せきねしんいちの観劇&稽古日記
Diary INDEXpastwill


2002年01月05日(土) フライングステージ新年会

 高円寺でフライングステージの新年会。
 といっても、飲んだり食べたりする集りじゃなくて、「今年はこんなことをやります」ということ確認するのがメインのミーティング。
 昨日の夜から具合が悪くて、昼間もずっと寝ていた。
 そろそろ起きなきゃと思った頃、もうgaku-GAY-kaiのビデオ撮影をしてくれたアキちゃんが来てくれた。のそのそ起きだして、挨拶をする。
 全員集合の1時間前に新人三人衆に来てもらって、制作の高市氏からお話。
 僕は、もう一人早めに来てもらった水月アキラと6月の「陽気な幽霊」のキャスティングについての話をする。
 今年の「陽気な幽霊」はこれまでのキャストを基本にしたオリジナル版と新メンバーによるニューバージョンのダブルキャストで上演する。
 これまでの「陽気な幽霊」では、脇の4役を、4人で演じ分けていた。
 主人公の母親、オコゲの大学の同級生、気の弱いゲイバーのマスター、豪華なドラァグクィーン。
 水月アキラには、この中の「バーのマスター」を演じてもらっていた。すっごくいいキャラで、僕もとっても好きな役なんだけど、今回の再演では、初演の配役プランに戻させてもらうことにした。
 一番最初、1996年の初演では、この4役は、ノグのパートナーの佐藤安南がやっていた。
 かなり「振り幅」のある4役なので、彼女が翌年の再演に出演できなくなった時に、「一人でできる人」見つからなくて、4人で演じてもらうことに変更したんだった。
 今年の再演では、ヨシオにこの4役をやってもらおうと思っている。
 去年の「Love Song」の町田弘子役を見た時からそのプランはずっと考えていたんだけど、関係するみんなに「こうしたいと思ってる」という話をしながら、トシくんこと水月アキラには話しができないままで年を越してしまった。
 みんなの前でいきなり切り出すのは絶対に失礼というか、ひどすぎるので、事前に話がしたかったんだけど、年末年始で連絡がつかなくて、こんなにぎりぎりになってしまった。
 トシくんは僕の話を聞いて、了解してくれた。ほんとにありがとう。
 この年末から、劇団のみんなとの関係を「わかりあえてる気になってちゃいけない」とか「もっとちゃんと話す機会をつくろう」とかって、考えてたつもりだったのに、またしてもなかんじで、話すのが一番最後になってしまった。
 そんなことをふまえて、全員集合したみんなに、今年の計画を話す。
 それぞれの公演の意味というか、目的のようなもの。
 去年は観客動員数が1000人を超えて、ゲイ業界(?)での知名度はずいぶん上がった。
 今年は、それをふまえて、もっと外へ出ていこうと思っている。
 3月のプロデュース公演「TRICK」では、それぞれ俳優として実力も知名度もある青山吉良さん、ますだいっこうさん、郡司明剛さんの力を借りて、「劇団」として、売っていく努力をしてみようと思っている。
 6月の「陽気な幽霊」は、ゲイパレードの芝居だ。今年の夏の「東京レズビアン&ゲイパレード」の実行委員長が、作・演出・主演する芝居として、上演してみる。
 11月の「ハッピーエンド」はゲイの小説家として活躍している西野浩司さんの原作をもとに、3月と6月、2つの公演の成果をふまえて、劇団員総出演の「ハッピーエンド」の物語を上演する。
 その他、劇団のみんなに話したことは、「今やらなきゃならないと思うことをやってほしい」ということ。
 フライングステージは、今年で旗揚げ満10年になる。
 当時27歳だった僕も、もうじき37だ。
 ずっとゲイの芝居をやってきて、後悔はちっともないけれど、この十年の間に、もうできなくなってしまった芝居はずいぶんたくさんある。
 それは、「いつか絶対やろう!」と思っていたのに、気が付いたらもうできない役の数々だ。
 若くて向こう見ずだった僕には、「いつかやりたい役」っていうのは、たくさんあった。
 一人でセリフの練習をしてた時期もあった。
 「ガラスの動物園」のトム、「かもめ」のトレープレフ、「アンドロマック」のオレスト、「ハムレット」のハムレットとか、「エレファントマン」のジョン・メリックとか、今の僕を知ってる人には、笑われてしまうような役ばかりだと思う。
 でも、かつての僕は、自分がいつかその役を演じることを信じてたし、だからこそ、努力をしていた。
 十年という節目で、久し振りに過去を振り返ってみたときに、見えてきたのは、そんな自分だ。
 いつもより、余計に振り返ってしまったのかもしれないね。
 もちろん今でもやろうと思えばやれないことはないんだと思う。
 でも、気が付いたら、通り越してたっていうのが、僕にはちょっとショックだった。
 僕はこの十年、そんな役々のことを忘れてしまっていたみたいだ。
 みんなには、そんな話をした。
 「自分が今やりたいことをやってごらん」って。
 それは別に、責任逃れの言い訳ではなくて、今の僕がほんとうにそう思うからだ。
 フライングステージは、きっとなくなることはないから。いつまでも、ゲイの芝居をやってるから。外で、もしくは、自分で違う芝居をやって、それで戻ってきても、ずっとある続けてるから。
 僕の気持ちを正直に言えば、「やっておけばよかった」っていう後悔じゃなくて、「いつでもやれるような用意をしたままトシをとればよかった」っていう後悔なんだと思う。
 って、年寄りの繰り言めいた話をして、おひらき。みんなで飲みに行くことにする。
 キッちゃんとホソちゃんの新人2人とヨシオとマッスーがいろいろしゃべってるのを見て、嬉しい気持ちになる。
 一方、僕は、そんなに飲んでるわけでもないのに、フラフラして、気持ちが悪い。
 今朝から、何も食べてなかったんだと気が付く。
 11時頃おひらきに。
 部屋に戻って即ダウン。
 寒気がするので熱を計ったら、久し振りに熱が出てる。
 眠ろうと思ったんだけど、なかなか寝つかれなくて、苦しい。
 いつもだと年末に発熱→ダウンするのが常なんだけど、今年は年が明けてから。
 いろいろ考えてたことが片づいて(ていうか、みんなにちゃんと話ができて)ホッとしたんだわと自分を納得させて、ひたすら休むことをこころがける。


せきねしんいち |MAILHomePage

My追加