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2023年11月26日(日) ■
『無駄な抵抗』

『無駄な抵抗』@世田谷パブリックシアター


ギリシャ悲劇から、「運命」と「自由意志」を考える。

メインのモチーフは『オイディプス王』。誰が誰にあたるかなあなどと照会しつつ観る。そのうちオイディプスは複数人存在することに気付く。負の連鎖が見えてくる。オイディプスはイオカステになり、テイレシアスはカッサンドラにもなる。カウンセラーは予言を授けるが、大学生には予感があった。伝令は手紙で届き、道化はコロスとして「何もしない」。オイディプスは失意のなかひとりテーバイを去るが、山鳥の旅立ちは、決して絶望の果てではない。彼女は目を閉じはしない。今の彼女には寄り添う人物がおり、彼女もそれを拒絶しない。

舞台の中に劇場があり、客席から客席を見るような美術。古代ギリシャの劇場を思わせる、すり鉢状の階段の底に、半円形の広場がある。世田谷パブリックシアター(SePT)の最寄である田園都市線・三軒茶屋駅の3つ先、用賀駅の入口が思い浮かぶ(同じ沿線だけに)。用賀駅に電車が停まらなくなったら……ギリシャ悲劇がグッと身近になる瞬間。土岐研一の美術はいつも面白い。

運命(予言)に抗い続けた山鳥は、最終的に運命を受け入れる。しかしそれは、自身の人生における最大の抵抗となる。呪いと信じていた予言に向き合い、起死回生の反撃に出る。連鎖を断ち切るために。新たな被害者を生まないために。この「被害者」とは、性暴力の被害者であり、貧困の犠牲者であり、社会から見過ごされている弱者たちでもある。多岐にわたり、夥しい数の「見て見ぬふりをされている」者たちだ。デウス・エクス・マキナが現代に現れる可能性は無きに等しい。人間がなんとかするしかないのだなーと気が滅入る。「告知も説明もなく停まらなくなった電車」は、現代社会のあちこちに存在する。

演じる側からすれば、かなりの難物だったと思われる。『人魂を届けに』での篠井英介のことを思い出す。観る側だけでなく、演じる側も無傷ではいられない。何かしてしまったことに対しての悔やみ、何もしなかったことへの嘆き。誰にでもあるそんな感情と向き合わなければならない。トラウマは臓物のようでもあり、自身に不可欠な器官であり乍ら、それを切り離すと自分が自分でなくなってしまうような恐怖を残す。それでも彼らは、こうして作品をつくり、観客の前に差し出してくれる。

こうして、2500年前(『オイディプス王』に限れば2400年というところか?)の演劇が現代に届く。かつて演劇は“治療”だったというが、演劇は現代に生きる者たちにある種の気づきを与え、セラピーとして機能するのだ。それは観客にだけではなく、演者にとってもそうだったようだ。池谷のぶえの言葉が胸に迫る。

池谷さんと松雪泰子の格好いいこと。カウンセラーとクライアントがバディへと変容していく。クライアントはひたすらアタックを打ち、カウンセラーは片っ端からレシーブしていく。そのやりとりが気持ちよいくらいのテンポとリズム。リズムといえば、安井順平演じる探偵と穂志もえか演じる大学生の、軽妙なやりとりも見事。同様に渡邊圭祐と清水葉月の、ある意味「同志」ともいえる言い争いも聴かせる。盛隆二の客観と落ち着きはその背後にある諦観を感じさせ、いつか彼は電車に飛び込むのではないか、と思わせる不穏を背負っていた。誰にでもある秘密を明るい悲哀としてチラチラと見せてくる森下創、明るい声音に何をやらかすかわからない(そして本当にやらかした!)怖さを潜ませる大窪人衛の存在も頼もしい。そして「何もしない」浜田信也。実在感を消したり出したり、妖精のよう。怖くもあり、この世界を見捨てないでくれ、と祈りたくもなり。

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・前に進むために、無意識に働きかける演劇。「ケア」の視点から文学者・小川公代が読み解く、劇作家・前川知大の世界┃BRUTUS.jp
前川作品は、観るたびに、他者への想像力を広げてくれる「ケア」の思想を感じます。
前川さんと、英米文学者・小川公代さんの対話。他者に対してわかった気にならない、「ネガティブ・ケイパビリティ」について、「ケア」について。わからないことが想像力を拡げ、ケアに繋がるというこの考え方は好きだなあ

・劇作家/演出家・前川知大「古典をベースに“わかりやすくない”物語を届ける」【創造の挑戦者たち#83】┃Pen Online
まだ意識的に言語化できていない無意識下にあるものを、モヤモヤした状態のままの言葉で渡すと、スタッフ、俳優、お客さんの意識をすり抜けて無意識まで届く、という気がしています。
こちらでも「ネガティブ・ケイパビリティ」の話。「で、何が正解?」という言葉が苦手なのだが(というか反射で「うっせーバカ」といいそうになる)、それはこういうことなのかもしれない。なんでもかんでも答えがあると思うなよ、というのが好きなんですね。ワタシは

・鴻上尚史が「地下鉄サリン事件(1995年)を境にアンケート(作品に対する感想等)の様相がガラリと変わった。わかりやすいものを求めるようになり、わからないものに不安や恐怖を感じるようになった」といっていたが、確かにここが境目なのかもしれない

・前川さんが書いているのか稽古の過程でそうなるのか判らないけど、イキウメ(今回はSePT制作だが)作品の女性の言葉遣いは台詞として聴こえないことがあって、それが好きなんだよなあ。前川作品観始めたのって2006年(赤堀雅秋演出の『散歩する侵略者』)からだけど、その時点で既にそうだった

・ちなみに千秋楽。観客の集中度も半端なく、凄くいい環境で観られました。これこれ、1階席から3階席迄、ピンと張りつめた空気。演劇の醍醐味

・というか行ける日が限られてて、千秋楽しかとれるところがなくてな……マチソワ(1日2公演)の日が1日しかなかったのね。演者(制作も)側の負担が減るのでいいことだと思うけど、その分チケットが取りづらくなるという。これからもこういうの増えそうねー



2023年11月19日(日) ■
MANIC STREET PREACHERS / suede DAY 2

MANIC STREET PREACHERS / suede@Zepp Haneda


何を今更って感じだが、ジェイムズもブレットもめちゃめちゃ歌がうまいな! ウェールズとイングランドのひばりだね!

幸運にも整理番号20番のチケットだったのです(MIOさん有難う!!!)。これ最前行けるじゃんとソワソワしてたんですが、前日入場の様子を聴いてえ、無理かも……とビビる。なんでも通し券(ちなみに当方、通し券はとれなかった)と1日券がごっちゃでヨーイドンだったらしく、しかも通し券の方はリストバンド交換で手間取って、はよせんかいゴルァァァとかなり殺伐とした入場だったとか。まあクリマン(てか外タレの呼び屋)そういうとこある。知ってる。

2日目はリストバンド交換が終わっているから、もっと激化するってことよね? 20番でも倍か…40番と考えて、隅っこならなんとか行けるか? が、がんばる……と緊張感を持って並ぶ。

いやはやマジでこんなん久し振りってな争奪戦だった。スタッフさんが「走らないでください!」ていうくらい。昔のコミケか。フロアに入ると最前は既に殆ど埋まっている。昨日は下手側だったから今日は上手側に、と一瞬迷いも出たんですが、そんなこと考えてる間にもどんどん埋まる。結局入り口から近かった下手側スピーカー前を確保しました。怖い! 後ろの兄さんもこんな殺気立って場所確保すんの久し振りだっつってたョ…なんなの……。

しかしここ、のちにブレット兄さんが何度も降りてきてエラい目に遭うエリアだったのです(笑顔)。

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先攻suede。ブレット兄さん本日は白シャツです! 輝いてる! そして今日もめちゃキビキビ指導が入る! なんだろう、ハンサムなのに格好いいのになんでこんなに面白いのか(失礼)…しかし長年のファンが結構身近にいるのだが、皆さん口を揃えて面白いというし、それこそがブレ様らしいのでもうこの生命、祝福する! という感じですね……。アクショーン! ハイッ! ヘイッ! って感じで手を叩く、地団駄を踏む、這う、モデル歩きをする。鎖鎌のようにマイクを振り回し、曲のエンディングに合わせてコードを身体に巻きつけていってジャーン、とぴったり終わる。ブレット劇場! そんでめっちゃ歌うめー! 声量あるー!

