水野の図書室
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2003年04月21日(月) 浅田次郎『薔薇盗人』

「薔薇盗人」(新潮文庫)の表題作。良かったです〜♪

豪華客船の船長である父へ宛てた少年の手紙形式で物語は始まります。父の大切な
薔薇を守る少年が綴る日常の出来事 ─ それは、学校のことや近所のこと、初めて
の恋人のことや母のことだったりするのですが、少年が自分の誠実さを父に見せよ
うと、ありのままに書けば書くほど、その手紙には母の背徳の影が映し出されてい
きます。

父の呼び方をダディ、キャプテンと的確に使い分け、いろいろな出来事に自分の考
察を添える聡明な少年なら、もしかして、母のことをも知っていたのではないか、
と思わずにはいられません。
この手紙を読む父は・・やりきれないでしょう。

そして、近所に現れる花泥棒の正体は ──。
ラスト2行に、グッときます。父が大切にする薔薇は母でもあると、少年は知っているんですね。
どこか心惹かれるタイトルと共に、深い余韻に包まれる作品です。



水野はるか |MAIL
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