せきねしんいちの観劇&稽古日記
Diary INDEXpastwill


2002年05月16日(木) 「陽気な幽霊」稽古

 久し振りに(こればっか)稽古の最初から稽古場へ。
 今日は、昨日の続き。中盤の僕抜きの流れを。
 昨日と同じダメを両チームに出す。
 ノグには、「言い方で表現しようとしない」ように話す。
 このところ声の仕事があったりして、この頃のノグはなんだか声で芝居をしようとしてる。
 「おい!」とか「ちょっと、待てって」とかっていう台詞が、ちっとも相手に届いてない。
 またしても、らしくやらなくていいから、ちゃんと相手に伝えて!と話す。
 それから、ノグにはもう一つ。
 この芝居の初演以来のノグは、目の力がすごかった。
 それは、「にらみがきく」とかそんなんじゃなくて、彼が見てるものが、ちゃんと伝わってきたってこと。
 「陽気な幽霊」って芝居は、全編、小道具がなしで展開するんだけど、それ以外に、何かを見て、説明するっていう芝居がむちゃくちゃ多い。
 しかも、ノグの役は、劇中で唯一のノンケ男子で、彼が見てるものっていうのは、実はとっても大事だったりする。
 幽霊である僕の姿が見えたり見えなかったりってことも、実は、彼の役があるからこそ、きわだってきてる。
 それが、今日の稽古では、ちっとも見えてこない。
 柾と一緒に歩く二丁目の風景も。
 そこで、正直に「目の力がなくなってるね」と話した。
 あなたが手に入れたと思ってる力、これができるようになったと思ってることはきっとあるんだと思うけど(それはたぶん台詞のうまさとかね)、そのかわりにあなたは、大事なものをなくしてるよとも。
 それは、芝居のためにも、あなたのためにもつまらないことだって。
 つづいての稽古では、ちゃんと見えるようになってた。
 ちょっとほっとする。
 忘れてたってことなんだね、きっと。
 だめだよね、こんな大事なこと忘れてちゃ。
 続いて、Bチーム。
 マッスーは、まだ台詞が初見のようで、ちっともやりとりになってかない。
 そこで、毎回同じことをやろうとしないで、一階ずつ違うことをやろうとしてごらんと話す。
 「じゃ、3回、違うことやって!」
 そして、見せてもらった3回は、それまでのぎくしゃくした、ただ台詞をしゃべってるだけのものより、何倍も何倍もおもしろかった。
 それでいいんだよ。一回一回、相手にちゃんと向き合っていけば、どんなに違ったことをやってもそんなに「全然違う」ってふうにはならないんだから。
 毎回同じことをただなぞるだけで見せてもらうより、一回一回「何、それ?」ってつっこみたくなるような生き生きしたやりとりを見せてもらうほうがずっといいんだから。
 続いて、気の弱いバーのマスターのヨシオの登場。
 僕がいない間にいろいろやってたみたいで、なかなかおもしろい。
 よしおは、普段から、「毎回違くやる」ことを追求してるんだけど、今日もいろいろと。
 もう少し何言ってるかわかるようにね、とか、立ち位置の基本とかを説明する。
 いいかんじなので、「これからもいろいろやってね」と話して、今日はおしまい。
 繰り返し再演してきた舞台の、陥りやすい「ダメなパターン」にならないよう、しっかり作っていこうね。大事なのは、おもしろがってしまうことだ。


せきねしんいち |MAILHomePage

My追加