見つめる日々

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2004年05月23日(日) 
 樹にも年齢がある。年輪というものがそれを示している。
 でも、その年輪よりももっと、樹の年齢を教えてくれるものがある。それは。
 樹にそっとよりかかり、腕を回したそのとき。樹から伝わって来るエネルギーの色だ。
 若い樹は、自分が背を伸ばそうと必死になっているから、こちらに伝わるエネルギーよりも、自分に或いは天に向かおうとするエネルギーがとてもつよい。それは燃えるような緑色をしていて、私をも貫いて伸びてゆこうとする。だから下手をすると、幹にまわした腕が火傷する。
 一方、老樹になると、これはもう、ゆったりとゆったりと、漂うようにそこに在る。幹にまわした腕に伝わって来るのは、だから、じわじわとしたぬくもりでありやわらかさであり、匂いなのだ。そしてそれは、決して押しつけがましくはない。幹に触れた者の望むままに、黙って力を伝えて来る。静かに静かに。それは色にたとえると何色になるのだろう、やわらかな、同時に少しくぐもった緑。決して灰色ではない。おだやかなおだやかな、やわらかい緑。

 誰かを抱きしめて、火傷しそうだった年頃は、さすがに私も通り過ぎた。もうそろそろ、自分の為にだけでなく、誰かへと、伝えてゆく時期なのかもしれない。相手を火傷させたりせずに、じんわりとあたためてやれる、そんな力のバランスを。覚えてもいい年頃なのかもしれない。

 それにしても、樹よ、貴方に教えられることのなんと多いことか。貴方はただそこにそうして在るだけなのに。

 今、ツバメが空を切った。


遠藤みちる HOMEMAIL

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