Leaflets of the Rikyu Rat
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2005年05月25日(水) プロとコントラ

    惚れるのは、憎しみながらでもできることだ。おぼえておくといい!
                                      (ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」より)


 九時半梅田ビッグマン前
 先月別れた元彼と合流する。
 そのまま「おでん」を一緒に食べる。僕のリクエストだ。
 僕はおでんの大根とじゃがいもが本当に好きで、
 よくバイト帰りに彼は僕におでんを買ってくれていた。
 彼は卵が好きだった。

 「大丈夫だ」と思っていたものの、実際会うと少し心は揺れた。
 まあ、減らず口を叩けたので大丈夫なのだろう。
 二時間くらい話をしたけど、概ねすごく仲良く会話してたんじゃないかなあと思う。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 「僕にとってお前は本当に弟みたいな奴なんや」

 ありがとう。でも、
 だったら、なんで前まで付き合ってたんだろう?

 「僕と啓介の関係ってなんか不思議で複雑だよね」

 よく分からない。僕はフツーに恋人同士で居たかったよ。

 「対等じゃなかったやん。実際対等じゃなかったやん。仕方無いやろ?」

 対等じゃなかった。
 どんなに頑張っても、対等にはなれなかったし、そうだと認めてくれなかった。
 経済力の差は数年で埋まるはずが無いし、
 年齢の差は一生縮まらない。
 それに一番左右されてたのは、誰でもない君だったと思う。
 分かっていたけど、すこしやりきれなかったなあ。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 
 あれこれ考えてみたけど、やっぱり僕は彼と別れて正しかったのかもしれない。
 彼の家は彼の一生変えることのできない住処で、来るものは決して拒まない素敵な家だ。
 ひとりひとりがみんなとてもやさしい。
 けれどどうしてか自分は馴染むことができなかった。
 完成された世界に不完全な自分がひとりで入って行くような印象だった。
 隣りに居る彼は完成された世界で、
 そこにいるべき完成された人間として安心しきっていて大きな鼾をかいていた。
 僕はその隣りで精一杯振舞って適応しようとするけど、
 その「精一杯」の力を出すのに疲れた。

 彼は家族と恋人は違うと言う。
 僕もそう思う。
 けれど彼は「輪」を望み僕は「線」を望んだ。
 その時点でお手上げだったのかなあ。 

 「もしかしたらまた付き合うことになるかもしれんで。」

 なんて、ずるいことを彼は言う。
 “もしかしたら”そうかもしれない。
 そうなったら素敵だと思う。
 けど、一度終わってしまったものをまた始めるのは
 とても大変なのだということを僕は知っている。

 「今でもときどきもやもやっとした気分になることがあるんだよね」と彼が言ったので、
 「たぶん僕を振ったことに対して罪悪感みたいなものを感じてるんじゃないかなあ」と答えた。
 僕のことが嫌いになったから別れたのではなく、
 東京と大阪という物理的な距離、そして僕と彼の家族との実質的距離、
 それらによって別れたのだという。
 僕のことが嫌いになったから別れたんじゃないって、
 またずるい言葉だなあ。

 僕は強く彼を愛していた。
 そして正直に書くと、時折憎んでいた。
 僕は自分の愛情に対して、愛情で返してくれることを望むような人間だ。
 そしてそれが満たされないとき、僕は憎しみを抱いていた。(その名の通り愛憎だ。)
 彼はいつでも躊躇していた。
 僕と一緒にいて、僕がどこかへ行ってしまうことを恐れていた。
 それは僕がまだ二十歳で、彼は三十二歳だったからだ。
 僕は彼と別れてもまだ長い未来があるのだという。
 彼はもう年だから取り返しが付かないのだという。
 彼は僕に愛情を捧げきることを躊躇っていた。
 そのことを僕は憎んでいた。
 けど、そんな憎しみも今はもう無い。
 大好きだなあと思うし、ときどきずるいなあとも思う。けど別に憎んではいない。

 なぜなら、僕と彼はいい友達になったからだ。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


    かりにあたくしの<実行的な>人類愛に即座に水をさすものが何かあるとしたら、
    それはただ一つ、忘恩だけですわ。
    一言で申してしまえば、あたくしは報酬目当ての労働者と同じなのです。
    ただちに報酬を、つまり、自分に対する賞賛と、愛に対する愛の報酬とを求めるのでございます。
    それでなければ、あたくし、だれのことも愛せない女なのです!(引用、同上)





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 題名も引用同上。プロとコントラとは、ラテン語で「肯定と否定」、「賛否」を意味するらしい。


2005年05月24日(火) 夜のできごと

(日曜の出来事の続きです)

