空虚。
しずく。



 ネクロフィル。

とても楽しかった。

久しぶりに笑えた。

また、逢いたいと思った。

そう告げ、別れた。

残った楽しい思い出だけを抱いて、

また、歩めると思っていた。

・・・それを、許してくれなかったのは、

追いやっていた、変わらぬ、増大し続ける欲望だった。


流した涙は、同情だったのだろうか。

あの人がいなければ、彼と同じ道を歩んでいたはずの、

驚くほどに彼に似た、自分に対するものだったのか。


それは、このおぞましくも悲しい物語を紐解けば、

いずれわかることだろう・・・。



それは常に唐突で、

私のことや場所など何も考えてくれない。

消えた傷を眺め、安堵に笑おうとしたその時のこと。

脳裏に過ぎった組織。一瞬にして、表情が消えた。

縦に裂けた腕の間から覗く組織。

筋肉・脂肪・骨。間から流れ出す血液。

陳腐な想像だけですむはずもなく、

切り裂いて、覗いて見たい衝動に駆られる。

生憎ここは電車の中。カッターの持ち合わせもない。

それに多少の安堵を感じつつ、爪で紅い線を引く。

何度も傷つけられ、弱った皮膚は簡単に跡を残した。

後はそれを見つめ、空想を膨らませるだけ。


影響されやすい性質なのか、

それとも元来の性格のせいか。

"組織"がとても欲しくなる。

先程まで笑っていた私が欲しいのは、

ぬくもり、安らぎ。そんなあたたかな感情。

しかし一度表情を無くせば、

欲しくなるのは、組織・・・パーツだ。


両者のバランスはまだ保たれている。

安らぎやぬくもりはあの人によって満たされ、

組織やパーツは映像や写真といった形で満足させられる。


問題なのは、実際に触れて見たいと願う感情だ。

自分の身体にはどうしても痛みが付き纏い、

純粋にそれを楽しむ事が出来ない。

かといってもう一つの道は絶対に選んではならない。


術は身に付けた。

あとは上手く共存させる。

これからの課題は、それだ。



『自分に正常な感情を持つ能力があるのかどうか、
 よくわからない。もう長いこと泣いたことがないから。
 長いこと押し殺していると、
 それ自体なくなっちゃうのかもしれない。
 少なくとも、どこかは欠けてしまう。よくわからない。』

J.L.D

1991/08/26

2002年09月04日(水)
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