で、ブレット兄さんの一人シアトリカルパレードをミッチさんがバシバシ撮ってたんだが、途中you&meがミッチさんと兄さんみたいになってた。フロアに手を伸ばしてるとこの間にすいっと下から入っていって、ブレットもまんざらでもないようでカメラの前でゴロゴロ転がったりしてた。あれは信頼関係ないと撮れんよなあ……自分とオーディエンスの間にヌッとカメラ突っ込むような勢いだったもの。そしてゴロゴロしたまま唄っても兄さんの声量はすごかった。なんであの姿勢であんな声出るのん。

しかし全力で動き全力で唄うためか空間把握を忘れてしまったようで、兄さん転んでしまいました。このときのリチャードのフォローが素敵でね。笑い乍ら兄さんの背中をぽん、と叩いていた。しかし兄さんは目の前のことに全力投球しているので、それに応えることなく立ち上がり、ますます全力で唄い歩きまわったのであった。怪我なかったようでよかったよ……てかリチャード貫禄ついたね! 17歳のイメージで止まってたごめん! ロン毛の少年〜て感じだったのが短髪で精悍な青年に……リチャード? おまえリチャードか!? ってなったもん。

逆にニールがロン毛になっており、最初見たとき「あれっ、keyってニールじゃなかった? 若い子入った?」と思ってしまったくらい美ニール(って誰かがいってた)だった。目の前だったんでよく見えたな……てかペンギンカフェでも来日したことないから生ニールも初めて見たんだったわそういえば。PG来年に来日予定あるそうだけど、今度は来るかなー(スエ次第?)。熱血兄さんの後ろで超クールに演奏していた。ミスひとつしません! て感じだった。てか表情が変わらないのでミスしててもきっとわからん。革ジャン着てても汗ひとつかいてない感じで、白シャツが汗のびしょびしょでシースルーになってた兄さんとすごい対比になってた。でも帰るときはちょっと微笑んで手を振っていた。そしてマットのベースめちゃ格好よかったなー弾いてないときもベースのボディを叩いてビート出ししてるし、サイモンとのコンビネーションもバッチリでさ。安定の演奏だった。

そうです昨日の衝撃から少し耐性が出来たので(?)この日は比較的落ち着いてメンバー全員を観ることが出来たのです。最前だったしな。しかし全体を見渡そうとする度兄さんがそこ! 楽しんでる!? みたいにやってくるので休む暇はない。上手側には入る隙間があまりなかったのか、下手側に何度も来たよ兄さん……しまいにはオーディエンスのなかにグイグイ入ってくる。マイクコード捌きのスタッフさんが慌ててついてきて、ミッチさんもコード捌いてた。てか私も手伝った(笑)。


動画拝借失礼します。私も(後ろ頭が)映ってるんで記念に。

いやはやなんかもうよいお年を〜といいたくなるライヴだった〜年の瀬(まだ)にいいもの観た気持ち…ご利益ありそう!

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・Setlist┃setlist.fm

01. She Still Leads Me On
02. Personality Disorder
03. The Drowners
04. Trash
05. Animal Nitrate
06. We Are the Pigs
07. Flytipping
08. This Hollywood Life
09. Filmstar
10. Shadow Self
11. The Asphalt World (Brett solo with Neil on Piano/Keyboard only)
12. The Only Way I Can Love You
13. So Young
14. Metal Mickey
15. Beautiful Ones

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転換中に「腕ぶつけちゃった、すみません!」「大丈夫でした?」「すっごかったですね〜」と声を掛け合うフロアの面々。こういうのも久し振りだ……ブレット兄さんの教室(何の)を乗り切った同志よ! って感じの連帯感がありました(笑)。

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後攻マニックス。ところでブレット兄さんの新技と一部でいわれていたマイクコードをピシピシやる仕草、今日観ててそうだージェイムズが普段からギターコードピシピシやってるじゃん! と思った。ジョイントツアーってこういう相互作用? もあるのね……。なんかさこういうのも30年前は考えられなかったというか、若いと楽屋でケンカしそうじゃん(笑)。ずーっと一緒に移動やらなんやらしてるとツアー疲れもあって殺伐としてさ…それが原因で解散した若いバンド沢山いたじゃん……歳とるとそういうとこの距離感とかうまくとれるようになるんでしょうね。アメリカツアーでうまくいったから今回アジアツアー(台湾、日本、シンガポール)やろうってなったんだろうし、来年はいよいよ本国でツアーです。しかも会場大きいとこばっかり。

ちょっと心配なのはニッキーの体調。もともと腰痛持ちで飛行機移動が辛いみたいなんだけど、今回は膝も痛かったようだった。ニッキー定位置が上手側で、2日間とも下手側で観たので今回あんまり見えなかったんだけど、すごいビョンビョン跳ねてるのが見えて元気〜と思っていた。近くで観たひとからあとから聴いて、ええーとなる。ご無事で……。そしてニッキーはいつもリッチーの話をしてくれる。恒例ではあるのだけど、皆ずっとリッチーと一緒だよ、ということを忘れずにいてくれる。「私たちの愛する、私たちの美しい、私たちの風変わりな、私たちの知的な少年は、いつでも私たちと一緒にいる」。

サポートのニックとウェインももはや不動で安定の演奏。ウェインの仕事は増えてきている。ソロもあったし、ジェイムズのギターがトラブったときもフォロー出来ていて、こういうときギター2本あると助かると思う。コーラスも増えている。シャウトするとちょっとロビン・フィンクみのある怪鳥音なのがチャーミングでもある。しみじみする。そういえばウェイン、1日目はSUB POPのTシャツ着てましたね。

ジェイムズは今日も火の玉で、2曲目に入る前ショーンがトラブったかして演奏が止まったとき、フロアに「ハーイ」とかいって場を和ませてくれた。メンバーに何かあるとジェイムズがその分がんばるの図はいつものことです。昔ニッキーがライヴ中に具合悪くなって動けなくなったとき(1999年の『This Is My Truth Tell Me Yours』ツアー、BLITZ2日目)も、ジェイムズはニッキーのところに何度も駆け寄り、「ごめんね今日はニッキーとても具合が悪いんだ」とフロアに説明し、演奏も歌も走ったり廻ったりめちゃめちゃがんばってた。ほんと一蓮托生のバンド(涙)。

そんなジェイムズ、今日は「Stay Beautiful」でフロアのシンガロングを聴いて「…Beautiful.」とにっこり微笑んでくれた。これには涙出た。てか今日はずっと泣いてたけど。ジェイムズって決して愛想のいいひとではないと思うけど、そんなひとが感謝の意をストレートに表現してくれるのが嬉しいし、何より歌と演奏がそれに込められてると感じられるのが嬉しい。イチニーサンシも聴けたし嬉しい。ミッチさんのカメラに向かってフフフンとかドヤァって感じでギター弾いてた姿も愛しい。

今日の最後も「If You Tolerate This Your Children Will Be Next」だった。やはり思うところあってこれを最後に唄ってるんだなと思った。ショーンのドラムも渾身、という感じだった。

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・Setlist┃setlist.fm

01. Motorcycle Emptiness
02. Everything Must Go
03. 1985
04. You Stole the Sun from My Heart
05. Still Snowing in Sapporo
06. Little Baby Nothing
07. Walk Me to the Bridge
08. From Despair to Where
09. A Design for Life
10. (I Miss the) Tokyo Skyline (First Verse Only)
11. This Is Yesterday (JDB Acoustic)
12. Slash 'n' Burn
13. Your Love Alone Is Not Enough
14. Enola/Alone
15. International Blue
16. Stay Beautiful
17. You Love Us
18. If You Tolerate This Then Your Children Will Be Next

Note: Setlist Quote: “Love is the extremely difficult realisation that something other than oneself is real” - IRIS MURDOCH

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アイリス・マードックは、アイルランド出身の英国の哲学者・作家・詩人とのこと。この日のクォート、本人に届いてた!