十二時頃帰宅する。
その日の思い出を反芻していたら昨日アドレスを交換したひとからメールが来た。
お誘いのメールだった。
けど数多く並べられている「♪」「☆」マークに少しひいた。(ごめんなさい。)
話してるといいひとなのに、メールになると少しおかしいなあ。
電話していいかと聞かれ少しだけ話す。
音質が悪くあまりよく会話が聞き取れなかったけれど、
土曜か日曜に飯を食いに行くことになった。
それなりに楽しみだ。

そしてまた今日一日のことをあれこれと思い出し、元気になる。
世の中はとても広く、僕の視野は狭かったのだと再認識。
先月別れた彼を「想い出化」することができていたことに気付く。
ならば怖いものなど無いはずだ。
それは半ば無理矢理的な行為であるけれど、今の僕にはそうすることしかできなかった。

水曜に彼と飯を食う約束だけれど、多分もう大丈夫だろう。




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2005年05月23日(月) 神戸

連続更新です。こちらからどうぞ。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

(日曜の出来事を記す)

同じ大学の同じ学部の同じ学科に友達がいた。
その友達が実はゲイだったということが分かったのは二ヶ月と少し前だ。
一年間英語を隣りに座って受けていたのに全く気付かなかったのだ。
(彼がゲイだと分かった経緯については当時のmixi日記に記しているので割愛)

その友達に日曜に神戸へ行こうと誘われており、予定通り行くことになった。
彼の友達のゲイの方や、更にその友達のゲイの方も同行するという。
十二時半に梅田BIGMAN前で集合。

若い。

ということが第一印象だった。
二十歳が自分を含め三人、二十一歳が二人、二十二歳が最年長で一人。計六人。

タイプな感じの髭の方がいらっしゃった。(髭の形状がタイプだということ。)
けど「純粋に友情を育む日なんだから不純な目的で来ないでね」
と見透かされたように友人に言われていたため
髭髭言うことはとりあえず断念する。後に言いまくったけど。
だって僕の髭への気持ちはとても純粋なのだ。(屁理屈。)
まあ、彼氏持ちの方に手を出したりはしないのが信条だ。
口は出すけど。

阪急神戸線の電車内にて早速
「髭触っていい?」と目を輝かせながら聞いてみたらば「えっ・・・」とヒかれた。南無。

そんなこんなで神戸を練り歩く。

南京町にて中華料理
元町高架下を物色
港へ行き観光船に乗船
スイーツハーバー等。

その後は梅田に戻り東通商店街の居酒屋にて酒を飲む。
僕が少し喋りすぎたかなあ?と言う印象があるので
今度はみんなの話をじっくり聞きたいと思う。

神戸(三宮)へ来るのは三度目だった。
一度目と二度目は先月別れた彼とだいぶ昔に来た。
何が悪かったのか、神戸へ行く度にいつも喧嘩になった。
元町の高架下も二人で歩いた。
船なんて乗ったのはりゅう兄に会いに行った時以来だ。
いろいろ思い出して、少しだけぼーっとしていた。

ただ、すごく楽しかった。
考えてみれば同年代のゲイの友達は本当に少ない。
三十路前後のひととしか付き合ったことは無いし、
一年以上働いているけれどもバイトで来る客も
同世代の人間なんて一握りしか見たことが無い。
(三十代サラリーマン中心の店なので。)
なので頗る新鮮だった。

新鮮なのは年齢のせいだけでは無いだろう。
彼らはただ若いというだけでなく、“染まって”いなかった。

所謂“リアル”でのゲイコミュニティへ積極的に出てきている人間とそうでない人間との差は大きい。
(ネット上と、実際に飲みに出るのとではそれだけで受ける影響は全く変わると思う。)

大学の部活の友達と会話しているような感覚であった。
ただ、全員がゲイであるという点において特殊性を兼ね備え、
それのおかげで普段感じることは出来ない充足感、安心感を得たのだった。

できることならみんな今のままでいてほしいなあと思ってしまった。
そう思うべきでは無いと思うし、
僕が止めても皆それぞれの道をこれから歩んで行くのだと思う。けれど、
ゲイというアンダーグラウンドな世界に足を踏み入れたがために
心が荒んでしまったそのときには、今日のことを思い出して欲しいなあと思う。




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2005年05月22日(日) 飲み会に参加する

(土曜の出来事を記す)

朝五時バイト終了、朝御飯を奢って戴き五時半、
電車に乗って帰宅し就寝が六時半。
相変わらず頭痛で十時に目が覚めそのまま大学のプールへ向かった。
今日は某大学との対抗戦だったのだ。
久しぶりにプールへ行った。泳ぐひとを見た。
眩しかった。自分も泳ぎたくなった。

