水野の図書室
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2003年03月29日(土) 夏樹静子『独り旅』

こ、怖いです。こんな女、いるような気がします。悪意を胸に秘めながら、独り旅をする女。
高級旅館の宿帳に他人の名前を書く女。 わざとその名前を少し変えて書く女。
わざと忘れ物をして、世の中の平和を乱そうとする女! 自分が行ったこともない旅館から
忘れ物が届いたら、気持ち悪いですよ〜。少し名前が違っていたら、偽名で泊まったみたい
じゃないですか?
旅館から届いた忘れ物を夫や恋人が見たら、妻や恋人が密会旅行してると思うじゃないですかっ!

高級旅館+偽名+忘れ物=不倫! うわぁ!これって、罪になるんじゃ、罪ですって!
不信の種をまくために独り旅するなんて! そ、そんなに同僚の幸せが憎いんでしょうか?

「乗り遅れた女」(新潮文庫)第三話『独り旅』で、孤独な女の悲しい愉しみを知ることに。
そして、小さな悪意は、とんでもない結末を目の前に突きつけます。メリハリが効いた作品
で、もしかして、もしかして、、、と引っ張られ、ラストでドドーン! 読んでみて下さい。

ひとり旅、一人旅、独り旅・・漢字で印象がずいぶん変わりますね。『独り旅』って、ホントに
ひとりきりな感じがします。「独り」で思い出すのは、皆川博子の『鏡の国への招待』
(「秘密の手紙箱」、光文社文庫、2002.02.09記)。こちらも孤独な女ゆえの愉しみを持ってます。
でもでも、孤独って言ったら、誰もが孤独なんじゃないかな〜。恋人がいても……。


水野はるか |MAIL
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