、 納涼〜

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— kai (@flower-lens.bsky.social) Aug 4, 2025 at 1:43

オープンしたてのgood tempoは教室をリノベしたカフェ&ライヴスペース。オープンキッチン、鉢植えの緑があちこちに置かれており、DJブースもフロアと地続き。客入れDJってどなただったんだろう? 格好いい選曲にサイレンや鳥の声といったSEを噛ましていて印象的。で、もうこの時点で音がいい。スピーカー(カフェ用とは思えないくらいデカい)の配置もあるのかな。ステージもフロアと同じ高さで、ソファも置かれている。高橋さんと山田さん、ふたりがくつろぐリビングに招かれたような気分になる。

柿落としは野宮真貴さんでvol.1なんだって。俺たちvol.0なの。柿落としとは? テストランみたいな感じ? などと話してまずはふたりでセッション。立ち位置は昨年の『YOU'VE GOT A FRIENDーApril Fool edition』とは逆で下手側に高橋さん、上手側に山田さん。ギターは高橋さんがギブソンのエレクトリック1本、山田さんは曰くつきの(後述)エレクトリック1本とアコースティック1本。高橋さんは紙の楽譜、山田さんはタブレットというのは変わらず。どちらも涼やか、でもある種の熱を持っている。それは声にも演奏にも顕れる。ふたりの声のハモり、ギターの絡みもそう。ソロでもデュオでも、酷暑にひとすじの風を連れてくる。

『April Fool edition』ではふたりとも出ずっぱり、交互に演奏して片方のソロをもう片方がステージ上で聴く(!)というなかなかシビれる趣向だった。今回もそうなのかな? 演奏しない間は後ろのソファに座って聴くのか? それはそれで緊張感あるな……などと思っていると、山田さんがハケていく。まずは高橋さんのソロから。しんと静まり返ったフロアに、澄んだ声が沁み渡る。

「そんなに好きってわけじゃないんだけど、気付けば夏や海の曲が結構ある。『太平洋』って作品もあるし」「陸サーファーみたいな感じ」と夏らしい曲を中心にセレクト。Ben Wattのカヴァーはレアでしたね、これも海の曲。そして「代表曲」として「新しい世界」「犬と老人」を演奏し、「近年は配信のおかげもあるのか、海外のひとがカヴァーしてくれたり、とても若いひとが『初めてライヴに来ました!』といってくれたりする。そうして新しいリスナーが増えるのはうれしいこと。だから勿体ぶるのをやめました」みたいなことをいいつつ「まあ、次来てくれるか分からないし」なんてこともいっていて、ヤマアラシのジレンマがそこかしこに顔を出していた。

後攻の山田さん、「『新しい世界」』をやりやがった……」「『新しい世界』をやられると、くそっ『新しい世界」』やりやがった! とギィイとなる」なんていってた。何をいってる、山田さんも伝家の宝刀何本も持ってるやろが! と九州弁でツッコミたくもなる。わしゃ「月あかりのナイトスイミング」を聴くと反射で涙が出るんだよ! 「光の葡萄」も聴けてうれしかったなー。

「僕たちの旅ー自己嫌悪’97」がつくられた経緯は初めて知った。高橋さんの「真夜中のドライブイン」MV撮影現場に山田さんがいたことはよく知られていますが、これが発端だったとのこと。すごいやつがいるなあ、俺は映像制作会社に就職して、バンドは趣味みたいになってて、何者でもない。その自己嫌悪がこの曲をつくらせたと。「歌から入る曲だけど、実はイントロがあるんです」と弾いてみせると……まるっと「真夜中のドライブイン」からのインスパイアというかオマージュというかなフレーズ。「怒られる!」だって。内緒ね、内緒! 本人バックヤードにいて聴いてるけどね! 貴重なものを聴けた。そして「グランドピアノが置いてあるところではピアノを弾こうと決めたので」とピアノも演奏。山田さんって常に場をよく見ていて、その場をどう活かそうか考えている印象がある。

そして山田さんのカバーは、タイトルコールと同時にどよめきが起こった「壊れかけのRadio」! 「朝方で、4時くらいには起きてウォーキングをしてるんですけど、井の頭公園に行くと丁度ラジオ体操の時間なんです。ちっちゃい自分用のラジオを持ってきてるひとがあちこちで、ラジオのボリュームを目一杯あげて体操してる。音が割れて……あー、いつかこのラジオ壊れるなあって……」からのタイトルコール。思わず巧い! と膝を打ちたくなるような導入だった。

おふたりとも夏を意識した選曲。そもそもこのライヴ、「暑いねー夏はライヴの本数減らしていこう」というメールのやり取りを始めた1時間後には決まってたとのことで……(笑)。

・新オープンするミュージックバーで高橋徹也と山田稔明2マンライブ決定┃monoblog

この内容からして山田さんの企画だな。「天の時、地の利、人の和」ってやつ!

