空虚。
しずく。



 尼崎の電車脱線事故。

ああ、珍しいな…最初は、そう思った。
悲痛な声とメールを送ってきた彼女が、
なんだか理解出来ないように思えた。

私は別段何も思っていなかったが、
彼女にとっては大切な事なのだと思い、
一日中テレビやラジオやインターネットで情報を集め、
新たな情報が発表されるたびに彼女に連絡していた。

きっかけは、一枚の写真だったのかもしれない。
ああ、私の中にはまだこんな感情が残っていたのか。
そのことに対して、とても、驚いた。
そして、それを不謹慎だと思える心も、残っていた。

マンションに絡みついている車両が二両目だ、
と気付いた瞬間、背筋に悪寒が走った。
「…一両目は?」
思わず呟いていた。

言葉で言い表せないほどに捻じ曲がった三両目の写真。
見慣れた、乗り慣れた、その車両の風景に。言葉を無くした。

あの路線を使った事は、数えるほどしかなかった。
…それでも、見覚えのある場所、列車が、…

涙は出ないし、ほんの僅かだったけれど。
…そんな事を思うこと自体が、おこがましいのかもしれないけれど。
久しぶりに、思い、祈った。

生存者の早期救助を。亡くなられた方々の冥福を。

彼女は帰り道、尼崎駅で黙祷を捧げたらしい。
私も、今度彼女の元へ向かうときにはそうするつもりでいる。

結局他人事かもしれない。
心からの思いではないかもしれない。
それでも、私の中に浮かんだこの感情は、
…大切に、したいと思った。

亡くなられた方々のご冥福を、お祈り申し上げます。

2005年04月26日(火)
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