水野の図書室
Diary目次過去を読む未来を読む
皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。


2002年09月22日(日) 田辺聖子『恋の棺』

ホワンと香水の香りが立ち昇るような作品です。うーん、この妖しい雰囲気は
どこかで……!森瑤子ワールドを思い出します。森瑤子のゴージャスな恋の話は、
胸にもたれますが、田辺聖子の『恋の棺』は、それほど濃厚ではありません。

恋の棺・・わかるようなわからないような言葉です。
「われら、山頂の黒き土におほいなる穴をうがち、人知れず恋の棺を埋めむ」
という西條八十の詩を思いながら、19歳の甥と恋に落ちる29歳の叔母。

こ、これも恋ですか?甥と叔母って、なんというか嫌悪感があるんですが!!
この叔母、ちょ、ちょっとイヤな感じです。ふたりで食事しているときに、
甥の考えていること、感じていることを、今、こう考えているに違いない、感じて
いるに違いない・・って、ひとりよがりですよ。棺に入っているのは甥だけみたい
で、むなしくなっていきます。

「せつない話・山田詠美編」(光文社文庫)の第三話『恋の棺』には、せつなさ
は感じられず、甥の気持ちを弄ぶ叔母に一抹の寂しさが……。こんな寂しい叔母
との恋はせつないです。ということは・・やはり、せつない話なのかも。


せつなさ:☆☆☆





水野はるか |MAIL
Myエンピツ追加

My追加