2003年07月29日(火) |
星組新公 『王家に捧ぐ歌』 初陣に出る将軍ラダメス |
大きな下級生レオンの新公初主演。 本公演と同じく「なぜ、彼女にオペラ?」 ・・・ま、いっか。 なんかまたまた緊張の面持ちで席に座る。 開演アナウンスで拍手・・・「ああ、いいなぁ・・・なんかいいなぁ。」
さて、いつものように思いついた人、シーンから・・・。
まず、最初に断っておくが、常にたくさんの人が舞台上にいるけど 見てわかる人や、目に止まる重要なポイント・・・というのは多くない。 思い浮かぶ人がめちゃめちゃ少なくてもそれは私の記憶力の悪さなので、 誤解されないように・・・。
最初に度肝を抜いた・・・ファラオ・・・祐穂さとる・・・。 さとるっちは歌がウマイ。 さとるっちの歌を堪能してみたいと常々思っていた。 そしたら・・・ファラオだった。「やった―――っ!!!」 歌う歌う、ウマイウマイ、歌う歌う、ウマイウマイ。 セリフもいつぞやは「?」と思っていた発声がめちゃめちゃ改善され、 ・・・本役さんほど重さはないもののどこか優しさのあるファラオだった。 凱旋のところでナターシャブランコに乗っていなかったのはちょっと残念。
ネセル・・・美城れん・・・。 神官の長・・・組長の神官はどちらかというと “力で得た権力”がある、いわゆる“王家に仕える神官”だったのに対して 美城さんの神官は“学識があり、人望で得た信頼”がある、どちらかというと “学者タイプ”の神官に見えた。
透き通るような白いイメージで、声も優しく、まなざしもどこかはかなげで 「ああ、神に通じているんだな。」という感じだった。
ケペル・・・綺華れい・・・。 顔がキレイすぎて、あの被り物が気の毒なほどだった。 キレイな顔に煌びやかな被り物。 ラダメスの戦友・・・というよりも「机を並べて学んだ」タイプ。 (をい、どこがで聞いたぞ。) 「戦争に行く。」と言えば「やめておけよ。」と言いそうなタイプ。
メレルカ・・・夢乃聖夏・・・。 今回1番、気になっていた。 本公演でも「おっと、レオン、大抜擢やな。しいちゃんと同じような役なんて。」 ・・・と思っていただけに・・・見る前の緊張は・・・ただものではなかった。 「セリフ、ちゃんとしゃべれるだろうか、歌は歌えるだろうか、 マント、もてあまさないだろうか、ブーツ履いて、ちゃんと走れるだろうか。」
・・・そんな心配はいらなかった・・・。 ちゃんとしゃべるし、ちゃんと歌える。 マントを翻し、闊歩して歩く・・・。 下級生のわりには声がしっかりしていて、コケることはなかった。 「ヒトツ目の銅鑼は・・・」の歌の時もキッと目を利かせていた。 本公演の槍さばきもなかなかスピードがあったけど、 新公での太刀さばきも浮いたり、揺れたりすることなく、安定していた。 (今回、本公演で下級生までもが太刀さばきや槍さばきが見事で “さすが・・・”と“我が愛”を思い出すほどだった。)
そしてそして今回私の大ヒット・・・。 ウバルド・・・ももこ・・・大真みらん・・・。 「ももちゃん、いつの間にそんな役者さんになったの?」 そう何度も思わずにはいられなかった。 汐美ちゃんのウバルドは・・・ どちらかというと“野心に燃えた王子”という感じだったのに対して、 ももちゃんのウバルドは “妹や父を思い、エチオピアをこよなく愛する王子”だった。 幕開きの「今ならわかる気がする。」という歌も 汐美ちゃんの場合はどことなく“悲劇性”が感じられたのに対して、 ももちゃんの場合は“希望の光”のようなものが感じられた。 歴史が流れても妹の気持ちをわかることができたことへの喜び・・・ そんな歌に聞こえた。
そして1幕のラスト、ラダメスがエチオピアの開放を願って歌を歌う時の 妹アイーダの様子を見て「おい、こいつはまさか、本当に敵国の将軍に?」と 自分の目を疑う表情をした。 そしてアイーダの肩をつかみ「おい、おまえ・・・。」と・・・。 父王アモナスロが企みの笑みを浮かべた時もまた、父王の肩をがっしりつかみ 一緒にこの復讐をかなえよう・・・と静かに誓うのもよくわかった。 2幕の最初、幕開きから、ウバルド、カマンテ、サウフェがいて、 3人で剣を重ねて、復讐を誓う時も、不敵な笑みを浮かべて、剣をなめた。 その時の顔がおそろしいくらいだった。 そんな大事なシーンのキメの時、ももちゃんの手からポトリ・・・と剣が落ちた。 それを・・・静かにゆっくり拾い、天に掲げた・・・演出だと思った・・・・・・。 だけど、ただ単に落としただけらしい・・・すごいわ、ももちゃん。 復讐を遂げ、捨て台詞ののち、息絶える時も剣を立てたまま・・・だった。 考えすぎ・・・深読みしすぎだけど、“敵国エジプトの大地に剣を立てて”に見えた。
本公演のウバルドもとても好きだ。 でもこうも違うタイプのウバルドを見せられて、衝撃的だった。 汐美ちゃんのウバルドは話が進むにつれて、さらに悲劇性が高まる・・・というか、 ウバルドの哀しさが浮き彫りになっていった。 ももちゃんのウバルドは、話が進むうちに“復讐の鬼”のようになっていって 1歩ずつその野望に近づくにつれて、達成する喜びへの光が見えたようだった。
