ふつうっぽい日記
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2012年05月26日(土) 「先生が笑った」

「先生が笑った」
と、A君が言った。

今、分かるA君の気持ち。

わたしはその言葉を聞いて、
「突然、何かが飛んできて、驚いたんだもん」
などと、その時の状況を理由の説明をした。

A君にとっては、別にそういう理由はどうでもいい。

「先生が笑った」と言った時、A君はそういえば嬉しそうだった。

A君との関わりのきっかけの記憶を想起。
わたしはA君のことをよく知らないのに、何かの指示を出して、行動に移さないA君を少し怒りの表情で見つめていた。

知らないくせに関わった、わたしよ。
関わられて、A君は驚いたよね。

謝りたくなった。
責めたくなった。
でも、そうしなくてもいいということに気付かされた。

A君はわたしの笑顔を試すアプローチをしてきた。
こちら側(わたし)が何も考えられなかったのにも関わらず。

おそらくは、A君はわたしの姿を見ると、「あの先生に怒られた」という記憶が呼び起こされたことだろう。
「あの先生は他のお友達にはあんなに優しいのに。笑顔なのに。ボクには笑ってくれないのかなぁ」

チャンス到来。
A君はわたしに何かを投げてみた。
それは小さな小さな鉛筆のキャップみたいなものだった。
状況によっては、
「何を投げたんですか?!驚くでしょう!?目に入ったら危ないでしょう?!」なんて質問形式で怒られたかもしれなかった。

その時のわたしは、なんと、驚いたのにも関わらず、どういうわけが「笑って」いたのだ。
そして、A君は「先生が笑った」とつぶやけたのだ。

わたしはその言葉を聞いて、「ボクの行動を笑った嫌な先生」という感情を持ったのではないか?と、少々不安になった。
またしても、「笑っちゃってゴメンね。」と謝りたくなったし、責めたい気持ちが湧き上がった。

しかし、数分であるが、A君の行動や表情を見る限り、なんだか嬉しそうだったのだ。
もしも、怒りや憤りに支配されたのだとしたら、別の手段で攻撃を試みたであろう。
わたしにはA君がなんだか楽しそうに嬉しそうに廊下や教室を走り回っているように映ったのだ。
そして、関心深く、目線を合わせることを楽しんでいるようにも映ったのだ。

A君は特別に支援を必要とする対象としての、任務としての関わりは指示されてはいないが、何やかんやとザワザワとする体制でありながらも、こういう小さな人間関係において、点と点で結ぶことができたことが、わたしの中では、少し広いところに出てこられた気持ちにさせてくれた気がする。

任期あと残すところ2週間。
出来ることは限られている。
小さな人間関係を見つめながら、エネルギー配分していきたい。


KAZU |MAIL