水野の図書室
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2003年03月11日(火) 二階堂黎人『クロへの長い道』

私立探偵、渋柿信介は、同じ幼稚園の友だちであるイクコちゃんから犬探しを頼まれます。
イクコちゃんが飼っていた「クロ」を、世話を怠っていたからと、お父さんが捨ててしまい、
かわりに新しい犬が家にいるというのです。「クロ」は、濃いこげ茶色で、全身の毛は異常に
長く、外見は丸々としていて……。「クロ」はどこに──。シンちゃんは無事に「クロ」を
見つけることができるでしょうか──。

「クロへの長い道」(講談社文庫)の表題作ですが、わずか52ページ、収録4編中一番短くて、
あれあれあれまという間にクライマックスを迎えます。んー、あれあれあれまを変換すると、
うふふ→ふむふむ→へぇ〜→うんうん→ほほう→おおお!! といった経過で、ムダがない
ですね〜。(うきゃ!えらそーな感想で・・ども)

シンちゃんの名探偵ぶりとニヒルな語りをピシュピシュ楽しめました。母ルル子、父ケン一との
夕食後の団欒シーン(シンちゃん的には、仕事上の情報交換)には、ほんわかほっこり。。
ルル子とシンちゃんの車中での“なぞなぞ”もホッとします。先月読んだ本田孝好の『瑠璃』
(「MISSING」双葉文庫、2003.02.08記)では、「僕」とルコの胸騒ぎを呼ぶ“なぞなぞ”にドキドキ
でしたし、今日のシンちゃんの“なぞなぞ”には、自然に笑顔になっちゃいます。ふたりの関係
を如実に表す“なぞなぞ”で、作品も人物も顔がはっきりするものなんですねー。

二階堂黎人と本多孝好が、なぞなぞ本を書いたら面白いものができると思うんですが・・。
「孤高な探偵・渋柿信介の暁のなぞなぞ」と「君を愛さずにはいられない僕のせつないなぞなぞ」
なんて、どーでしょ?

おっととと、クロの話がなぞなぞに・・ラストはイクコちゃんのお父さんが悪者にならなくて◎。
読み終えて、私は静かに本を閉じた。明日はまた、新しい小説が待っている。←シンちゃん化


水野はるか |MAIL
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