見つめる日々

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2005年06月07日(火) 
 朝早く目が覚める。こんな時間から一体何をしようかと思い、あれこれ考え浮かべてみる。でも、どれもこれもしっくり来ない。結局、仕事場に一時間半以上早く出掛けることにする。
 やり始めれば、作業は簡単。ベルトコンベア式に次々こなしてゆけばいい。そうしているうちに、唐突に大型プリンターが故障。私はそれを理由に残りの仕事は家で為すことに切り替え、仕事場を後にする。
 それにしても、なんて眩しい光。ベランダにかけた布団が気持ち良さそうに欠伸をしている。ふと横を見て私は慌てる。水遣りをすっかり怠っていたせいで、薔薇の樹がぐったりしているじゃぁないか。急いで如雨露に水を汲み水遣り。ベランダと水場を何往復。今日は夕方も水をやろうか、一瞬そう思わせるくらいに光が眩しく辺りに熱がこもっている。でも、爽やかな風が吹いてくると途端に、全身心地よい温度に包まれる。五月、六月は、光と風が魔法を放っているんじゃなかろうか、と、そんなことを考える。
 ベランダのプランターをひとつひとつ見て回る。サンダーソニアがもう蕾をつけはじめた。ミヤマホタルカヅラは二度目の蕾があちこちから顔を出している。一方、今年は薔薇が不調だ。樹みんな、だいぶ弱っている。水遣りの頻度が足りなかったせいなのか、それとも先月うどんこ病で悩まされた折に撒きすぎた農薬のせいなのか。病葉を見つけるたびそれを摘んでゴミ袋に入れてゆく。あっという間に袋がいっぱいになる。私は小さく溜息をつく。
 でも、部屋に入れば景色は一変する。今、この部屋には、家にあるだけの花瓶を用いても納まらずコップまで使って、山ほどの花を飾っている。先日の誕生日に贈っていただいた花たちだ。白い花、赤い花、ピンクの花、黄色い花。数え出すとキリがない。この花たちのおかげで、今、私がどれほど心を和ませてもらっていることか。右を向けば花、左を向けば花、後ろを振り向いてもまた花、もう一度振り返ればまたそこにも花。どこもかしこも花。こんな嬉しいことはない。もしここに娘がいたら、「ママ、みうはお姫様になった気分」なんてうっとりした表情で言うに違いない。娘の顔が花々のまにまに浮かぶ。にっこり笑ったあの笑顔。早くあの笑顔を手元に取り戻したい。取り戻したその時には、娘がいやがって逃げ出すほどぎゅうぎゅうハグをしよう、ちゅーもしよう、それから・・・。娘のことになると、もうきりがない。自分でも呆れ、気づけば苦笑を漏らしている。
 誕生日おめでとう。友人が私にそう言ってくれる。誕生日おめでとう、来年の誕生日も再来年の誕生日も、きっと必ず迎えるんだよ、と友人らが私に言ってくれる。あぁそうだ、来年も再来年も。私はきっと歳を重ねてみせる。きっと。心の中で強く、私はそう誓う。
 少し日差しが陰ってきた。天気予報ではもう台風が現れているという。傾いてきた日差しのせいで、風もまた一段、冷たくなる。でもそれは、寒いというものではなく、涼やかで心地よい温度。私は思わず窓際に腰掛けて、目を閉じ顔を空に向けながらじっとしてみる。あぁ、風がやさしい。


遠藤みちる HOMEMAIL

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