ふたりで会って何を話すかというと、病気の話。高橋くんの方から弱っていく。心外だなあと苦笑いの高橋さん。親が死ぬのも高橋くんが先で……高橋くんの方が歳がふたつ上で、人生のちょっと先を行っていて、そういうひとと付き合いが長く続いているのってなかなかないですよね。とかいいつつ今回のライヴのタイトル「Can we still be friends?」なんですけどね〜と山田さん。いい距離感。仲良くなったきっかけというか、最初に呑もうと声を掛けたのは高橋さんだそうで、吉祥寺の呑み屋に誘われた山田さんは「何話すんだ! とビビって、丁度吉祥寺東急の物産展に出ていたマイメンの職人イガラシくんを誘って連れていった」だって。微笑ましい……。

ふたりともライフログを残す習慣があるので、それを日々読んでいるひとも多いだろう。確かにここ数年で、高橋さんのご両親が、そして山田さんのご両親が亡くなり、ふたりとも体調を崩していた。歳をとればそういうことが増えてくる。共に年齢を重ねていっているのだなあとお互いちょっと心強いところもあるのかもしれない。と一介のリスナーは思うのだった。あれよな、歳をとったからこそ訊きたいこととか話しやすいことってあるよな。冠婚葬祭の後ろ半分のこととかな。あと病院な(実感がこもる)。

で、山田さんのエレクトリックギターの話。ポータブルギターではないと思うけど、サイズもちいさめでかわいいルック。「前にウチに来たとき『このギターいいねえ』と気に入ってたので、買ってくれない? といってるんだけど……」「そのときは『うーん』とかいってたのに、こっちが断捨離モードに入ってから『買わない?』っていうからさあ」。あとなんだ、このときパンダの話してなかったっけ? 白黒カラーだったのでパンダ好きの高橋さんの琴線に触れたのかもしれない(幻聴だったらすみません)。

ということで、このギターは当分山田さんのもとにありそう。しかしいい音だったなあ、エフェクターとか音響の影響もあるんだと思うけど、アンプを通した音が絶妙なひずみで響く。箱鳴りも含めてアンプ通ったみたいな。大きなホールとかでは伝わらなさそう、このくらいのスペースにぴったりな音。唄い手を選びそうなギターでもある。山田さんの声にとても合っていたけれど、高橋さんの声だとどうなるかな? 聴いてみたいなーという欲も出る。ふたりで使えばいいじゃなーい。

アンコールでは何をやるかで譲り合い。リストを見乍らこそこそ話し、「いいのっ、やりたいのっ」と山田さんが押し切って(?)高橋さんの「My Favorte Girl」、山田さんの「my favorite things」。おお、粋な流れ! 高橋さんの曲に山田さんが絡むと、ギタリストがふたりになるので普段の高橋さんのソロやバンドセットとはまた違うギターのフレーズが聴けて楽しい。そんでまた山田さんのギターがとてもアイディアに溢れているというか、おお、この曲にこんなロッキンなリフ入れてくるか! という新鮮な驚きがある。コードとリフが同時に鳴る気持ちよさもあって、いいもの聴けたなー。オーラスは「セラヴィとレリビー」、ビートルズのレリビーをなぞるメロディーに思わずにっこり。

「10時迄バータイムで開いているので、このあとも皆さん呑んでってくださいね。僕らも打ち上げで乾杯します」と山田さん、ここにも場所への敬意。いい夜。

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・setlist(山田さんのブログより)

<山田稔明+高橋徹也>
1.幸せの風が吹くさ(山田曲)

<高橋徹也>
1. サマーパレードの思い出
2. 八月の流線形
3. 美少年
4. North Marine Drive(Ben Watt カバー)
5. La Fiesta
6. 新しい世界
7. 犬と老人

<山田稔明>
1. 太陽オーケストラ
2. 月あかりのナイトスイミング
3. 一角獣と新しいホライズン
4. 僕たちの旅ー自己嫌悪’97
5. 壊れかけのRADIO(徳永英明カバー)
6. 八月のベルカント
7. 最後のお願い
8. 光の葡萄

<セッション>
1. サマーピープル(高橋曲)
2. ブックエンドのテーマ(山田曲)
3. 友よまた会おう(高橋曲)
(encore)
4. My Favorte Girl(高橋曲)
5. my favorite things(山田曲)
6. セラヴィとレリビー(山田曲)

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・高橋徹也・山田稔明 YOU'VE GOT A FRIENDーCan we still be friends?(2025年8月3日 @ 池尻 GOOD TEMPO)【ライブ後記】┃monoblog
あのギターは「1965年製のHarmony Alden Stratotoneというビザールなエレキギター」とのこと。ビザールな、って言葉がぴったりなルックと音だった!

会場のgood tempoは、旧池尻中学校跡地を活用した複合施設HOME/WORK VILLAGEのなかにありました。世田谷ものづくり学校だったところですね。久々に行ったので道に迷い、帰りは帰りで夜道の住宅街でまた道に迷い。いやマジで暗いのよ、街灯あんまりないのよ。知らないひと同士で助け合い乍らなんとか駅に辿り着きました。その節は有難うございました(天に向かって叫ぶ)! 緑の多いとこで気持ちよかったが蚊にも刺された。いい雰囲気だったしカフェメニューも気になるので、道を忘れる前に、涼しくなってからまた行きたい。

(20250810追記)
・North Marine Drive(ライブ後記 8/3 GOOD TEMPO)┃夕暮れ 坂道 島国 惑星地球
控えめな音量でも過不足なく行き渡る会場の音響が心地良かったです。
(「North Marine Drive」では)ヴォーカルのエコーの余韻とギターの揺らぎがこの会場と最高にマッチしていました。やって良かった。
やってる側も楽しめる音響だったんですね。いやーホント音よかったので、またここでおふたりのライヴが聴きたいです。待ってる。そのときには是非「山田稔明、ここが凄い」の話を(にっこり)