それにしてもsetlist.fm、ちらっとやった「(I Miss the) Tokyo Skyline」も“(First Verse Only)”ってちゃんと載せてる。配布される紙のセトリには即興でやった曲は記載されないのに、そういうとこもフォローしてるのすごいなー。集合知だとは思うが誰が書いてるのか…ライヴ初披露とか何年ぶりとかのノートもしっかり載せるし、どんなネットワークがあるんだろう? 曲名から演奏履歴も引けるんだけど、「〜Sapporo」とか「〜Tokyo Skyline」とかは日本だけで演奏してるんじゃないというのがわかるのも興味深いというか嬉しいというか。



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祭りは終わった。クエン酸切らしてたのでアミノ酸飲んで寝ました。

しかしどなたか書いていたけど、いくつも共通点がある(90sサバイバー、哲学的な歌詞、メンバーを失い活動が停滞するも見事甦る、ブリットポップのシーンにい乍ら極端に異端、舌鋒鋭いメンバーがいる・笑)のに最終的に全然似ていない。だからこそ長く愛されているのだなあと思う。活動が続いていたからこそワタシも今になってスエに出会えた! て思えたしな……人生って素晴らしい! 皆さんこれからも元気でいて! ワタシも健康に気をつける!(歳とるとまず気をつけねばならないのはそこ)

あと思い出といえば、2日間とも場内アナウンスが「マニック・ストリート・プリチャーズ」といい続けてたことかな……バンド名くらいちゃんといえやー!(ってこんなこというから客層が「UKロック界の火薬庫」っていわれるのか)

・Manic Street Preachersをデータベース化して分析【評価・セットリストまとめ】┃tm-808
ところで来日履歴を調べていたらすごいサイトに当たりました。演奏回数とかアルバムチャートとか図式化しててすごい見やすい……ブクマだ! 長く活動しているバンドのデータベースサイトってほんと貴重だしいろいろと助かります!



2023年11月18日(土) ■
MANIC STREET PREACHERS / suede DAY 1

MANIC STREET PREACHERS / suede@Zepp Haneda


昨年秋にこの二組の北米ツアーが発表されたとき、日本! 日本来てくれ! と騒いでいたのですが一年経って実現しました。何このカード夢かというツーマン。


マニックスとスウェードといえば粉川さんのこのエピソード。語り継ぎたい。どちらも紆余曲折あれど勤勉、というイメージです。なんたってマニックスは“Libraries Gave Us Power”て唄うバンドだからな! 大好き!

1日目の先攻はマニックス。二番目の柵前あたりにいてどの辺が見やすいかなーと様子を窺ううち、隣の姉さんと話が弾む。ミッチさんとかミッシェルの幕張とかいう話題が普通に通じる(笑)。開演とともにひとが雪崩れ込んで流され、いつの間にか一番前のブロックに。デッカちゃんが多い! 見えねー! どうする! とオロオロしていると、高身長のお兄さんが「俺友達待っててまだ来ないんで先にここ入ってください!」って前の空いてるスペースに入れてくれた。この兄さんも前述の姉さんも初対面。はースタンディング現場でこういうのも久々だったわ…楽しい……。

「日本に来るのはラグビーワールドカップ(RWC)以来だよ〜」とジェイムズ。4年ぶり!

・MANIC STREET PREACHERS THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS' 20th Anniversary Show and More(1日目)
RWCを観に来ていたウェールズ人と一緒に大盛り上がり

・MANIC STREET PREACHERS THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS' 20th Anniversary Show and More(2日目)
ウェールズのラグビースター、ジェイミー・ロバーツがギターで(!)ゲスト参加

・MANICS、Rugby World Cup 2019を行く
ジェイムズがWAL対AUS試合会場のサブトラックでライヴを開催

いやあ、あのときは盛り沢山だった……。RWC2019のキャッチコピーが「4年に一度じゃない。一生に一度だ。- ONCE IN A LIFETIME -」だったんだけど、マニックスの来日公演の歴史から見ても一生に一度ってなお祭りだった。今回のRWCはパリ。こっちの方が彼らの居住地から近いのでウェールズの応援に行っていたのかな。

で、まあ色々と胸がいっぱいなんだが、あの、ショーンがバチカンのエクソシストみたいな風貌になっててえらい貫禄というか迫力のあるルックになりましたね。まずそれにビビった。画像で見てはいたが、実際に見るとお、おう……となりますね。

オールタイムベストではなく、新旧バランスよく組んだセットでした。それであれだけ盛り上がるのはすごいね。濃いファンが多いからか。うれしかったのは一昨年リリースの『The Ultra Vivid Lament』から「Still Snowing in Sapporo」をやったこと! コロナもあってかこのアルバムのツアー来なかったもんね。日本初披露です。ジェイムズの弾き語りコーナーでは『M★A★S★H』の「Suicide Is Painless」が聴けたし感無量です。

で、馴染み深い曲ばっかり、という訳ではなかったのに全体的にずっと盛り上がってた。両バンドともに聴いてるひとが多いってことかな。アナタもワタシも90年代から一緒に生きてきましたってな同志がいっぱいいそうなフロアであった。誰も彼もとハイタッチしたい気分でしたよ。とはいうものの、若い子も結構いて、反応も良かったんだよね……こういうとこ、サブスクやYouTubeでアクセス出来ることの長所だろうなあ。末永く幅広い世代に愛されるといい……。

ジェイムズの息切れMC(ハーハーゼーゼー)が復活してたんだが、まあとにかく火の玉のような唄いっぷり弾きっぷり跳ねっぷりでした。あれよな、対バンってやっぱ燃えるよな……あとワンマンのときより時間が短いので、短距離走のペースでやっちゃうんだと思われる。効率的っていうのもなんだが、歳を重ねるにあたってこういう企画はいいかも。お互いのバンドのファンが新しい扉を開くことにもなるし!(と思ったのは、今回ワタシがsuedeに度肝を抜かれたからです。今かよ!)

