せきねしんいちの観劇&稽古日記
Diary INDEXpastwill


2002年06月05日(水) 「その河をこえて、五月」 「陽気な幽霊」稽古

 新国立劇場の「その河をこえて、五月」を見る。
 お昼に友達のアキヒコくんと待ち合わせをして、お茶をしてたら、通りに面した窓の向こうからこちらをのぞきこんでる人が……
 誰かと思ったら、この近くで歯医者さんをしているナカタ先生でした。
 ああ、びっくりした。

 「その河をこえて、五月」は、とってもおもしろかった。
 韓国の漢江っていう川の川原で、韓国語学校の生徒たち(日本人)と学校の先生の家族が一緒にお花見をする、リアルタイムの2時間15分のお話。
 日本語と韓国語が入り交じる会話なので、舞台の上手下手に字幕が映し出される。
 ただの二カ国語じゃなくて、「会話が通じない」っていうことが大きなモチーフになってる芝居なので、これはとってもよかった。
 出演は、大好きな三田和代さんに佐藤 誓さん、小須田康人さん、谷川清美さん、それから韓国の俳優さんたち。
 みんなとってもよかったなあ。
 川原でビニールシートを広げて、お花見をするだけの話なんだけどね。
 お酒を飲んで、卵焼きやチャプチェを食べて……そんなさもない時間の中、韓国と日本がかかえる「現在」がとってもはっきり立ち上がってくる。
 韓国語の先生の弟夫婦は、もうじき子供が生まれそうで、カナダに移住する計画を立ててる。
 でも、その移住の話を母親(オモニ)にはまだしてない。
 今日の花見の機会にその話をしてしまおうと思ってる。
 そのオモニは、日本が韓国を統治してた時代(この表現も微妙かな?)に小学校に育って、「りっぱな日本人になれ」と言われてた。ので、日本語がしゃべれる。
 夫の赴任に従ってきた三田和代さん演じる主婦「佐々木さん」は、5歳まで韓国で育った過去がある。
 この二人が、ほんとうにいいんだなあ。
 オモニは子供の頃、日本人の女の子に大福をもらったことがある。とってもうれしくてうちに持って帰ったら、父親に「お前は乞食か? 日本人に菓子をもらうなんて!」とひどく怒られた。
 その話をした後、「それでも、私、今も、大福、おいしいです」って言うオモニがなんといえない。
 絶対にその日本人の女の子は佐々木さんじゃないんだけど、どこかで二人のおばさん(ごめんね)が、少女に見えてくるんだよね。
 平田オリザはこういうイメージを立ち上げることがほんとうにうまいと思う。
 カナダの移住の話を切り出されて、怒るオモニをなだめようと、「これ食べてください」と大福を差し出す佐々木さん。。
 理由がわからないんだけど、泣けて泣けてしかたなかった。

 終演後、大急ぎで新宿に向かい、時事通信さんから、東京レズビアン&ゲイパレード2002についての取材を受ける。
 今月中に情報を流してくださるとのこと。
 ありがたい。

 その後、下馬で稽古。
 舞台監督のサッコさんが来てくれて、当日のうち合わせのつめ。
 今日の稽古は、ラストの場面をつくってみる。
 これまで、頭からの流れがなかなかうまくいかなかったので、ずっと保留にしてた場面。
 今日は、大まかな動きをつくって、両チームに動いてもらう。
 僕がやってる幽霊の役は、これまでの再演では、「いろいろ」やってたところを、あえて「何もしない」ようなつくりにしてみる。
 カラダで表現じゃない何かが伝わるといいな。
 みんなラストまで通って、どこかほっとしたかんじ。
 いいぐあいに終わりまでできあがりそうだ。

 今日は、夜になってから、すごい雷雨。
 稽古場にも雷の音と稲光がとどいてた。
 駅まで歩く道は、肌寒いくらい。
 稽古はお休みだったのに、とりあえず来たフッチーと道の途中で遭遇。
 駅までしゃべりながら歩く。
 中央線の東中野で、動き出した電車の窓の向こうに手を振る人が……
 と思ったら、それは、ますだいっこうちゃんでした。
 というわけで窓の外の人×2人の一日でした。


せきねしんいち |MAILHomePage

My追加