水野の図書室
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2002年01月29日(火) 浅田次郎著『かくれんぼ』

幼なじみって、どんな存在なのでしょうか。子供の頃にいっしょに遊んだ友達、
同じゲームをして、同じ漫画を読んで・・そんな単純な幼なじみしか想像できない
わたしにとって、『かくれんぼ』に登場する幼なじみの三人には、とても特別な
絆を感じました。

幼なじみの英夫、由美子、武志。三人だけがひっそりと抱える思い出は、もう
35年も前の事件。10歳の頃の事でした。近所に住む混血の少年、ジョージを
かくれんぼの途中で原っぱに置き去りにして、暮れかかった山を下りたこと。
かくれんぼの名を借りた弱い者いじめだったのです。過去の出来事に苦しむ
彼らは・・・。

短編なのですが、いろいろなストーリーがきれいに絡み合って、大きなうねり
を作っているようです。英夫と由美子の乾いた結婚生活、武志の人生に、因果
とも思えるようにあの日の夕方は、一生忘れることはできない影となってついて
いきます。

今なら、混血(なんて、言わないですよねー)だからと白い目で見られることも
ないでしょう。偏見と差別があたり前のようだった戦後まもなく、近所の子供
達と仲良く遊びたいというジョージの健気さが胸にせまりました。

浅田次郎著『かくれんぼ』は『見知らぬ妻へ』(光文社文庫)に収録。
38ページ。子供の残酷さをジョージに詫びたくなった15分。

せつないというより・・なんでしょう・・。
この物語は、・・ジョージです。ハイ。






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