2003年08月05日(火) |
娘と二人、祭りに出かける。闇夜に浮かぶ幾つもの提灯の波間で、ふと思った。去年はそう、二人じゃなかった。 なのに何故だろう。今ここにこうして二人であることが、あまり不思議ではない。かつて三人であったことが何の不思議もないように。 一つのイメージが浮かぶ。それは、育てている薔薇の樹の一本に重なる。枝を伸ばし、葉を広げ、花を咲かせる、一本の薔薇の樹。そして、その樹はある時、根元からちょきんと切り落とされた。 でも。根っこは。根っこは土の中、まだ生きており。しっかりと呼吸しており。 次に伸ばすべき芽へのエネルギーを、今、黙々と貯め込んでいるのだ、その根っこに。 私はやがて、また芽を出すだろう。それはまた、幾つもの時間をかけて、そうして大きく茂るだろう。いつかまた花を咲かせることだってあるかもしれない。 その姿は、営みは、かつてそうであった姿とそっくりかもしれない。いやきっと、そっくりだ。 けれど。 そこにかつてと同じものは一つとしてなく。 そうして、私は、私という根っこをもって、何度でも営むのだ、私の毎日を。外から見たらもう枯れたか果てたかというような時を何度でもかいくぐりながら。生きている限り。
そろそろ帰ろうか、と、遊びまわる娘に声をかける。結んだ手と手を軽く振りながら私たちは歩き出す。祭りの灯りが少しずつ、後ろへ流れてゆく。その灯りはでも、私の目の奥にぼんやりと残り。 何とはなしに見上げた夜空に、今、細い月が浮かんでいる。 |
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