と、終始楽しく観ましたが、最後の曲が「If You Tolerate This Your Children Will Be Next」だったことにはとても強いメッセージを感じて、胸が締め付けられた。素晴らしかった。

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・Setlist┃setlist.fm

01. Motorcycle Emptiness
02. Everything Must Go
03. 1985
04. You Stole the Sun From My Heart
05. Still Snowing in Sapporo
06. Die in the Summertime
07. Walk Me to the Bridge
08. From Despair to Where
09. A Design for Life
10. Suicide Is Painless (Theme From MASH) (Johnny Mandel cover) (Acoustic)
11. Slash 'n' Burn
12. Your Love Alone Is Not Enough
13. Enola/Alone
14. International Blue
15. Stay Beautiful
16. You Love Us
17. If You Tolerate This Your Children Will Be Next

Note: Setlist Quote: "We look at the world once, in childhood. The rest is memory" ~ Louise Gluck

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「あれを見て見ぬふりをするなら、次にああなるのは君んところの子供じゃねーの?」。「If You〜」といい、この日のセットリストのクォート(毎回マニックスはセットリストにニッキーの選んだ詩の引用が記される)といい、彼らは現状を嘆いている。いや、ずっとそうなのだ。「If You〜」が発表されたのは1998年。モチーフは1930年代のスペイン内戦。争いが繰り返されることに彼らは心を痛めている。怒りを感じている。だからこそ、今回のツアーの最後に唄う曲として、この曲を選んだのだろう。

・マニックス、"If You Tolerate This Your Children Will Be Next"を無断で使った極右団体を訴えると主張┃rockinon.com
こういうこともあった。

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後攻suede、こちらは7年ぶりの来日だそうです。出順は事前に発表されていたんだけど、転換中にやる気のひとがめちゃ前方に攻めてきて、スエガチ(そんな言葉あるのか)の強さを感じる。思えば観るの初めてだった、確か。いや〜初生スエの衝撃はすごかった。話には聴いていたがブレット兄さんホント客を休ませない。シンギン! クラップユアハンズ! メイクサムノイズ! と何度いわれたか。上手下手中央をテキパキと見渡し、そこ! サボってない! てな感じで指差すし、松岡修造のようだった。熱い。You & Meもちゃんと君!(フロアを指差す)と僕!(自分を指差す。あるいは自分の胸を叩く)とジェスチャーも熱かった。格好いいとオモロいは紙一重。

初見とはいえアナタもワタシも90sサバイバー故トラッシュとソーヤングメタルミッキービューティフルワンズあたりはサビうたえたな…世代……。サブスクはなかったけどワタシたちにはbeat UKと月イチペースで通っていたDJイヴェントがあった! と叫ぶ。しかし知らない曲もブレット先生の指導のもと唄えましたね…熱血指導……。

それにしてもブレット兄さん、ハンサムが過ぎる。ハンサムだった……動きも歌もすごすぎてもはや笑えるレベルであった。こちらもワンマンより時間短いからこんなパワフルなの? と思ったがワンマンでもこれくらいらしい。ヘロイン漬けでベロベロだった時代もあるそうだけど(というかあの辺り聴いてればガチのファンじゃなくても伝わってくるじゃん)、自力で立ち直ったそうじゃないか。超人。やっぱ勤勉なのよな……節制もハンパないと思う。玄米食だったりするそうなので見習いたい。

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・Setlist┃setlist.fm

01. Turn Off Your Brain and Yell
02. Personality Disorder
03. 15 Again
04. Trash
05. Animal Nitrate
06. Killing of a Flashboy
07. Life Is Golden
08. She Still Leads Me On
09. Can't Get Enough
10. Shadow Self
11. The Wild Ones (Acoustic Solo - Brett Anderson)
12. Everything Will Flow
13. So Young
14. Metal Mickey
15. Beautiful Ones

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ソニーさんなんでスエのセトリは載せないのかと思ってたけど、スエはワーナーだからか。というかソニーさんスエにも配慮しててやさしい(てかワーナー、アカウントあるけどこういうのやらないの?)。ライヴ後にセトリをプレイリストで公開するのすっかり恒例だけど(便利)こっちは一緒に出せるからいいですね

(20231212追記:と思ってたら、今スエって日本のレコード会社との契約がないのね!? ミッチさんのツイートで知った。えーなんでや)

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・マニック・ストリート・プリーチャーズ、1994年に行ったスウェードとの共同ツアーを振り返る┃NME Japan
ジョイントツアーは1994年以来。ていうか帰り話してたんだけどマニックスはスエのドラウナーズをカヴァーしてたことあるけどスエはマニックスのカヴァーやるなら何かな〜て。でも世界観が違いすぎて全く思いつかない……そしてこのツーマンってどういう夢のカードよと今更我に返る。

・The Drowners, Manic Street Preachers 1994

suedeにバーニーがいた頃。そしてマニックスにリッチーがいた頃。リッチーはこのとき既に心身を病んでいて、ライヴには出たり出なかったりだった。4人での最後のツアー。

・スウェードとマニックス (2010/06/10) 児島由紀子の「ロンドン通信」┃rockinon.com
丸くなったね、てかイギリス人のジョークはキツい。ちなみにここにリンクが張ってある、マニックスにバーニーが参加した「某チャリティ・イヴェントにマニックスが出演した時のライヴ」のドラウナーズはこの動画ではないですね。この動画にバーニーいないもんね。ていうかホントwebに残ってない情報は多いね〜としみじみする。

(20240304追記)


・Manic Street Preachers - London Clapham Grand - 02/03/1994


なんと4ヶ月後にこんなツイートが。そしてなんとこの日のライヴが全編YouTubeにアップされていたことを今になって知る。公式が反応してくれなかったら気付かないままだったよ!



2023年11月11日(土) ■
『ねじまき鳥クロニクル』

『ねじまき鳥クロニクル』@東京芸術劇場 プレイハウス


どんなに痛めつけられてもなかなか死なない身体というものに、感謝するか、うんざりするか(やれやれ?)で感じ方も違う。ちょっと自分でも意地悪な見方をしてしまったと思うが、インバル・ピントは「常に卵の側に立つ」と発言した村上春樹原作の舞台をクリエイトし乍ら、自分の国が置かれている状況をどう思っているのだろうと考えてしまった。それは初演時もそうだろう、とはいうものの、パレスチナ情勢が激化した“今”この作品を上演することに、観る側はやはり何かの意味を見出そうとしてしまう。

父が亡くなり、私が決して知り得ない父の記憶も去っていきました。しかし、父の周りに潜んでいた死者の影は私の記憶に残っています。それは私が彼から受け継いだ数少ない、しかし最も大切なものの一つです。
・村上春樹さん「常に卵の側に立つ」ガザ侵攻したイスラエルで伝えた、たった一つのメッセージ【改めて読みたい】┃HuffPost

イスラエルは、ユダヤ人国家という出自や戦争報道から、排外的なナショナリスト的印象を一部では持たれている。しかし一方で、同国は世界各地にいたユダヤ人のごった煮だ。
固定されたアイデンティティにとらわれない無節操なまでの変幻自在ぶりや、生真面目さに堕することのない泥臭さやユーモアのセンスは、自由なコスモポリタン的感性の反映だ。
・埼玉アーツシアター通信 2007 vol.10
・インバル・ピント紹介┃山形浩生

当時読んで印象に残っていた記事。山形さんのテキストだったな。

とはいえ、待望の再演。初演の感想はこちら。初演からブラッシュアップし、同時に新しく加わったシーンもある。

やはり印象深いのは吹越満演じる間宮中尉が、1938年に満州蒙古国境で体験した出来事を語るパート。初見時よりは短い体感だった。実際に短くなったのか、一度観て知っているシーンだからそう感じたのか判らない。凄惨かつ理不尽な体験を訥々と、かつ流麗に語る台詞術と、アクロバティックにすら映る身体表現を約20分。なおかつ“老人”としての佇まいも見せなければならない。この役を他に演じられる役者、ちょっと思いつかない。初演から数年空いたことでいちばん心配だったのが吹越さんの体力だった。失礼かな? でもあのシーン、とても負担が大きい。そして、その身体的負荷が重要かつ不可欠なので、変更はあり得ない。

いちばん過酷ともいえる身体表現のパートが、登場人物の体験に直結する。井戸の中での出来事を語るとき、頭部を下にして自立する。サポートがいる? と思わず背後を確認してしまう。そこには誰もいない。長い台詞を語るその身体は、全く揺らぐことがなかった。朱に染まっていく彼の顔だけが、その後の“抜け殻の人生”の所以を物語る。

