水野の図書室
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皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。


2002年01月05日(土) 鷺沢萠著『君はこの国を好きか』

なんて響きあうようなタイトル!
「君はこの国を好きか」なんて、2秒で言われたら、ドキドキします。

「あなたはこの国が好きですか」より「君はこの国を好きか」の方が、グッと
きます。同じことを聞いているのに。「君はこの国を好きか」には、「僕はこの国
が好きだ」が背中合わせになっています。そして、「わたしもこの国が好き」と
言って欲しい僕の想いもあわせ持っているのです。
だから、言葉は選ばなくてはいけません。

あ、だからといって、「君はこの国を好きか」と聞かれたら、・・口篭りそう。
手放しで好きとは言えないです・・日本の未来が明るいことを祈ります・・

この物語の舞台は韓国です。鷺沢萠さんは韓国との関わりでクォーターだそうで
す。ご自身の韓国留学経験を元に書かれた作品なので、留学生の生活がとてもリ
アルに描かれています。

主人公、木山雅美は日本で生まれ育ち、韓国に行ったことがなくても、国籍は
韓国の在日韓国人三世です。李雅美(イ・アミ)という韓国名を持っています。
アメリカに留学した時に韓国からの留学生、ジニーに出会い、ハングル文字に
“感電”し、韓国に留学します。

韓国人なのに韓国の文化になじめず、拒食症になりながらも韓国を知ろうと
勉強を続けるアミと、彼女を温かく見守るキム・ジョンヒ。そして友人達との
日々は・・・

在日韓国人の葛藤や苦悶について、この本を読んでわかったとは思えませんが
誰とも分かちあえないものは誰の心にもあるように思います。

アミが憔悴していくところは胸が痛みます。その分、ラストがとても清々しく
読んで良かったです。素直に。

鷺沢萠著『君はこの国を好きか』(新潮文庫)は138ページ。
アミを応援したくなった45分。

友達って、ありがたいですね・・
韓国は、かつて「近くて遠い国」でした。今は、どうでしょうか・・



水野はるか |MAIL
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