せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2004年08月30日(月) 嵐の夜

 フライヤーデザインをお願いしているマツウラヒロユキくんから、デザインが届く。
 なかなかいいかんじ。
 文字の修正をいくつかして、ほぼ決定になるだろう。
 台本をひたすら書く。
 1場まで書いて、やや書きづまっていたのを、強引に先に進めていく。
 今回は、いつもにまして、おかしな人たちがおおぜい登場する。
 そのキャラクターと場の設定の特殊さがどんどん募ってしまい、肝心の物語が立ち上がっていかないいらだちをずっと抱えていた。
 制作の高市氏に励まされ、とにかく書いていく。
 書きながら、なかなか外に出ていこうとしないものを、無理矢理生み出していく中で、思いも寄らない人物の感情や背景が見つかっていく。
 夜遅く、2場までをメールで送る。全体では6場を予定しているから、約三分の一。
 その後、電話で高内氏とうち合わせをする。
 フライヤーのデザインの準備も始まっている。
 今回は、客演の方が多いので、出演者の写真をのせることにした。
 みなさんから送ってもらった写真をトリミングして明るさを調整。
 うちの劇団のメンバーの写真が、なかなか決まらない。
 僕も含めて、一度、プロフィール用の写真を撮ってもらいたいねとノグとやりとりする。

 外は台風のせいで大嵐。
 風と雨の音がすごい。
 雨が小止みなると、庭から虫の声が聞こえる。
 不思議なかんじ。
 窓を思い切り開けて、風がどんどん入ってくるようにしたまま、部屋の明かりを消して、パソコンに向かっている。
 僕は、嵐の夜に、窓を開けて、嵐をかんじるのが好きだ。
 風と一緒に、夜がどんどん部屋の中に入ってくる。
 部屋の中が夜の気配にどんどん侵されていくかんじに魅かれる。
 普通の夜に、窓を開けても、こんな気持にはならない。
 嵐の中、外に立っているよりもずっと。
 コクトーの「双頭の鷲」をtptで見たとき、冒頭の嵐の場面が見事だった。
 麻実れい演じる王妃が、登場とともに、締め切っていた窓をどんどん開けはなっていく。
 まどの向うにはまちがいなく嵐があった。ベニサンピットの舞台の向うに、僕はほんものの嵐をかんじた。
 1幕の途中で雷鳴とともに部屋にとびこんできた死んだ王にうりふたつのスタニスラスを王妃はかくまう。彼が、自分の命をねらう暗殺者だということがわかって、はじめて彼女は、侍女に窓をしめさせる。まさしく嵐そのものが、部屋の中に封じ込められていく瞬間は、ほとんどエロチックといってもいいくらいだった。
 嵐の夜、僕は、この場面を思い出しているのかもしれない。
 もちろん、僕の部屋の窓からは、後に命を賭けた恋に落ちることになる暗殺者がとびこんでくることはなく、窓辺では猫があおむけになって寝ている。


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