「日本に戻ってきてから、私はずっと脱け殻のように生きておりました。そして脱け殻のようにしていくら長く生きたところで、それは本当に生きたことにはならんのです。脱け殻の心と、脱け殻の肉体が生み出すものは、脱け殻の人生に過ぎません。」
「戦争が終わって随分時間も経ちましたし、記憶というものもそれにつれて自然に変質していくものです。人が老いるのと同じように、記憶や思いもやはり老いていくのです。しかし中には決して老いることのない思いもあります。褪せない記憶もあります。」

原作では二部に渡って語られる告白は、舞台で1シーンに凝縮される。この体験を誰にも話すことなく生きてきた間宮が、近づいてきた死を自覚し、たったひとりだけに打ち明ける。こうした“告白”は、ここ数年現実社会でもよく見られる。被害だけでなく加害も。なかったことにしないために、だろうか。

それにしても吹越さん、初演時は54歳、そして今58歳。圧倒的。舞台で観続けていきたい役者だけど、映像でも引く手あまたなのでなあ。少ない機会を逃さないようにしたい。ずっと観てきたソロアクトも、実は待ち続けている(これこそ体力が重要だもんなー)。

ナツメグとシナモンのシーンも印象深い。ここにもやはり戦争の体験がある。銀粉蝶の声は水のようだった。幼少期の楽しかった動物たちとの思い出と、それを打ち棄てることになった家族──父を目撃した悲しみが聴く側の心に沁みわたっていく。語ることを辞めた松岡広大の存在感も大きい。

綿谷ノボル役は初演から続投の大貫勇輔と、首藤康之のダブルキャスト。首藤さんの回を観た。加納マルタ/クレタは徳永えりから音くり寿に。ノボルがクレタを蹂躙するシーンは、初演では大貫さんの体格のよさ(身長が高い等、身体そのものの大きさ)が恐怖の対象になったが、今回の首藤さんは、筋肉質乍らしなやかであり、細い体躯であのようなことをする、という部分におぞましさが感じられた。音さんとのボディコンタクトが多いシーンでもある。バレエで培った女性ダンサーのサポートやリフトの技術が、こんな風に役立つものかと感心もし、演者同士の信頼関係がないと難しいシーンでもあると感じる。

トオルは冒頭で火を扱い、門脇麦演じる笠原メイと間宮は井戸について語る。マルタは水の霊媒師だった。トオルとノボルの戦いは、ノボルとクレタ、そしてノボルとクミコの戦いに反転する。相容れない火と水。男性に傷付けられた女性に、男性がどう向き合うか、ということにも目が行く。人間の嗜虐性は刷り込みなのか、と考える。

トオルというひとりの人物をふたりで演じた成河と渡辺大知。体格も声質も、唄い方も全く違う。ミュージカルの歌唱と、シンガーソングライターの歌唱。どちらも言葉の伝達度が高いのだが、今回は特に渡辺さんの歌に感銘を受けた。トオルのダークな面を引き受ける成河さんも素晴らしかった。門脇さんの声とムーブは、演じる人物=メイの若さを反映する厳しい輝き。彼女でなければ深く冥い井戸へ光を投げることは出来ないだろう、と思わせる。その光に、人類の未来を照らしてほしいと思う。どのシーンも絵になると同時に、生きている人間が舞台に立つことの意味を感じさせてくれた“特に踊る”ひとたち、インプロ含め「この日この場所にしかない」音を舞台に寄り添わせた演奏チームにも大きな拍手。

文庫も出たことだし、『猫を棄てる 父親について語るとき』を読んでみようと思う。村上さんの父世代が見たこと、体験したことを知っておきたい。死者の影を受け継いでいかなければ。そう思わせてくれる舞台だった。

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・村上春樹の小説は『ねじまき鳥クロニクル』以降に様相を変えた──キャリア最重要作を再読する┃Real Sound
さらに記しておきたいのは、『ねじまき鳥クロニクル』の戦争の描写に、村上の父親の影が色濃く投影されていることだ。
特に所属した部隊が中国で捕虜を処刑したと父から打ち明けられたエピソードは、『ねじまき鳥クロニクル』と強く結びついている。
初演時の記事

・二〇世紀満洲歴史事典┃吉川弘文館
村上は、間宮中尉を通じてなぜ満洲(中国東北部)の逸話を、これほどまでに痛烈な表現で描いたのか。それは、歴史の結節点(異世界をつなぐ井戸のようなもの)として、満洲を位置づけ、そこには多くの血が流れたことを描く必要があったのではないか(無意識にしろそうでないにしろ)。

・冒頭、トオルが掌に火をかざすシーンがある。手にはグローブかプレートを装着しているのだが、この日はその防具に火がついてしまっていた。怖! 成河さん、ハケるときさりげなく吹き消していたけど毎回そうなのかな? その熱さに苦悶するというシーンではあるけどリアルが過ぎる、気をつけてー!

・初演のとき、MOONRIDERSの岡田徹さんはご存命だったなあと思う。寂しい

・余談。首藤さん、すごいロン兄ルックだったのでニコニコした

・今回もカーテンコールでセンターに立ったおおともっち、やはり主演俳優のようだった(微笑)


原作好きにはと書いたのは、これ、舞台には出てこないシーンなのです(…)



2023年11月08日(水) ■
『ザ・キラー』

『ザ・キラー』@シネマート新宿 スクリーン1


Netflix製作につき、一週間限定の劇場公開後は配信のみ。FRUEに行く週で諦めていたのですが、好評につき上映延長とのこと。いやあNetflix入ってませんで。家でそんなに過ごさないので観る暇がない。というか配信ならいつでも観られるしとなって結局観ずに終わりがちな性分なもので。音がすごいので劇場公開があるならそっちで観るべし! との情報も結構目にしたので、劇場好きはいそいそと出かけます。というか新宿でかかってくれて有難う。喜び勇んでシネマートへ。客入れがNINの「コピオバ(Copy Of A)」、客出しがThe Smithの「ゼアイズアライト(There Is a Light That Never Goes Out)」。劇場のこういうところが好き〜! シネマートさんのアテンドはいつもホントに素晴らしい。平日(サービスデーの水曜日ではあるが)レイトにも関わらず結構な入りでした。

いやはやホントに音が凄かった。シネマート自慢のサウンドシステム、「ブーストサウンド」の威力よ。そもそも本編の音響設計がめちゃくちゃ緻密で、それが文字通りブーストされるもんだから正直酔いかけた(笑・三半規管弱り中)。冒頭にも書いてるけど、音設定がめちゃくちゃ細かい。全編通して使用されているスミスの楽曲にしても、“ザ・キラー”がイヤフォンを通して聴いている音、それを外から聴く音(所謂シャカシャカ音)、カーステから流す音(車内/車外)、倉庫での音(屋内/屋外)と全部違う。というか、自然音と録っているのではなく、「設定」として手を加えている。それらに加えホテル、ジム、レストラン等の建物で流れているBGMと劇伴、雑踏音、生活音の音を人物の動きとともに細かく切り替えているし、全部クリアにしてる。なんなら本来クリアではない箇所にはわざわざノイズを(手作りして)加えている。

逆に、映画やドラマの音設計って、視聴者が快適に聴けるように音を均質にしているんだと思った(笑)。やさしさ……。家でヘッドフォンで聴いたらそれはそれで酔いそうだなー。映画館での鑑賞はハコ自体の鳴りも含まれるので、まだ逃げ場があるというか快適ではあるのかも。

トレント&アッティカスの劇伴もブリブリビチビチで最高でした。電子音がブーストされると脳天にキますね!という訳でとにかく音がすごく、劇場で観てよかったなあと思いました。

