水野の図書室
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2001年12月03日(月) 鈴木光司著『抱擁 』

抱きかかえる、という意味ですね・・抱擁。照れますぅ〜
大正・昭和の初めの頃の小説みたいなタイトルですが、これも鈴木光司さんの
作品です。短編集『生と死の幻想』の五つ目の物語。

この物語は、う〜ん、照れますぅーー。
どういうふうに紹介したら良いのか、えぇ〜っと、ちょっと、困ってますぅ〜

昨日読んだ『闇の向こう』は、ミステリー&ハードボイルド風だったのですが
この『抱擁』は、まったく逆です。
登場人物は、男と女です。抱擁ですから・・照れ照れ

離婚したばかりの理英子は、1歳になった娘と二人暮しです。
仕事を通じて五日前に知り合ったばかりの藤村が理英子の家を訪ねてくる
ところから物語は始まります。
理英子の家は清水市。藤村は雨の夜、東京から高速を飛ばしてやってきます。

土曜の夜九時、電話をかけてきた藤村。
「ぼくが今、どこにいるかわかりますか?」← 近所まで来たと言いたいらしい
「雨が降っているのね」← わたしはいつも冷静よと言いたいらしい

結局、理英子は家までの道順を教えて電話を切ると、薄く化粧をし直したり
するんです。突然やって来たわりには、藤村はプレゼントを忘れません。

「理英子は、今晩のことは成り行きに任せようと決めていた」って、これ、
ちょっと、いいのだろうか・・
藤村には奥さまがいるではありませんかっ!!
理英子の娘は耳が不自由で、藤村の2歳の息子は先天性の心臓病で、と
境遇が似ているところでふたりの仲は急速に接近します。

そして、ふたりは夜が明けるまでいろいろ話し込み・・
その四日後、思いがけないことが・・

これって・・不倫、なんですが、不倫小説(ってどんな小説かよくわかりま
せんが)にならないところが、鈴木光司流なのでしょうか・・
不思議な読後感です。

鈴木光司著『生と死の幻想』(幻冬舎文庫)収録の『抱擁』は33ページ。
鈴木光司さんの文学的鉱脈の幅広さを感じた10分。
急に訪ねてこられたら、困ります・・それも雨の土曜の夜に・・











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