水野の図書室
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2001年12月05日(水) スティーヴン・キング著『スタンド・バイ・ミー』

乙一さんが「現代日本ホラー小説界の若き俊英」として注目されているのなら、
「アメリカ・モダンホラーの旗手」として次々にベストセラーを生み、
映画化された作品も多いのがスティーヴン・キングです。

多くの作品から選んだのは『スタンド・バイ・ミー』。
映画は観ていないのですが、小説を読んだら、映画の方も観たくなりました。

「なににもまして重要だということは、なににもまして口に出して言いにくい
ものだ・・なににもまして重要だというものごとは、胸の中に秘密が
埋もれている・・」
34歳になった人気作家のゴードンが、20年前の帰ってはこない少年時代の日々
を回想して語り始めます。

1959年、アメリカ・オレゴン州の小さな田舎町。
文学少年、ゴーディをはじめとする12歳の仲良し4人組は、ラジオニュースで
知った行方不明の少年が列車に轢かれて死んでいるのではと考え、死体を
探しに出かけます。

クリスの「おれたちが死体を見つけて知らせるのさ!ニュースにでるぜぇ!」
って、一躍ヒーローになりたい年頃なんですねー探し物の冒険なら、死体
じゃなくて他のものにしてほしかったですけど、「海賊の宝」はムリか・・笑

家族には何て言うのかと切り出すテディ、キャンプを装うため自宅の裏庭に
テントを張るバーン。4人がそれぞれ生き生きと描かれています。

不安と興奮を胸に4人は目指す鉄道の線路へ。
線路を歩いているときに汽車が来たり、川でヒルに襲われたりしながら、彼らは
友情を育んでいきます。明るく元気な彼らにも悩みがあり、打ち明けあって
お互いになぐさめあうところはじーんときました。

たった2日間のこの冒険が彼らの心に忘れられない思い出を残すことに。
探していたものは・・・・

スティーヴン・キングの自伝的小説のようでもあります。
ゴーディの文学少年ぶりは随所に。好きな作家の新作が入荷したかどうか
2日おきに店に確かめに行くあたり、感心します。

そして、ゴーディの良き理解者、クリスの言葉は胸を熱くしました。
「いつか きっと、りっぱな作家になれるよ」とゴーディを励ますクリス。
「おまえが会うやつらは、おまえの作品をわかってくれる」
「おまえが聞かせてくれた話は、おまえ以外の人じゃおもしろくないんだよ」
「あんな作品をいっぱい作れるなにかを与えてくれた神さま・・」
「子どもってのは、誰かが見守っててやらないと、なんでも失ってしまうもん
 だし、おまえんちの両親が無関心すぎて見守っててやれないってのなら、
 たぶん、おれがそうすべきなんだろうな」
・・す、すごすぎ!クリス!これで、12歳・・

その後、バーン、テディ、クリスの人生は・・

「少年時代」という歌がありました。井上陽水さんの。
あの歌を聴くと、なんだかせつなくなります。
胡弓奏者のヤン・シンシンさんの「少年時代」も胸に染み渡る曲です。
ヤンさんは演奏会でこの曲を演奏する前に、「ある会に招待された時、先に
ステージで歌っていた合唱団の少年の歌声に、自分の少年時代を思い出し、
涙ぐんだ中で浮んだメロディです」とお話してくださいました。

スティーヴン・キング著『スタンド・バイ・ミー』(新潮文庫・山田順子訳)
は、287ページ。子どもの頃の冒険をふっと思い出させてくれた100分。
原題は『The Body』・・素敵な邦題がついて良かったですね〜
名曲『スタンド・バイ・ミー』同様、小説も名作です。

15ページにわたる「はじめに」には、キングがホラー作家としてのレッテルを
はられることについて、編集者とのやりとりが興味深く綴られています。
当時のアメリカは、ホラー小説だけを書く作家は生活が苦しかったようです。
編集者は、キングに言います。「きみは絶対に成功すると思うよ」
小説を読み終えてから、もう一度、「はじめに」を読んでみて下さい。
 涙がこぼれました・・



スティーヴン・キングは、りゅうごさんに教えていただきました。
りゅうごさん、ありがとうございました。













水野はるか |MAIL
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