家に帰り、一時間だけ仮眠を取る。

大学のゲイの先輩が飲み会を主催するとのことで参戦要請を受け、
自分の中の何かが変われば良いと思い資格学校をサボり参加することにしていた。
計十六名での飲み会であった。
顔見知りは自分を含め五名。十一名は初めて会うひとだったけれど、
ほとんど会話もせずに終了するに至った。

二日酔いで鈍る思考を鈍いままでやり過ごし
迎え酒で少しラクにする。
顔見知りの多い席を陣取り粗相してもいいやというくらいの意気込みで臨む。
二次会でやっと一人のひととだけまともに会話し成り行きでアドレスを交換した。
一年間のバイトでひとの善悪の見分けには少し自信が付いた。
彼は悪いひとではなかった。

終電間近になり解散、帰宅、就寝。




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2005年05月21日(土) 空っぽだけど、


ただいま帰宅。
胃薬を飲んで行くのを見事に忘れてしまっていた。
明日頭痛くなるだろうなあ。

朝五時半の梅田はゴミが散乱し
ふらつきながら歩く男女のカップルや
潰れそうになりながら耐えている若者の集団が点在する。

今の僕は空っぽだ。
ぼくの全ては恋愛に費やされていたから、
それが終わった
今の僕はからっぽだ。

であったらそんな今こそ最初の一歩を踏み出さなければならない。




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2005年05月15日(日) 1時間04分58秒の決意


 そろそろかなあと思っていたけれど今日
 彼からの電話があった。
 電話はメールと違い記録として残らないため、時間とともに記憶が色褪せ少し淋しい。
 まあ、とにかく彼から電話があった。
 僕の日記を読んで電話をしたみたいだから、
 「予想通り」とかっていう感じでは無さそうだけど。
 ちなみに僕の日記を読んでボコボコにけなされてると凹んだらしい。
 こんなにも愛情に溢れた叩き方をしてたのになあと電話の前でひとりで笑った。

 結局彼にはどうしても「譲れないもの」があり、
 それを「譲って欲しい」と願っていた自分とはどうすることもできなかったのだろう。
 僕が譲らなければ彼も譲らず、
 僕が譲っても彼が譲らないのであれば意味が無かった。
 僕が譲れるものは「僕の将来」。
 もし彼と一生一緒にいられるのだという保証があるならば
 僕は躊躇うことなく彼に一生ついて行った。
 彼の譲れないものは「彼の家族」。
 僕はその一員になりたかった。
 東京に就職することなど即座に取りやめ大阪で一生を終えても良かった。当然のように。
 しかし実際そのような保証は成立しなかった。
 彼は責任を負えないと言ったのだ。
 それは少し我侭だと思いますよ、お兄さん。(←私信。この日記読んでまたボコボコにされれ。笑)
 であるならば僕は可能性のある未来に向かって生きるしか無かったのだと思う。

 お互い言葉に出して言わなければ通じ合わないことはある。
 言葉に出したがためにすれ違ってしまうこともある。
 それでも僕はいつでもいくらでも君と「対話」したかったんだよ。

 お互い理解しているようでしてなかったこと。
 理解していないようでやっぱり理解していたこと。

 「本当の僕」は僕自身が考える僕のみにあらず彼からみた僕でもあり
 その数はひとの数だけ存在するんだろうなあと思う。
 僕は彼の「ほんとう」を僕のなかに見出していた。
 それは彼からすればうそっぱちなのかもしれない。
 けど僕にとってはそれが彼だった。
 僕は僕の中にいる彼以外の彼を知らない。
 そしてその彼を好きになった。
 時間を共有することでより一層彼を知り
 その時間の分だけ彼から遠ざかったのかもしれない。

 ありきたりで当たり前かもしれないけれど、
 今日の「対話」の中でとてもよく理解したことがひとつ。

 “彼にとって僕は元彼であり友達である。”

 話せば話すほど
 あー 自分はもう 「そういう意味」では過去のひとなんだなあ と 感じた。

 ずっと
 
 待っていたのかもしれない。
 踏ん切りを付ける機会を。
 彼と別れてから一ヶ月が過ぎようとしているけれど
 ただひとりで悶々としていた。
 




 電話を切れば画面では1時間04分58秒という数字が自己主張していた。
 
 さーて、次の恋人を探しますかあ。




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2005年05月13日(金) 存在意義

   ついさっき、私は男に欲されることにのみ、存在する意味を見出せると書いた。
   だとすると、私は転落したのではなくて、この世に生きている意味を、もっともっと求めるようになったのだろう。
                                                      (桐野夏生『グロテスク』より)

