空虚。
しずく。



 愛されるのが、痛い。

夢であればよかったのに、と。

願う自分もまた、最低だった。


「彼」に告白されて。

『彼女』に受け入れられて。

どちらも、欲しがって。

どちらも、傷つけた。

「彼」に嘘をついて。

『彼女』を裏切った。


『愛してるよ』

が、こんなに痛かったなんて、知らなかった。


「最低なのに、どうして…」

だけど、それだけは、見せられなかった。

愛される感覚に酔ってはいけないと思った。

だから、最低を貫いた。

「あなたに嘘をついていました」

『もう気持ちは残ってない。だから、やめよう』

『好きになんか、ならない』

(もう愛さないで。また傷つける。)

(どうして私だったの?他にもっと、いい人一杯いるよ)

嘘つかなくて、真面目で、誠実で、裏切らない…そんな人が。

あなたにも、あの人にも。


「どんな君でも、好きだよ」

「汚いとこいっぱい見た。それでも、君なんだ」


どうして。どうして。どうして…

そんな風に愛されるべき人間じゃないのに…


最低を貫けばよかったのに。

貫けなかった。…欲しかった。


謝れない。だから、嫌われよう。

切るしかない。独り、がいいんだ。


だけど…

「逃げないで。僕はそれでもいいから」

「君が戻ってくる、って確信してる」

「愛してるよ」


あの人は、それだけを繰り返し…私はそれに甘えた。


彼は「彼氏」じゃない。

あの人は「彼女」じゃない。


どちらとも付き合える。

出したのは、そんな答え。


『最低だよ、お前』

そう言われて、

「そうだね」

と、薄ら笑いを浮かべた。



「忘れないで。答えを出すのは、君だから」

彼は、

「選ばれるのが俺なら良いと思う。
 でも、俺が望んでいるのは、君の幸せだから。」


彼女は、

「少しでも可能性が残っているなら諦めないよ。
 君を幸せに出来るのは僕しかいない。そう思ってる。」


『忘れないで。答えを出すのは、君だから』

2003年05月11日(日)
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