水野の図書室
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2003年03月01日(土) 宮部みゆき『朽ちてゆくまで』

久しぶりに宮部みゆきの本を選びました。「鳩笛草」(光文社文庫)は、表題作の他に
「燔祭(はんさい)」「朽ちてゆくまで」を収録した中編集。以前、「クロスファイア」の
青木淳子が最初に登場するのが「燔祭(はんさい)」だと聞いてから、読みたいリスト
にずっとあったので、ようやく会えたという感じです。

『朽ちてゆくまで』 ─ 幼い頃、事故で両親を亡くし、祖母と暮らしていた智子。
祖母が亡くなり、荷物を片付けていた時、奇妙なビデオテープを見つけます。
映っていた幼い頃の智子には特別な予知能力が──。

SFとミステリの縦糸と横糸がきれいに織り重なって、しっとりとした読後感です。
登場人物がみな親切でいい人なのが、ちょっと気になりますが、こうだからこそ
作品が温かく、主人公がより大きな力に見守られているようで、安心できるのかも
しれません。苦しみを経て成長した智子に、穏やかな明日があってほしいです。
ラストの静けさが余韻となって、タイトルの奥深さを改めて知りました。

明日のことがわかったら、それがgood news でも bad news でも心の平静を保つのは
とても難しいですよね。わからないから、今を楽しめるような気がします。


水野はるか |MAIL
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