「今から会いに行ってもいい?」 「明日は会える?」
ケータイから聴こえる声に、心は震えなかった。 どうしようもないほどの強い嫌悪感が沸き起こっただけだ。
「元気ないね」
ごめん。 不機嫌になっただけなの。
「こんな遅くにごめん」
じゃあ、もう切ろうよ、電話。
心の中の汚い本音を巧く隠しきれない。 彼がもし聡い人なら伝わってしまったかもしれない。
其れでもいい。 寧ろ、伝わっていて欲しいと強く願う。
こんなあたしを早く見捨てよう?
もっと良い人、きっと他に居るから。
あなたを切り捨てて、あたしは後悔するかもしれないけれど、 そんなのあたしはきっとすぐに忘れる。
あたしの心を占めるのは未だ別の人だから。
早く気付いて。 早くあたしを捨てて。 早くあたしを忘れてよ。
他の誰かと幸せになって。
あたしじゃない、他の誰かと。
***
助けて欲しい。 この世界を終わらせて欲しい。
恋や愛なんて要らない。
一度でも其れを望んだあたしが馬鹿だったんだ。 その甘さを手に入れるための痛みにはとてもじゃないけど耐えられない。
恋が出来ない。
まだ貴方に捕まっていたい。 離れたくない。
煩わせないで。 放っておいて。
でも、ひとりにしないで。
恋をしなくても行きていけるはず。
貴方がいれば、それで。 君がいれば、其れだけで。
もう何も見たくない。
全て消えてしまえばいい。
恋の蕾はもう咲かない。 蕾は蕾のままで腐れ落ちてしまった。
この土で他の蕾は育たない。
此処ではただ一輪の華が咲き続けるだけだ。
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