水野の図書室
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皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。


2001年12月23日(日) 乃南アサ著『悪魔の羽根』

毎日、寒いですね。クリスマスは雪になるでしょうか。
「雪月花」という言葉があるように、日本の冬の景観の大きな要素である雪は
小雪、細雪、深雪、粉雪、風花、六花など、たくさんの美しい名前を持っていま
すね。わたしは、雪が好きです。きれいで、幻想的で見ていて飽きません。

今日は、乃南アサさんの短編集『悪魔の羽根』からいよいよ表題作『悪魔の羽根』
です。美しい雪が、心を追い詰めていくものにもなる、そんな物語です。

そうそう、この文庫本にかけてある帯は衝撃的でした。
「降りこめる雪が、狂気に駆り立てる」・・そ、そんなぁ!!雪深い地方で
暮らす人はみな、精神のバランスをくずすのですかぁ〜!!?
そんなことないですよね〜 

主人公は、フィリピンから日本にやってきたマイラです。マイラは、大学で
日本語と日本の歴史を学び、日本に来ました。長崎で通訳をしている時に、
銀行員の夫、卓也と知り合い結婚。二人の子供にも恵まれ、宮崎で幸せに暮らし
ていたのですが、卓也の転勤で新潟へ引っ越します。

マイラと子供達は初めて雪を見た時は大喜びしますが、南国育ちのマイラは、
かつて経験したことのない寒さと毎日降る雪に、日に日に全てが面倒になり、
苛立ち、憂鬱になっていきます。

初めて雪を見た時は「小さな天使」と洩らしたマイラでしたが、それが
「悪魔の羽根」に見えてきたとき・・・

なんだか息苦しい話です。雪で遊ぶ夫と子供達を苦々しく思うマイラは、
かわいそうです。南国育ちには、あまりに違う環境です。ムリもないのかも。
そして、マイラの変貌ぶりは、どんどん凄みを増していきます。
この変貌ぶり、さすが、乃南作品です。帯に偽りなし、です。

乃南アサ著『悪魔の羽根』(幻冬舎文庫)表題作の『悪魔の羽根』は38ページ。
自分にとっては、なんでもないものでも、人によっては狂気の元になるのかなと
気づいた15分。

わたしが雪が好きなのは、冬生まれだからですね。たぶん・・


    












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