で、お話と演出。こ、コントかな? 最初の仕事の顛末とか、あらすじにあったのについ笑ってしまったよね……。スミスが大好きな殺し屋さんがスミスを聴きつつすんごい緻密に決めたルーティンを守りつつ、それをモノローグですんごい丁寧に説明しつつ任務を遂行する。几帳面が過ぎる。字幕で見てても相当だったんだけど、Netflixの吹き替えで観た方によるともーーーっと細かくてもはやうざいくらいだそうで。わかる。で、そこ迄丁寧に進めといて……失敗するんかーい! という膝カックンっぷりがすごい。これ演出の緩急というかリズムが素晴らしいのです。待ちに待ったターゲットが現れる迄の長い時間、詰めに詰め緊張感を高める狙撃の準備、突然の来訪者に狼狽しつつ息を潜める数分、狙いに狙って…失敗して(!?)……そこから慌てて、しかし冷静に逃げる描写。その後の殺し屋の移動と滞留、そしてまた移動。これがまた順番! て感じでめちゃめちゃ几帳面にひとつずつ証拠を集め、エージェントとその依頼人を探し当てていくんですね。クイック、クイック、スロー、といいたくなるようなリズムのよさよ……。

まあそっからは失敗しなかったよね。えらいね! と背中をバンバン叩きたくなるような殺し屋ちゃんでした。殆どのシーンをひとり芝居で演じたマイケル・ファスベンダー素晴らしい。ここも膨大なモノローグと会話の相手が現れたときのリズムがよく、ファスベンダーとティルダ・スウィントンのダイアローグの心地よさといったらなかったです。ちなみにスウィントンが出てくる迄相当焦らされる。それも情報を小出しにされて、いちいち笑えるんだよね……「綿棒のような女」って喩えが秀逸。「スウィントンのことだ!」って観てる側はすぐ解るじゃないですか。綿棒のような女…綿棒のような女……いつ出てくる……と待つじゃないですか。で、ようやく彼女が姿を現すさまを遠景で捉え、そのすらりとした長身とちいさな頭、ブリーチしたプラチナブロンドを眺め、綿棒だーーー!!! てなるじゃないですか。巧い…巧すぎる……まんまと乗せられる……。

そうそう音楽についてもうひとつ。見事にシーンとスミスの歌詞が紐付けられている。たまたまスミスリスナーだったから気づいたってところもあるが(というかスミスがいっぱい流れるってんで観に行ったところもあるんだが)、英語が母語でヒアリングがスムースなひとからすればこれもうざいくらいだったのでは(笑)。ニヤニヤして聴いていましたが、エンドロールに入った瞬間には泣きそうになっちゃった。あんなにドタバタだったのに最後、あの、あの歌詞から連想される結末ってーーー! Netflixは本編終了前に広告が入る仕様があるそうで、邪魔されないように設定変更をしておこうと注意喚起されてる方がいらっしゃいました。ホントその通りよ! あのタイミングで広告入っちゃったら気分台無しだよ!!!

音も映像も解像度がたけーよ! 画素数多いよ! 錯覚だとしてもそう思わせる力が強く、デヴィッド・フィンチャー監督やっぱ大好きと思いました。フィンチャーの映画を観続けるためにも身体を鍛えよう! 三半規管はどうやって鍛えればいいの! ていうかフィンチャー、『ゴーン・ガール』以降は劇場公開作品ないんだよね確か。『Mank/マンク』もNetflixだし……今回劇場で観られてホントよかったです!

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・The Killer Soundtrack Guide: Every Song & When It Plays┃Screen Rant
使用曲と、どの場面でどの部分が流れるかのリスト。そうそうポーティスヘッドもあったのよ〜

・ザ・スミスがかかりまくる映画、『ザ・キラー』(“The Killer”)を観て - Action is my middle name┃かいなってぃーのMorrisseyブログ
スミスといえば、モリッシーといえばのかいなってぃーさんによる、微に入り細を穿つ解説。有難く拝読

・あと最後のターゲット(てか依頼人)の着てるTシャツがSUB POP。ウケる

・余談。狙撃のために潜んでいた場所がWeWorkだったんですが、経営破綻のニュースが出た翌日に観たのでセキュリティに問題があったからじゃないかと思った(ヒドい)


犬猫は無事でした。個人的には昨今の「犬は無事です」ムーブは苦手だけどな。というかネタバレにはすんごく厳しいのに犬だけどうだったか教えろとかムニャムニャ



2023年11月04日(土) ■
『FESTIVAL de FRUE 2023』DAY1 その2

と、その1で“魂の震える音楽体験”とかいっといて〆はこれかい! 本日の私的メイン、クラウンコアだー! ちなみに中の人は日中敷地内でカートを乗り回しており(ジェネヴィーヴ・アルターディたちも同乗)、手を振ったらにっこり微笑んで頷いてくれたがあれは「クラウンコアとは関係ありませんよ、ルイス・コールは出ませんよいませんよ分かってんな?」という圧だったんだろうか。そして帰宅後検索してみたが、私たち以外に目撃談がない。ひょっとしてすごくラッキーだったか。もしくは皆お約束を守って内緒にしてるのか。

■Clown Core(The Hall)

一応説明しておくと、Drs/KeyとSx/Keyのピエロ二人組で、中の人はルイス・コールとサム・ゲンデル。一度もそうだといってないですけど。YouTubeで発表されている楽曲では、仮設トイレや車の中で演奏しています。車の運転手はDJ DRIVER(今回ミックステープが売られていて初めて知る)、中の人は不明。誰だ。

ステージにトイレみたいな箱型テントが搬入されザワザワ。まさかもうこの中に……? 後方にスクリーンを2枚設置。いそいそ準備をするスタッフも全員衣装を着てる。よく見るとそのなかに月野うさぎ仕様のツインテールブロンドウィッグにパンツスーツ、マスク姿のジェネヴィーヴもいる。ジェネは開演後もずっとステージ端に直立不動で立っていました。すごいシュールな光景でした。ときどき身体を揺らして踊ってました。音リハはなし。今か今かと待っていると、ガタイのいいお兄ちゃんが出てきてテントの隣に座ります。とりあえず歓声が起こります。

お兄ちゃんは椅子に座ってラップトップを操作、ここでキラキラな曲をまるまる1曲。多分このひとがDJ DRIVER。その後チルな自然音を聴き乍ら、明るいカリフォルニア(か?)の住宅街をスクリーンで鑑賞。ここまで約15分。テント内から演奏が聴こえてきてまた歓声。まさかこのままずっと箱の中? エイフェックスツイン仕様? とドキドキしていたらステージ側のテントがパタンと倒れ、ピエロが登場。


動画拝借(アップ有難うございます!)、やだ〜ドラマティック〜! てかやっぱセッティングの段階で中にいたんだ。アホやん。

あとは疾走爆走急ブレーキ事故事故事故なバキバキ演奏。スラッシュ〜! ゴア〜! プログレ〜! 悪意の塊〜! 演奏は当然バカうまです。ドチチチチチチチとかドタタタタタタタの連発がブレねーブレねー。映像はゴアゴアゴア。食用肉、人体、内臓、交尾、爆発、あと排泄物もあったかな? のコラージュで、いろいろと丸見えでした。いやーエグい。クリス・カニンガムやウィアードコアばりにエグい。やっぱリチャ(AFX)を思い出しちゃいますね。箱から出てきた辺りはリチャより親切か。映像に使われている素材は肉体=物体の色が強く、劣情を催さない(催した方がいいんだろうか、催してほしいんだろうか)……というより生命賛歌にすら映る。ニクイ…ジンルイ……ミンナシネ…ソシテマタウマレロ……てな感じです。恐ろしいのは、これ多分映像もルイス(仮)がつくってる。KNOWERやソロでもエグい映像使ってますけど、そのエグい部分を煮詰めに煮詰めた感じですね。

てかふたりとも兼任なんですよ。曲ごとに楽器を持ち替えて、じゃなくて同時演奏。ドラムは正確で高速なリズムを刻みつつシンセも弾く。両手塞がってるサックスは、MVで披露してた自身のちんこでキーボードをおさえる。歓声、上がりますね〜。悲鳴かもしれないですね〜。ちなみに映像ではモザイクがかかっていましたが、えーと、あれ、生(言い方)でしたか? 二階席からはハッキリ見えませんでした!

