水野の図書室
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皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。


2002年02月02日(土) 浅田次郎著『金の鎖』

世の中、広いようで狭いものです。中学生の頃読んだ小説に、偶然出会って
恋に落ちた二人が、実は幼い時に両親の離婚で生き別れた兄と妹だった・・と
いうのがあって、その時は、こんなことあるわけないよぉ〜と思ったのですが、
その後、たまたま仲良くなったわたしの友人が、母の幼なじみのお嬢さんと
わかったことがあったりして、世の中には、こんな偶然もあるんだなぁ〜と
思うようになりました。

あ、前置きが長くなってしまいましたが、今日のストーリーは、そんな偶然が
もたらしてくれた秋の日の1ページです。まさか、と思うようなこと。でも、
それは、秋が深まって自ら枝から離れる色づいた葉のように目の前にくり広げ
られていきます。

夜更けのドーナツショップ。千香子が見かけたのは20年前に別れた恋人、浩之
でした。あの日のままの姿で奥のテーブルにぽつんと座っている若者は・・・。

昨日の『迷惑な死体』とガラリと雰囲気が変わっています。
浅田さん、こんなおしゃれなストーリーも書かれるんですねー。。
「値段」には、プライス、とルビが!!昨日読んだ『迷惑な死体』にも、ルビ
つきの言葉はありましたが、拳銃=チャカ、身柄引受=ガラウケ、手錠=ワッパ
でしたから、『金の鎖』のおしゃれ度が際立って、千香子をよりエレガントに
しています。

浅田次郎著『金の鎖』は『見知らぬ妻へ』(光文社文庫)に収録。30ページ。
なんともいえないせつなさの12分。
10年後にもう一度読んでみたいです。

この作品、女のひとが書いたような印象を持ちました。作品の中の千香子が
書いているような、という意味です。
浅田さん、せつなさのツボをよくご存知ですね・・。








水野はるか |MAIL
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