いろんなシーンがカットされていたから、ヨケイにそう思うのかもしれない。
カマンテ・・・彩海早矢、サウフェ・・・鶴美舞夕・・・。 カマンテとサウフェは、メイクがとてもキレイだった。 あまりコレ・・・と言った見せ場がなくて・・・残念。 サウフェはアイーダに「優しかったおまえまで・・・。」と言われる時が とてもとても哀しく見えた。
他には・・・ないと思っていた女官の「すご、すご、つよ、つよ・・・。」の歌があって 目が覚めてしまったこと・・・ 最初の伝令3人が・・・順番に出てきて、3人目が血まみれでおまけにたぶん、 血のりを吐いたように見えたけど・・・そのあと息絶えて倒れたのが 2番目の伝令の顔の上で、本公演のように兵士が担いで出て行かないので 気になって気になって仕方がなかったこと、 ・・・ちなみに伝令1が涼麻とも、2が天緒圭花、3が凛華せら・・・。 こりゃホントに気の毒だった・・・迫真の演技だったということだけど。 父王アモナスロ・・・真汐薪のせリフなどがほとんどなく、 目だけで芝居をしていたことに驚いたこと、 エチオピアの囚人たちのコーラスがとてもキレイだったこと(歌詞はイケてないけど) ・・・そんな感じかなぁ・・・。
さあ、それでは・・・主役たち・・・・・・・ さて・・・どちらから書こう・・・・・・・・・タイトルロール、アイーダ・・・麻尋しゅん。 まず最初に「すんません」と言っておこう。 「なんでこの子がアイーダなん?」とめちゃめちゃ思った。 だけど、すぐに吹っ飛んだ。 かわいい・・・。 トウコちゃんアイーダに見える戦争が続く国の王女・・・というイメージとは全く違って 平和に過ごしてきたまだ幼さの残る王女だった。 いや、どちらかというと王女・・・よりも裕福な牧場かどこかの一人娘・・・だった。 セリフの声も心地よく、歌もトウコちゃんほど聞き惚れる何かはまだないけど 優しい声でキレイに・・・歌いこなしていた。 ラダメスがファラオにエチオピアの開放を願っている時に やっと自分の思う人の本当の気持ちがわかった・・・といううれしさが全身に溢れていて、 そのあと、自分との立場の違いに顔を曇らせる・・・そんなことまでしてのけた。 まいった・・・まいった・・・ホント、まいった・・・。 男役にしておくのはもったいない・・・と思った・・・ (でも露と消えた身長が169センチだそうな:::) アイーダが1人舞台に残ったのち、歌い、セリフを言ってソデに入ったとたん、 自然、拍手が沸き起こった・・・・・・。まいった、まいった。
アムネリス・・・陽月華・・・。 すらりとした長身に衣装がよく映えた。 だけど、だんちゃんのような凛とした美しさや優雅さには乏しく、 歌やセリフも少し損をしていたように思う。 大国エジプトの王女ではなく、大金持ちの名家の一人娘だった。(ココがアイーダと違う。) 王女としての傲慢さがどうしてもいじわる・・・に見えてしまった。 これはキャラ的に仕方のないことだと思う。 いや、彼女がいじめキャラなのではなく、現代っ子というイメージが強すぎるのだ。 アイーダに「ひかえなさい。」と言うところなど、どうしても 高校のテニス部のできる部長のようにしか見えない。 でもラダメスを自分の手で処分しなくてはならない・・・という窮地に立たされ、 石牢を閉じさせる時、夢遊病者のように視線が空を舞い、足元がふらついている・・・ なんだか、とてもせつなくて、たまらなかった。 強さの裏の弱さ・・・を垣間見たような気がした。
ラダメス・・・柚希礼音・・・。 まー、いつの間に、こんなに歌うようになったの? いつの間に貫禄ついちゃったの?・・・そう思った。 将軍ラダメス・・・というよりも初陣に出る戦士のようだった。 だけど、本役ワタル氏同様、衣装が映えるし、見事だった。 若さが前面に出ているため、アイーダとの気持ちも・・・すっきり素直だった。 常に夢に目を輝かせていた・・・。 こんなに貫禄あるラダメスだったのに・・・挨拶・・・では、何も言えず、 しばらくしたあと、ぽつり、ぽつり・・・と話始め、また途絶え・・・いや、涙を堪え、 客席から「がんばれっ!!!」という掛け声までかかり、大粒の涙を流しながら 「何度も逃げ出したくなったけど、いつもたくさんの人に支えられて・・・ ひとりぼっちじゃないんだ・・・と思いました。」と精一杯に話した。 こんなにおおっぴらに大粒の涙を流したのは久しく見たことがない。 ホントにかわいいラダメス将軍だった。
花組の新公と同様、帰り道々、「ちえちゃん、かわいかったね。」と泣いてる人ちらほら、 「麻尋さん、すごかったね。」と感動しあう人ちらほら・・・なんだかとても熱かった。
いーっぱいカットされていて、1番、緊張して待ち望んでいた ケペルとメレルカの歌がなかったことが残念だけど、見ごたえある新公だったなぁ・・・そう思いながら、帰ってきた。
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