京のいけず日記

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2005年01月19日(水) 通勤絵日記 失速

●講習43−44日目●
朝。いつも顔を見る通勤仲間に、少し神経質そうな痩せた青年がいる。

立ち止まる青年

踏み切りの手前で足早に私を追い抜かし、先に駅舎へと入っていく。

いつもなら、改札を出て連絡橋を渡り、反対側のホームに辿り着いているはずの彼が、今朝は階段の途中で立ち止まっていた。

俯いたままの後姿。

携帯でも鳴ったんだろう…。
それとも忘れ物でも思い出したかな。

追いついて、横をすり抜ける。

しかし、その手に携帯はなかった。
微動だにせずまま、俯いて、同じ格好でじっと動かない。

彼は止まってしまった。
バッテリーが無くなってしまったように。

朝の通勤風景にしては異質な光景。劇中のパフォーマンスに見えるほど、まわりの時間も飲み込んで、彼は完全に止まってしまっていた。

異様に思ったのは私だけじゃなかったらしい。
追い抜かしていった人達が、心配そうに、あるいはギョッとして振り返る。

どうしてしまったんだろう…。

どうか… 動いて下さい。
…こんなところで止まっちゃ、だめだ。

もし彼がゼンマイ仕掛けの人形なら、キリキリとネジを巻いてあげたい。

動いて下さい。
こんなところで止まっちゃ、だめだ。

階段を昇りきって振り返る。
彼がのろのろと同じ表情で階段を上がってきた。

よかった。
ふっと胸をなでおろした。


……と。まぁ。今朝はこんな光景に出くわしたわけなんですが。
実際のところ、その表情のない青年は。

おばはんッ!何を勝手なことをぬかしとんねんッ。ぼけ。
俺は腹が痛くて立ち止まっていただけだ。
心配なら声の一つもかけんかい。あほんだら。

または。

えぇっ…と。俺、ビデオの録画してきたかなぁ?どうだっけ…。
と、考え込んでいただけかもしれません。

でも、ほんとに、どうかしてしまったんじゃないか、と悲しくなりました。
それぐらい、このほんの数分間の光景は異様でした。

時間が止まる、というシチュエーションの話があります。
それは主人公の力によるものでしたが。

そうじゃなくて、燃料切れをおこした人達が、ある日、突然、ぷスンと動かなくなっていく光景…。かなり怖いです。

あなたのバッテリーは大丈夫でしょうか。
私のは、最近かなりガタがきて、充電力が落ちてきたようです…。 (T_T)


Sako