水野の図書室
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皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。
2001年12月08日(土) |
宮部みゆき著『過去のない手帳』 |
忘年会シーズンですね〜お酒に酔うのは、ほどほどにしてくださいね〜☆ 家に帰る途中で、大切なものを忘れてきたりしたら大変ですよ。
12月の寒い日、乗ったタクシーにお財布の忘れ物を見つけたことがありました。 あの時は、驚きましたーパッツンパッツンに張り裂けそうなほど膨らんだ黒革の 大きなお財布でしたから!!ぅ、ぅ、う、運転手さぁぁんん、と、うわずった声 で、わ、わ、わ、忘れ物ですぅぅぅと、そのお財布を運転手さんに。 なぜか、指紋を付けない様に気をつけて両手で挟んで渡しました。 「運転手さーん、ちゃんと届けてくれましたよねぇ〜」笑
そんなことを思い出したのは、今日読んだ物語が、忘れ物を拾ったことから 始まるミステリーなのです。 宮部みゆき著『過去のない手帳』、これも、宮部ファンでなくても楽しめます。
和也は大学一年生。いわゆる「五月病」で、大学へ行けません。家族に気づかれ ないように、朝は家を出てアルバイトに行っています。ある日、電車の網棚の 上に誰かが置いていったと思われる雑誌を見つけ、つかんで下ろしかけたとき、 雑誌に青い手帳がはさまれていたのを見つけます。手帳には何も書いてないのに アドレス帳にひとりだけ女性の名前と住所が書かれていました。
そこで、タイトルが『過去のない手帳』となったのでしょうか。 ひとりだけ名前が書いてあると、気になりますね〜
和也は手帳を家に持って帰るのですが、一週間後にその名前を新聞記事の中で 見つけることになるのです。 その女性の住むマンションで放火事件があったとき、彼女の所在がわからなく なっていたのです。彼女の失跡に興味を持った和也は・・・
何も書いてない手帳から想像する持ち主像には、どこか寂寥感が漂います。 会ったこともない手帳の持ち主を探そうとする和也は一生懸命で、大学へ 行くことができない後ろめたさと自分への嫌悪感を払拭しようとしているかの ようでした。
過去のない手帳の持ち主と「五月病」の大学生・・ ふたりとも身近にいそうです。
宮部みゆき著『人質カノン』(文春文庫)に収録の『過去のない手帳』は 46ページ。自分だったら・・と考えた13分。 あなたは、独りで生きられるかどうか試そうと思ったことはありますか?
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