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―― 連ねた意味も、持てない小鳥。
氷室火 生来
回帰

2008年10月09日(木)
最期には手を離すから。


昔、親の財布からお金を盗んだ事がある。
それを、交換日記か何かで誰かに言った事がある。
その事が、問題視され当時の担任に伝えられ呼び出しを喰らった事がある。

窃盗は、罪である。万引きでは軽い印象を与えてしまう為窃盗と直そうと動きが高まるように、罪である。
罪を、打ち明けたのは。懺悔でも悔悟でもない。況して秘密の共有なんて即席の絆を作りたかったのでも。
道徳として、叱られたのは。当たり前だろうなと思いながら、聞き入れる気なんて大してなかった。

高みから正しさを説ける存在っていいよな。あんたは一度も間違った事が無いのかなんて楯突かないよ。
ただ、反発でも好奇心でもやむを得ない理由でも、行なうだけの事情があるなんて、そんなのは罪の前では建前にすらならないと、頭ごなしに対して真意を伝える気になんてならなかった。

他に提供する話題の無い日々に、己で正当化するだけの理由があると罪を暴露しても、きっと冗談で誤魔化されるのだろうと思い違いをしていた。
真摯に受け止めるような、そんな人間が自分なんかと付き合いがあるなんて、有り得ないだろうって。

あったらあるだけ、必要経費もろくに考えず全てをギャンブルに持ち寄ってしまう歯止めの利かなさにおいて、学用品調達はおろか生活費を得る為に、与えられるのではなく奪うのは短絡的だけれど、それしか糧がないのなら、与えて然るべき存在がその役目を行なわないのなら、此方からアクションを起こすのは、必然とは呼べないだろうか。いいや、ただの言い逃れだ。

本当に、人は間違いばかり起こすし、過ちを正当化しようとするし、口ではなんとでも言いながら何を考えているかなんてわからないし、そして中々くせなんて、抜けないもんだ。
正義や道理を通す為なら死んじまえって、そういう事だろう? 生きる為に堕ちるのは如何にも駄目フラグ。

嗚呼本当に、どうしてくれようか。自滅覚悟で身を滅ぼすなら、勝手に単身でやってくれよ。
どうせ誰かが助けてくれるなんて、甘い考えで寄ってこないでくれよ。
今当時と同じ場所に立たされて、再び奪取するのかと問われたら、そのまま餓死するまでノーリアクションでいてやると自信満々に答える。でもそれは正義でも道理でもない、やっぱり、反発に似ている。

そうして勝手に生きていけると、教えちゃいけなかったんだ。
そうしてどっかでストップがかかると、情けをかけちゃいけなかったんだ。
伴う代償を示したって、変わらない奴は、変わらないんだろうけれど。


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