オトナの恋愛考
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2010年04月03日(土) ポリネシアン・セックス






初めて逢ったあの晩から
私たちは一日に数回メールをやりとりする関係になった。

「おはよう。今日は良いお天気だね。今日から仲良しモードでいこうね。
 明日からまた出張だよ。仙台へ行って東京へ戻り羽田から富山、
 福井を経由して明後日には東京へ戻ってくるよ。」

「今日は熊本へ一泊で来ているよ。夜遅くだったので仕方がないから
 今居酒屋で晩ごはん。おやすみ」

私はひろの激務に驚きながらも
「本当に毎日忙しいね。身体に気をつけてね。」
と、毎日労いのメールを送った。

「良い夢みてね。おやすみなさい。」

「今夜はうさぎさんの夢を見るよ。」


週末がきて私たちは1週間ぶりに彼のオフィスがある新宿で
昼過ぎに待ち合わせをした。

東口アルタ前で再会したひろは何も言わずにすたすたと歩き始めた。

私は仕事の書類でパンパンに膨れ上がったカバンを持った
彼の後ろを追いながらたずねた。

「ねえどこに私を連れていくの?」

「ん?ランチに使っている美味しいカレー屋があるんだよ。
 そこで昼食にしようよ。」

ちょっとホッとして黙って彼の後をついていった。

「ほら、ここが区役所通り、俗に言う新宿二丁目ってやつだよ。」

「へーそうなんだ。初めて来たよ。
 西口は以前よくセミナーでホテルに行くために行っていたけど。」

歌舞伎町。世界にとどろく歓楽街の面影はなく
週末の町は若者で溢れ返っていた。

その店は裏通りにひっそりと佇んでいた。

ランチタイムをとおに過ぎた昼下がり。
お客は私たちと、他に女性客2人だけだった。

インド人の店主お奨めのカレーと他に1種を注文して
一緒に出てきた特大のナンを食べきれない私を見て
ハンサムな店の従業員の男の子が興味深げにニッコリと微笑んだ。


そしてそれから2時間後
私たちはホテルのバスタブで抱き合っていた。

ひろが私に何度も快楽の波を感じさせた
あのやり方が、「ポリネシアン・セックス」だったと
気付いたのはそれから数日後のサイト内の自分のプロフだった。

大人向けのそのサイトの中にあった「あなたへの質問」の何番目。

やってみたいセックスはどんな事?
「ポリネシアン・セックス」




バスタブの中で繋がったまま抱き合って
ひろは動く事もなくキスを何度もした。
お互いの瞼や鼻の頭や耳たぶや唇を味わい
そして時々微笑み合いながら。

私が我慢しきれなくなって腰を動かそうとすると
彼はギュっと抱きしめて動けないようにした。

ヴァギナの中に硬くなった彼をいっぱい感じながら
ジッとしているだけの時間の中で
私は何度も絶頂を迎えた。

グッタリとしてキスをしながら彼に尋ねた。

「ねえ、あなたも逝った?」

彼は黙って微笑んだ。
萎えることを知らない彼の大きなペニスが
その質問にNOと答えた。

2時間近くもバスタブの中で抱き合って
やっと彼も絶頂を迎えた事を知ったのは、
「ほら見て。僕の分身がうさぎを襲ってるよ(笑)」
と、笑いながらお湯の中を漂う白い液体を指差して
そのまま私の体中をつついた時だった。

一度目のセックスであんなに感じたのは
たぶんひろが初めての男。

その後、ベッドでは話をしながらただ抱き合っていた。
彼は私を後ろからギュッと抱きしめて1時間近く離さなかった。

「もう、こんなに懐かれちゃって困っちゃう(笑)」と
 冗談交じりに言うと
「そう、こんなに懐いちゃったよ。」と
彼は私の体中を右手で撫でながら
筋肉質の逞しい左腕は、
終電に間に合わないと私が振りほどくまで
力強く私の小さな体を抱きしめていた。

「気持ちいいでしょ?」
「うん、気持ち良い。」
「うさぎの体はスベスベして気持ちいいよ。」
「今日の事をブログに書いちゃうよ。」
「どんな風に書くの?」
「うふふ。最近大きいけど可愛いワンコに出会いました。」
「それから?」
「ワンコは私にすごく懐いてじゃれつかれて困っちゃいます。」
「あはは。そうそうワンコだよ。」


彼に出逢ってしまったことには後悔はしていない。
でも、またイツカ失ってしまう恋はもうしないと
決心していた自分に反省を促した。

あの晩、何度目かの波に飲み込まれる瞬間に
「ああこの人とは最初で最後。
 もう逢ってはいけないひとなんだなあ。」
と思ったとたんに絶頂の波と一緒に私は泣いた。

たぶんひろには気付かれてはいないと思うけど
こんな風に快楽の波に襲われたときに
涙が溢れ出た相手は今まではあの別れた男だけだった。


好きだよ、ひろ。
愛してるのかどうかそれは自分でもわからないけど。


とてもステキな時間だったけれど
ただひとつだけ気になった事がある。

朦朧とした意識の中で
ひろはふと私の両腕を掴んで
交互に私の手首をさりげなく見た。

そして自分でもゾクッとするくらい白い
しみひとつないそこを確認すると
ホッとした表情でまたキスをした。


夢うさぎ |MAIL

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