 似ている。けれど少し違う。
 突き詰めて行けば、おそらく自分も「欲されること」が己の存在意義であるのだろうと思われる。
 しかし自分は更に条件を付ける。「欲したい」と感じた相手に「欲されること」というのが正しいだろう。
 「欲された」相手を「欲したい」と思えればそれでもよい。順序など無関係だ。
 生まれついての娼婦であると自称する小説内の登場人物よりも自分は貪欲なのだろう。
 己は独りでも生きて行くことは出来るけれど、「生を実感すること」はできないのだ。

 己の努力は全てが目標へと至る「可能性」のためであるのだと感じた。
 欲する相手に欲されるという目標。
 欲する相手に欲されるための努力。

 地位も名誉も名声も
 財力も権力も若さも時間も
 自由も

 上に挙げたものは全て外観的な要素に過ぎない。
 けど人間は外見に左右されるものだ。(特にゲイは酷い。)
 であれば外観的要素を磨くべきであることは容易に理解に足る。
 全ては「可能性」へと結びつく。
 全ては自分が存在する意義のために。  
 

   客が若い娼婦を買いたがるのって、肉体の魅力じゃないのよ。
   若いということは未来があるから、男たちは若い娼婦が持っている時間を買うんだと思うわ。
                                                      (同上)




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2005年05月11日(水) 素晴らしい世界

 先週の金曜のことから書こう。
 確か夜の八時から朝の六時までゲイバーでのバイトに入る予定であった。
 これまでは八時から十二時であったので一気に六時間も延長することになる。
 九時からで良いとのメールが来たため少しラクになると安心。
 結局客が四時半に途切れそこで終わった。
 七時間半労働。
 当初の予定より二時間半も短縮されたことになる。
 にも関わらず、とんでもなく厳しく感じた。
 お客さんはいつもよりもずっと話しやすいひとばかりで環境は申し分無かった。
 七時間半立ち続けることに関しての疲労感はあまり無かった。
 笑われるかもしれないけれど、酷い眠気と、
 眠気による酔いやすさが重なり大変な苦行であるかのように感じられた。
 当然ながら酒の量もいつもより遥かに多く、
 多量のアルコールが肝臓へと染み渡るのを感じた。
 
 朝飯をマスターに奢って戴いた。
 とても美味しく、
 けれど食欲はほとんどなく、
 それでも残してはあまりに申し訳ないと何とか食べきった。

 六時半頃、帰宅しそのまま布団に倒れ込む。
 
 十時丁度、激しい頭痛で目が覚める。
 おそらく二日酔い。肝臓が痛んだ。
 良く分からないけれど、僕は痛みに敏感な方だと思う。
 身体の中のどこが痛いのか、どういう風に痛みが進行しているのかが感覚的によく分かる。
 それを上手に表現する語彙能力が無いのが恨めしいけれど。

 驚くべきことに昼過ぎにはすっかりおさまった。
 気分転換のため自転車に乗って目的も無くふらついた。
 ツツジの花が満開であり綺麗だった。
 とても暖かく、半袖から晒しだされた腕がぽかぽかと包み込まれた。
 すこしチクチクした。
 最近周囲に気を配ることがめっきり無くなっていた。
 目を凝らさずとも
 少しでも注意を払えば何かを発見できることがあるのだと思い出した。

 僕はとても視野が狭くなっていたかもしれない。
 たこ焼きを買って帰った。おいしかった。

 コミック「素晴らしい世界」全二巻(浅野いにお)を購入、読了。
 おもしろかった。
 CD「quake and brook」(the band apart)を購入、現在ヘビーローテーション。
 すごかった。

 おいしかった、おもしろかった、すごかった。
 言葉にすると平凡で単調な想いかもしれないけれど、どれも「本気」で思った。

 GW明けに飯を食おうと言っていた彼からのメールは無い。
 当分無いだろうと予想していただけに
 あまりに予想通りで愉快だ。
 昔から僕は彼のことに関しては誰よりも何よりも予感が的中する。
 僕は彼のことが大好きだったから彼について何でも分かった。
 彼のことが何でも分かったから僕は彼のことが大好きだったし、
 だから僕はいつでも必死だった。
 彼が僕を見限るのも容易に予想できた。

 彼が甘い言葉を発するたびに僕は喜びと
 同時に焦りと失望を感じていた。
 彼の甘い言葉が妄言であるのだとはっきり確信していれば
 焦りも失望もしないはずであるけれど
 やはり信じていたのだと思う。
 彼は悪気などなく思いつきで全ての「ことば」を僕へ伝えたのだろう。
 こうなればいいと思ったことを言うだけ言ったのだろう。

