水野の図書室
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皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。
2002年01月30日(水) |
浅田次郎著『うたかた』 |
古くなって取り壊しが決まっていた団地で、発見された衰弱死のおばあさん。 自殺とは言えないまでも、部屋は整理され、冷蔵庫はからっぽ、覚悟の上の 死を思わせます。おばあさんの回想は、新築の団地に移り住んだ喜び、子供たち の成長、独立、夫の死・・と、孤独を選んでいくひとりの女の人生でした・・。
物語に起伏があるわけでなく、夫婦で団地に来てからが淡々と語られていきます。 3DKで寄り添うように暮らす夫婦と子供たち。つつましくも愛情にあふれた生活 は、高度成長時代と共に姿を変えていきます。団地の敷地にある大きな桜の木は ここに移り住んだひとたちの人生そのもののように、満開の花びらは風に舞い 美しく散って・・。
浅田次郎著『うたかた』は『見知らぬ妻へ』(光文社文庫)に収録。22ページ。 せつなさより、人生のはかなさを感じた8分。 読み終えたとき、桜の匂いを含んで彷徨うあたたかい春の風が待ち遠しくなり ました。
うたかた、それは、はかなさ・・。
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