水野の図書室
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皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。
ホワンと香水の香りが立ち昇るような作品です。うーん、この妖しい雰囲気は どこかで……!森瑤子ワールドを思い出します。森瑤子のゴージャスな恋の話は、 胸にもたれますが、田辺聖子の『恋の棺』は、それほど濃厚ではありません。
恋の棺・・わかるようなわからないような言葉です。 「われら、山頂の黒き土におほいなる穴をうがち、人知れず恋の棺を埋めむ」 という西條八十の詩を思いながら、19歳の甥と恋に落ちる29歳の叔母。
こ、これも恋ですか?甥と叔母って、なんというか嫌悪感があるんですが!! この叔母、ちょ、ちょっとイヤな感じです。ふたりで食事しているときに、 甥の考えていること、感じていることを、今、こう考えているに違いない、感じて いるに違いない・・って、ひとりよがりですよ。棺に入っているのは甥だけみたい で、むなしくなっていきます。
「せつない話・山田詠美編」(光文社文庫)の第三話『恋の棺』には、せつなさ は感じられず、甥の気持ちを弄ぶ叔母に一抹の寂しさが……。こんな寂しい叔母 との恋はせつないです。ということは・・やはり、せつない話なのかも。
せつなさ:☆☆☆
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