 
 おいしい御飯を食べて
 友達と会話して
 朝まですこし寂しくひとりで過ごす日々。

 あさってのバイトに備えて胃薬でも買いに行ってこよう。




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2005年05月04日(水) 遥か彼方 ��


 五月二日

 大阪へ帰る。
 眠る。
 空虚感 喪失感に苛まされる。
 孤独。
 たった数日でこの変わりようは何なんだろうか。
 不思議でならない。

 無を過ごせば無に慣れる。
 有を過ごした後にそれを失くし無になれば
 また有を望むのだろう。

 恋愛依存の中毒症だろうか。
 しんどい。




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2005年05月03日(火) 遥か彼方 ��


 五月一日
 
 従兄弟の結婚式に出席する。
 姉の結婚式は略式(?)で親族のみの小さな式であったため、
 正式なものに出席するのは初めてだった。
 参加者全員に祝福される二人はしあわせそうに見え、(実際しあわせなのだろう、)
 とても羨ましくなった。
 振られたばかりの人間には少し痛かったけど。
 
 一種の契約関係を結ぶことで恋愛関係が破綻しにくくなるならば、
 それは有意義であるようにも思う。
 今現在日本の同性間ではそのような法律が制定されていないので少し不満はあるものの、
 だからといってそれに頼るのはおこがましくも思う。

 ただのひがみと妬みだ。




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2005年05月02日(月) 遥か彼方 ��


 四月三十日
 
 七時四十分大阪発の便に乗る。
 夜に飛行機に乗るのは初めてだった。
 真っ暗な空へ飛び立ち闇を切り拓き進む飛行機はちょっとだけ格好イイと思った。
 八時五十分鹿児島着。
 直線距離で凡そ千キロメートルの道のりも
 わずか一時間と少しで行き交うことができる。
 物理的な距離などよりも
 精神的な距離のほうがよほど重要なのではないだろうか。




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2005年05月01日(日) 遥か彼方 ��


 四月二十八日

 かえる。
 数時間をかけ大阪へ戻る。
 読書に耽る間に空は暗くなり外は寒くなる。
 
 人のセックスを笑うな(山崎ナオコーラ)
 カラマーゾフの兄弟<上>(ドストエフスキー)

 を読む。(後者の途中で到着。)

 梅田に着きヨドバシカメラの前で待ち合わせ。
 三人で飯を食うことになる。楽しい。
 彼の大阪発の時間まで三十分ほどしか無く急ぐ。
 三人でもっと居られなかったのが少し残念だ。
 松坂牛特上カルビ。
 こんなうまい肉食ったのは生まれて初めてだった。

 九時二十分発の便なのに
 店を出たのは九時十五分。
 大焦りで走る走る。
 これ程ダッシュするのは年に一度くらいだろう。
 何とか間に合い胸を撫で下ろしつつ見送る。

 また会いましょう。

 銀行へ行き預金を下ろし、さて飲み直し。
 ビールをたらふく飲みつつ喋る喋る。
 何の話でも隔てなく語る。
 彼の友達は皆すばらしいひとだ。

 散々腹を膨らませ、帰路につく。
 一日をとにかく長く思った。
 今朝四時半頃に目を覚ましたこと、
 高野山を巡ったことが随分昔のように思われた。
 そして別れた彼との出来事が遥か彼方のことに思われた。

 四月二十九日
 
 昼前までぐっすり眠り、元気になる。
 教習所にて卒業検定を受ける。
 とりあえず一発合格。
 車の運転など機械を操ることに関しては全て苦手であるのだけれど
 何とか全日程を滞りなく済ますことができた。ほっとした。

 ゲイバーにてバイト。
 部活を辞めてから初めてのバイトである。
 これまで翌日の朝六時半から朝練がある兼ね合いで
 十二時で上がらせて戴き終電で帰っていた。
 それもなくなったため、「来週から朝まで入れるか」と打診を受ける。
 「お願いします」と返事する。
 これでこれまでの四時間から
 変わって十時間立ち続けることになる。
 更に倍以上の酒が体に入ることになる。
 体力的な不安は僅かにあるものの、とりあえずやってみよう。
 
 帰りしな別れた彼からメールが入っていることに気付く。
 バイトに対する労いの言葉と
 GWがあけたら飯でも食おうという誘いのメールであった。
 
 きわめて気持ちが上向きだったので
 健やかな心持で遥か彼方に居るかのように思われる彼へ返信し
 帰宅して眠った。




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いつも投票ありがとうございました。(12/15)

加持 啓介 | MAIL |

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