パフパフホーンやオナラのサンプリング、ノイズ、ほんでときどきハッとするような美しいメロディ。聴いてるこちらの情緒も安定しない(笑)、前のめりで聴く。ステージの両サイドではパチンコ屋でよく見るあの……なんていうんだあれ、ヒョロ長いビニール人形(これだ。チューブマン/エアダンサーていうのか)がフワフワぐにゃぐにゃ。曲が終わるとスクリーンに“APPLAUSE”の文字。わーいと拍手。最後は“PLEASE LEAVE”、“THANK YOU FOR YOUR MONEY”。アンコールなど勿論ありません。6時間やったリハとは、導線の確認や、いかにして他の出演者と交流しないか、したとしてもそれは表に出さないか、ルイス(仮)とゲンデル(仮)(サム・ウィルクスとの区別のため姓表記)の痕跡を音と映像のみにする、等の周知だったのかもしれないな……と思う程、厳格に拘ったショウでした。

いやー煙に巻かれたというかおちょくられたというか。それにしても、ルイス(仮)もゲンデル(仮)も、めちゃめちゃ世界を憎んでめちゃめちゃ世界を愛してるのねきっと、としみじみしました。生きるって素晴らしい。ここでふと思い出す。朝会ったおじちゃん、み、観たかな…どう思われたかな……。演奏の凄さは伝わったかと思いますと前向きでいたい。

FRUEのクルーが撮影していたけど、公的には流せないよなー。記録用か。てかFRUE、こんなバンドよく呼んだ(笑)。有難うございます。

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ちなみにルイスとジェネ、KNOWERとしての仕事もして帰ったようです。柳樂さんがインタヴュアー、楽しみ! ジェネは観光というテイだったそうですが、あのinsta大好きなジェネが滞在中一度も日本での様子をアップしなかった。徹底してますねー。そして思う、ジェネも来ていて、ウィルクスもいて、姿は一度も見ませんでしたが(…)ゲンデルもいて、これで先週迄ウィルクスと一緒にツアーで来ていたジェイコブ・マンが帰ってなければKNOWERやれたよなー。ゲリラ的に前日とか当日告知されないかなーとちょっと期待していましたが、それはありませんでした。KNOWERでの来日も待ってます!


偉そうに書いているが思えば10年以上活動してるんですよね…これからも末永くお幸せに……。ちなみにUSBは限定20個だったかな? 販売担当だったらしいバクテリアくんによるとこういう内容だったとか。いやー徹底してる。買えたひとのツイートを探してみたら、オナラ以外の音も入って3分以上のブツもあったらしい。ひょっとして全員違う内容? こんなことに手間暇かける、やはり最高。

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画像がない分はフロアが暗い夜に食べたからです(笑)。LA CASA DI Tetsuo OtaのアマゾンカカオレモンバターチキンはDancyu祭のときあまりの行列に諦めた逸品。FRUEなら食べられるんじゃね? と楽しみにしており、オープンとほぼ同時に並びました。200食限定、じっくり焼き上げるためしばらく待つけれどその価値ありあり、流れてくるバターの香りを胸いっぱいに吸い込み乍ら待つその時間も幸せ。めちゃめちゃおいしかった。
その後転換毎におやつやごはんを買いに出かけ、椅子席で素敵な音楽を聴き乍ら食べるというなんだこの幸せ。いやホントどれも旨かった……これだけのお店を呼んでこれるFRUEのブッキング力よ。

という訳で我々はここでおひらき。オリオン座がくっきり見える夜空を見上げて帰ります。しかしバスでまたもや酔う+目眩発生、駅前で沈没。ご迷惑をおかけしました……酔い止めと目眩止め服んでても全然効かねーじゃねーかどうすりゃいいんだよキエー!


翌朝はケロリ。静岡旅行の仕上げだ! と、県内にしか出店していない憧れのさわやか、初実食。つなぎ殆ど入ってないのでは? な肉肉肉しいおいしい炭火焼きハンバーグ。
朝10時から配布される整理券をもらい、10:45の開店時間と同時に入店しました。てか整理券が出るのがすごい。公式サイトで全店の待ち時間が実況されているのもすごい。人気の程が窺えます。
レアがオススメといわれたのであまり焼かずに食べました。いやあ…肉だった……ウマイウマイ。
静岡県人のみぃ♪さんが「駐車場は県外ナンバーばかり」といっていたけど確かにそうだったかもしれん……会場最寄りの掛川インター店、つま恋リゾートへの道の途中にあるんですよね。FRUE帰りorこれから行くっぽいひとがかなりいた。ルイスコールやサムウィルクスのTシャツ着てるひとの多いこと(笑)。


最後はこちら、自家製ヨーグルトも気になったが甘いものが食べたくて。てかごはんもおいしそうだったな〜。

そして帰りの新幹線でまた酔う(目眩は起こらず)。いやーホント困る。往路は全然平気ってのが意味わからん、疲労が関係してるのか? フェスなんて都市型でない限り僻地でやるから車に乗るの必須じゃん……おいしいもの沢山食べたのに吐きたくない(食い意地)! なんとかしたい!



2023年11月03日(金) ■
『FESTIVAL de FRUE 2023』DAY1 その1

『FESTIVAL de FRUE 2023』DAY1@つま恋リゾート彩の郷



お初のFESTIVAL de FRUE、1日目のみ参加。いやー楽しかった。昨年の『FESTIVAL FRUEZINHO 2022』と『after FdF』がとても楽しく充実した内容だったので、いつか本祭(?)にも行ってみたいなあと思っていたところClown Coreの出演がアナウンス。これはもう! と参加決定。サム・ウィルクスが別日になったのは痛かったが仕方がなーい! 観たかったよーうわーん!

それにしても自由度高く適度に不便で適度にユルい塩梅がいい。不便を上回る楽しさがあるのです。参加人数がこれ以上増えるといろいろルールが増えて窮屈になるかも。でもあんまりにもひとが来ないと主催が困るかも。とにかく新参者からすると丁度いいと思えるフェスでした。

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掛川駅に到着し、シャトルバス乗り場を探すが見つからない(笑)。張り紙や案内がない。スタッフもいない。なんとなーくひとが集まっているところに行って訊いてみると、皆さん「いやーここか判らないけど、ひとがいるんで……」との答え。で、その集まりも、並んでるというより日陰だから(この日暑かったので)そこにいるという感じ。先頭がどこかも判らない。そのうち新幹線が着く毎に続々とひとがやってきて行列発生、自分たちのいるところが先頭グループになってしまった。これでここが停留所じゃなかったらどうしよう…責任を感じる……と不安になっていたところにバスが来た。合ってた! よかったよかったと乗り込みました。

バスが来る迄、隣のエルメート・パスコアール好きで2日間参加するというおじちゃんと何観るんですかーと話す。クラウンコアです! 覆面バンドで初来日なんだけど、中の人は何度も日本に来ててすごい演奏をするんですーという話をしたら、知らないけど観てみますねーといわれた。お互い初参加で、SNSで観てたらとても楽しそうなフェスだったんで……という共通点。ですよね〜あれ見たら行ってみたくなりますよね。FRUE陣営、SNSの使い方巧い。

