空虚。
しずく。



 サド・マゾ。

これで、何回目だろうか。

うっすらと血がにじんだ右拳に、笑う。

殴りつけた壁から、破片がぱらぱらと落ちた。

くぐもった音と、痛み。


手の甲に滑らせた刃は、簡単に皮膚を切り裂いた。

流れ出る血。それを、ゆっくりと味わう。

久しぶりの味と、痛み。

「ん・・・。」


傷つけることの歓びと、痛みによる快感。

「どっちだと、思う?」

そう言って笑った顔は、サディストのそれなのだけれど。

傷口から更に痛みを引き出して、

それに打ち震えるのは、マゾヒストのそれ。


誰かを傷つけたい。

だけど、自分は傷つきたくない。

けれど、痛みはとても・・・気持ちいい。


「・・・どちらでも、いいんだ。
 きっと、そうなってるんだろうから。」

静かに呟いたのは、不感の、それ。


彼女の、煽るような口調が脳裏を過ぎる。

「容赦しない。
 誰であろうと、殺す。」

そしてその裏に潜んだままの、

「誰かに傷つけられるぐらいなら、私が―――」

殺意。

2002年11月07日(木)
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