水野の図書室
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皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。
2002年02月09日(土) |
皆川博子著『鏡の国への招待』 |
丁重な文章です。と、いうのが第一印象。読み進んでいくと、しとしと感が ぬめぬめ感に変わって、まったりしてきました。
バレエ研究所の主宰者でバレリーナだった明子の死に、ふと疑問をもった助教の 私。疑惑の目は、明子の姉や明子の年下の夫に向けられますが・・。
この私の孤独感がせつせつと綴られて始まります。 寂しいですねー。若いときをバレエに捧げ、と言うより、主宰者の影となり働き づめで、恋をすることもなく、気がついたら明日は50歳の誕生日だなんて・・。 40代最後の夜、思い切った行動にでるものの、身体が対応できず・・・ えっと、、この辺のことは、ここでは書けないので、ぜひ読んでください。 すっごい寂しさを感じます。
そして、主人公の孤独感が後半を引き立てます。虚構でもいいから、誰かとつな がりたいという思いは、狂気をつれてくるようで憐れです。
注目したのは、「泪」「涸れる」「憐れむ」「独り」などの漢字の使い方でした。 どうしようもない寂寥感がわっと押し寄せたのは、こんな漢字にもあったのではな いでしょうか。涙、枯れる、哀れむ、一人、と比べてみてください。
皆川博子著『鏡の国への招待』は『秘密の手紙箱』(光文社文庫)に収録。 45ページ。こんなに寂しい女のひとがいるなんて・・の24分。 明子の姉も寂しさの塊りのようで、可哀相すぎますー。。
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