こしおれ文々(吉田ぶんしょう)
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| 2004年08月21日(土) |
サイエンス・フィクション【春子(ハルコ)】 第13話 【運命】の開示�� |
第13話 【運命】の開示��
私が見た彼の【運命】は、 中年の男性とのやりとりからはじまった。
中年の男性が、 何かを指示し、 小さな紙袋を手渡した。
その瞬間、彼の表情がこわばる。
情景は変わる。
あの黒塗りの車の中、 いつもの送り迎えをしているのだろう。
私は、彼に笑顔で話しかけている。 でも、彼がいつもと雰囲気が違うのがわかる。
いつも以上に悲しい顔で、 いつも以上に優しくしてくれる。
車は、いつもと違う道を進んだ。
しばらくして、彼は車を止める。
そこはどこかの山の中。 見下ろすと、きれいな夜景が広がっている。
私はその夜景に見とれている・・・フリをしている。
彼は、黒い革の手袋をはめ、 あの紙袋から何かを取り出した。
彼は私の名前を呼んだ。 初めて名前を呼んでくれた。
振り返ると 彼が拳銃を握り、 銃口を私に向けている。
そして、 【一言】だけつぶやくと、
彼は引き金を引いた・・・。
撃った瞬間、 彼はあの優しい笑顔を浮かべていた。
私が好きな、あの優しい笑顔。
これが、彼の【運命】であり、 同時に私の【運命】だった。
変えることが出来ない【運命】
愛する人に殺される【運命】
それは私にとって悲しくないし、つらくもなかった。
私のような人間なら、 いつ殺されてもおかしくない。
誰の役に立つ訳じゃないし、 生きている価値なんて、さほどあるとは思えない。
だからこそ、 どこの誰かわからないような人ではなく、 彼自身の手で殺されるこの【運命】は、 私にとってどれだけ幸せなことだろう。
それでも・・・、
それでも、 愛する人を【人殺し】になんてできない。
たとえ、 【運命】を変えることができないとしても・・・。
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