オレはたこ焼きが好きだ。そのたこ焼きをディスカウントスーパーのラ・ムーではなんと1パック6個入りで100円で買えるのである。これはコスト的には家でタコパをしてるくらいの安さである。そういうわけで休日は近所のラ・ムーに行ってわざわざたこ焼きを食べていたのである。
朝、クルマで出勤するために乗り込んだオレはクルマの中がソースの香りで充満していることに気付いて愕然とした。なんということだ。仕方ないので窓を開いて風通しをよくして匂いが少しでも消えるように工夫した。
それでもソースの香りは消えなかった。たこ焼きを食べてからなんと1週間にもなるというのに相変わらずクルマの中にはソースの香りがするのだ。オレは消臭剤のスプレーをふりまき、そうして今朝乗り込んでみたのだがやはりほのかにソースの香りがするのである。これはもう諦めるしかないのだ。
一時の欲望に負けてクルマの中でたこ焼きを食べるという愚行をしてしまったばかりに、車内にはいつまでも消えないソースの香りという烙印を押されてしまったことにオレは深い悲しみを覚えたのである。こんなことなら車内で食べるべきではなかったのである。
クルマの中にこびりついた匂いはなかなか取れない。車中泊なんかを繰り返す方のクルマはきっと汗臭いような気がするし、車内で性行為に及ぶような不埒モノのクルマはどれほど悪臭がこもってるのだろうかとオレは想像する。もっとも中には快適な香りもあるわけで、美女の運転するクルマはなんとも言えないいい香りがするのかも知れない。人が人を好きになる場合、その相手の体臭が好きという場合もあるわけで、その場合はよい印象を与える可能性がある。
ドライバーや同乗者がクルマの中でタバコを吸う習慣のある場合、その車内はどうしようもないほどに汚れるわけでオレは絶対にそんなクルマに乗りたくない。大学生の頃にたまたま乗ったタクシーでは運転手が喫煙者というのに遭遇し、気分が悪くなって降ろしてもらったこともあった。大阪府庁舎の公用車を喫煙室にしていた松井一郎のせいで公用車はひどく汚染されたわけだが、その車内クリーニング費用は公費ではなく松井一郎に支払ってもらうべきだったとオレは思っている。
クルマの中で何かを食べるときは匂いの強いものは食べてはいけない。これはもうクルマを愛する人間によって鉄則である。オレは不用意にたこ焼きを食べてしまったことを激しく後悔している。クルマにペットを乗せておもらしされてしまったり、幼児を乗せてこぼしたミルクやよだれで汚れてしまうのはある程度覚悟を決めて乗せているから納得がいく。しかし、たこ焼きのせいでこれほどダメージを受けるとは思わなかったのが今回のオレのケースである。
オレは生涯クルマの中でたこ焼きを食わないと固く誓ったのであった。