空虚。
しずく。



 いつか見たもの。

うずたかく積み上げられた、
判別のつかない死体が、死臭を放ってた。
一面真っ白な空間に、紅が点々としていた。
その真ん中に私がいて、
服も、髪も、腕も、
何もかも真っ赤に染めて、佇んでた。
鼻歌なんか歌って、歩いて見たけど、
行っても行っても死体しかなくて、
途方に暮れてた。
「全部、私がしたのかなぁ…」
そんな実感なくて、
身体も、ちっとも疲れてなくて、
「殺す」のはすごく苦しかったはずなのに。
それだけは、「こう」なった今でも、感じれてたはずなのに。
それも、なくなってた。

気が狂いそうになるけど、
狂う、ってよくわからなくて、
ただ、歩いてた。

何かに疲れたわけでも、
嫌になったわけでも、
とにかく、なんでもなかったのに、

なんでか、泣いてた。

なんでこんなことできたんだろう、
って、ちょっとだけ思った。

はみ出てたり、穴あいてたり、
なんか、ひどくて。

ちょっと、気持ち悪くて。
でも、吐き戻すものも何もなくて。

そういや、ずぅっとご飯なんか食べてないんだ…

て、思って。

栄養、薬で取れるもんね…

て、思った。

仕方ないから、うずくまって、
いつもするみたいに、ぼーっとしてた。

それが、夢だったのか、幻覚だったのか、
「起きた」私にはわからなかったけど。

鼓動がすごく早くて、
汗も、びっしょりで、
自嘲してて、悲しかった。

今になって、どうして思い出したんだろう。
自分を見失ったわけじゃないのに、
意図せぬ言葉が、ぽつっと出てきたりして、
あぁ、私まだ病んでるのかなぁ?
なんて、思ったりした。

ただのフラッシュバックだ、と片付けて、
単調な業務に戻ったけど、
『やめろよ、てめえ。』
小声で、「私」がそう呟いたのが、わかった。
なんで。
もう、ないはずなのに。

どうしよう、どうしよう…
ただ、怖かった。
何が怖いのかわからないけど、
本当に、ただ怖かった。

2003年09月25日(木)
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