こしおれ文々(吉田ぶんしょう)
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2004年08月12日(木) |
サイエンス・フィクション【春子(ハルコ)】 第4話 鏡 |
第4話 鏡
【春子】という行為をする人間というのは、 やっぱり普通とはズレた道を歩いていることが多く、 多かれ少なかれ、その代償があとあと降りかかるもの。
春子が終わって見えてくる運命は、 呆れてしまうくらい情けないものばかり。
このオヤジならしょうがないと思えば、 春子がバレて捕まることも、 会社をクビになるってことでも 教えるつもりはなかった。
生理的に受け付けない人間が この先不幸になろうとも、 ハッキリ言ってどうでもいい
ただ、春子のような商売? そういう行為はほとんどが、 初対面で、そしてもう二度と会わない人と行われる。
そんな薄っぺらい関係でも、気のあった人、 好感触をもってしまう人もいたりする。
そんな人たちの運命を知るのは 自分の中では楽しみの一つであり、 悲しい運命を背負う人には同情してしまう。
だから、その悲しみを少しでも減らせるように アドバイスをしてしまう。
結局は、噂は広まってしまった。 【運命が見える売春婦】 そんなセンスのない名前を付けられ、 客の数は増えていった。
ただし、その目的で買いに来る人間は、 なるべくなら避けたかった。
悪い運命を告げれば、 気に入らないと暴力を振るう人間もいるからだ。
その悪い運命が的中したら、 それはそれで私を逆恨みする人間もいる。
まあ、断れば断ったで、 下等生物の私たちが客を選ぶなんて 気に入らないらしく、結局は暴力を振るわれた。
中には、なにがなんでも運命を知りたいと、 レイプをしてくる人間もいる。
どうせそういうオヤジ達は寝なくたって、 ろくでもない運命を辿ることは目に見えているけど。
運命は、 隔世遺伝のように突然訪れるものではない。
不慮の事故ではしょうがないけど、 だいたいは、自分の普段の生活が 巡り巡って結果に繋がる。
私たちを 自分の欲望のはけ口として、 下等生物としてしか見てない人間が、 まっとうな運命を辿れるわけがない。
人をねたみ、 憎み、 蔑んできた人間は、 それと同様に 自分も憎まれ、 恨みを買い、 いつしか【運命】として訪れる。
【運命】は自分を映し出す鏡のようなものだから。
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