水野の図書室
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2003年02月04日(火) 本多孝好『眠りの海』

爽やかなものを読みたくて、表紙に惹かれて手にしたのは本多孝好「MISSING」
(双葉文庫)、五編の短編集です。表題作がないところを見ると、共通のテーマ
が、MISSING(欠けている・失った・行方不明の〜)ということなのでしょう。

第一話『眠りの海』─ 自殺を計ったものの、少年に助けられた高校教師のお話。
見知らぬ少年に問われるまま身の上話をする教師。車の助手席に乗せていた教え
子の女子高生を死なせてしまった事故の真相を解いていく少年の面影に教師が
気づいたものは……。

ミステリアスな少年のおぼろげだった輪郭が、少しずつ縁取りを見せてくる過程
が心地良いです。ひたひたと寄せる波の音が聴こえるような抑え気味に進む文章
に加納朋子を思い出しました。共通項は、せつないミステリ。
不思議な余韻と透明感、もう一度読みたくなりました。


'94年の第16回小説推理新人賞受賞作品です。




水野はるか |MAIL
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