こしおれ文々(吉田ぶんしょう)
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2005年07月13日(水) |
虚構【燃やしたいゴミ】ケース3ー1 指定病院(シテイビョウイン) |
吉田虚構【燃やしたいゴミ】
ケース3−1 指定病院(シテイビョウイン)
ある男性が、 望燃性廃棄物処分センターを訪れた。
男性は申請書に必要事項を記入すると 受付に渡し、【燃やしたいモノ】について 説明した。
すると受付の女性は言った。
『そのようなケースの場合、 【行為消却の証明書】と 【火傷の跡を無くすための整形手術】が 妥当だと思われます。 もちろん当センターで整形手術は行っておりませんので、 センターが指定している病院で手術を受けて下さい。 特殊なケースなため、他の望燃物と比べると 高額にはなりますが、 国からの補助が出ますので、 概算で60万円程度となりますがよろしいですか?』
男性は了承し、 病院への案内図を受け取ると、センターを後にした。
数日後、男性の整形手術は無事成功した。
麻酔から目覚めた男性に 手術を担当した医師は言った。
『体中にあった火傷の跡は ご要望どおり一カ所を除いて全て無くしました。』
一呼吸おき、 医師は気まずそうに言った。 『あの・・・、 立ち入ったことをお聞きしますが、 あの無数の火傷は、 たばこを押しつけてできたものですよね 決して事故ではなく、人為的にできた火傷。
つまり【虐待】・・・ですよね
処理センターに行き、証明書をもらえば 虐待の過去をなかったことにできる。
でもその前に、誰がこんなひどいことをしたのか 私に話してもらえませんか?
紙切れ一枚で過去を消したところで あなたの心の傷まで癒せるとは到底思えない。』
医師の話をうつむいて聞いていた男性は顔を上げた。
見逃してしまいそうなくらい小さく微笑むと 男性は窓の外を眺めた。
ケース3 〜つづく〜
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