ちなみにバスは30分に1本、往路は無料。最初に来たバスに乗れなかったひとが行列の半分以上はいたかなー。あのとき並んでいた全員がバスに乗れたのって、1時間半後くらい? それでも昨年迄1時間に1本の運行だったそうなので、かなり改善されたのかも。あとやはり車で来るひとが多いのかも。会場迄は徒歩40分くらいとのこと。次便を待ってられん! と思ったら歩いちゃえという選択肢があるのはいいですね。

会場到着、リストバンドを貰い、しばしうろうろ。The Hallの開場は12時とのことで1時間くらい間がある。既に始まっているGrass Stageに行ってみる。E.O.Uがスピン中、キャンプサイトにテントを張っているひと、芝生に寝転んでいるひとがぼちぼち。緑が沢山、気持ちいい。それにしても11月とは思えない暑さ。夜は冷えるというのでヒートテック着ていくか迷ったんだが、エアリズムにしてよかった。寒くなったら上着着ればなんとかなる。

さてホールが開場。半野外というか、側面と後方がブチ抜きになっており、外の光と風がよく通る。FRUEZINHOの会場である立川のステージガーデンも後方が野外ブチ抜きになる仕様だった。そうか、このホールがイメージの源だったんだ。で、いい感じに寂れている……というと失礼か、歴史が感じられる。あちこち錆びていたり。でも設備もトイレも清潔で、だいじに手入れされている印象。そう、つま恋リゾート彩の郷は元ヤマハリゾートつま恋。「ヤマハポピュラーソングコンテスト(ポプコン)」の会場として使われていたところなのです。1974年から数々の音楽が流れてきたホール、来年50周年ですね。いや〜いいとこでやってるな〜。

昼ごはんを調達、二階席に陣取り、以降は転換毎に席を移動しつつ過ごす。そうなのいつも席が適度に空いてるの。近くで観たいひとや踊りたいひとは一階のフロアに降りる、休みたいひとやのんびり観たいひとは椅子席に上がってくる。快適。敷地内のホテルノースウィングも出入り自由でトイレが利用出来るので、転換時に飲み物を買いに行ったり(瓶、缶は会場持ち込み禁止でしたがペットボトルはOK)、ロビーでポプコンの歴史パネル展などを観たりしました。

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■CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN(The Hall)
お初です。プロフィールには「東京発の3人組コミックバンド」とありました。しかし笑わせるようなMCはなく、楽しい歌と演奏で皆ニッコリ。サポート入れて全員で6人だったかな。Drs、Perc、B、G、Key、DJ、Voという編成で、ほぼ全員が複数のパートを担当。メインでVoを張っていたサポートの方は手持ちのシンバルをマレットで叩き乍ら唄う。パーカッションの音数も多く、気持ちいいリズム。中南米音楽のリズムパターンの1種が“cho co pa co cho co quin quin”なんですって。「リンゴ追分」のカヴァーも格好良かったです。
・CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN、「都内の路上にて曲を作る」動画が話題に バンド結成から無二の音楽性まですべてを語る┃Real Sound
ルイス・コール、Clown Coreの名前も。繋がってますねえ。

■Fabiano Do Nascimento(The Hall)
ギター弾き語り。ボサノバが基調、暖かく優しい声。秋晴れ、昼過ぎになんてピッタリな音楽。いやいやきっと夏の朝にも、冬の夜にも、春の夕暮れにも寄り添う音楽なのだろうと思う。いつでもどこでも傍にいる、そんな音楽。
ベースが置いてあるなあ…一昨日DOMMUNEでサム・ウィルクスと共演してたよなあ、ひょっとして……と思っていると、「夢が叶った、こんなことがあるなんて」と紹介されてゲスト登場、不勉強乍ら存じ上げない方。ハッピーな空気のなか一曲共演。最後に固いハグ。パスコアールグループの方かなと帰宅後調べてみたらやはりそうで、Itiberê Zwargだったとのこと。FRUEはこうした飛び入りセッションが数多くあるそう、いいですね!

■cero(The Hall)
そもそもFRUEが暗い(会場が)というのは、�眈襪気鵑�いってたことなんでした。この日も�眈襪気鵝◆屬い筺�FRUE、相変わらず暗くていいですね〜」っていってた(笑)。謎深く奥深く、いつ観ても印象が変わるバンド。ふわりふわりと喋る�眈襪気鵑脇輿崖諒僂靴洞�い歌を聴かせるし、ポリリズムがベースで踊り続けられる。小田朋美さんもノリノリ。FRUEの常連角銅さんは「Queen of FRUE、角銅真実!」と紹介され暖かい拍手で迎えられていました。

■Angel Bat Dawid(The Hall)
全く予備知識なしで観ましたがすごかった。広いステージの中央に、全て座ったまま手が届くようびっしり配置された楽器と小物。自室を再現しているかのよう。音リハの時点でどんどん演奏を展開し、もう本番なのか? と思っていたら引っ込み、しばらくしたら地声で唄い乍ら登場。その後は多分全部即興。唄い、シンセを鳴らし、クラリネットを吹き、踊る。スピリチュアルジャズ、という言葉だけでは片付けられないけれどどこかと交信しているとしかいいようがない。と思うといきなり「エリーゼのために」を弾き始めたり。スピ一辺倒ではなく、演奏力はしっかりあるってとこでますます訳が分からず。というかホンマもんのスピってそういうことかもしれん。セッティング〜本番〜片付けの境目も分からず呆然。息をするように音楽を奏でる。最後に一曲共演したゲストヴォーカルはEva Supremeという方だそう。

それにしてもずっと音がいい。出演者の楽器編成も、演奏されるジャンルもバラバラな上、半野外なのに。PAすごいなあと思っていると、フロアに続々と真紅の服やアクセサリーを身につけた観客が集まってくる。GEZANはリハの時点でバチバチの演奏、サウンドチェックからもう凄まじい。このまま聴いていたいが後のことを考えて中座。しかし思いの外ごはんの出来上がりが遅く、並んでいるひと同士で時間かかりますねえでも出来立てはおいしいですもんねなどと話しつつ焦る。すると背後からバグパイプの音色が。タカさんが演奏し乍ら会場に入っていった。ギャ〜始まってしまった! でもこれ、ある意味ラッキーだったかも。スタート地点を見られた訳だし。

■GEZAN(The Hall)
という訳で序盤見逃しましたが聴いてはいたよ! いやはやすごかった……この日にしか鳴らせない音を豪速球で投げてくる。Million Wish Collectiveと鳴らしたFUJI ROCK FESTIVALから約3ヶ月、剥き身の4人。先月突然旅立ったOLAibi、そしてパレスチナ情勢。大きな喪失と怒りをそのままぶつけられたかのようだった。
“神様を殺せ、権力を殺せ、組織を殺せ、GEZANを殺せ”。ステージは「赤曜日」で始まり、「EXTACY」では“お前らは線をまたいだ”と矛盾を暴き、「東京」の“メディアは終わる”を“メディアは終わってる!”と繰り返し叫ぶ。
プロテストソングを鳴らすバンドだと思っているが、それ故「音楽に政治を持ち込むな」などというひとは徹底的に嫌うだろうし、冷笑するひともいるだろう。しかしそれだけ周囲を巻き込む力が強い。無視出来ない。通りすがりのひとを振り向かせる(北、というより強)風と太陽を持ち合わせ、不器用かもしれないが賢さがある。ことを起こす衝動は大きなものだが、頭の後ろは冷え、醒めている。七転八倒し乍らバランスを探す。

ここ迄ラテン、ジャズ、フォークロア、インプロ、ロック。そしてプロテストとスピリチュアルなメッセージ。つくづく不思議なラインナップ。一見バラバラに感じる音楽は、FRUEという場に集まれば“魂の震える音楽体験”になる。垣根などない、いや、垣根を壊せと知らせてくれる。