Opportunity knocks
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ジョージ・ソウンダース「パストラリア」
不思議な読後感の小説。 設定自体はすごく変っている。だって、死者がよみがえってどうしようもない家族たちに訓示をたれにくるとか、誰も来ないテーマパークで男女が原始人の真似事をして毎日檻の中で暮らすとか、そんなの普通に考えてありえないもの。 寓話っぽいといえばそうなのかも。何らかの思想なり思考を小説という形で反映させようとする場合、なんとなくこういう形になってしまうということなのかな。
社会の底辺で生きている人間の悲哀や不条理さ、人はなぜそこから抜けられないのか、なぜそういう人間が存在し続けるのかということをそれぞれの短編の中で問いかけていて、普通に読むとそういうくらーい雰囲気が心を重くさせるのだけど、 人間関係の連鎖というか人との結びつきや関係の濃さ(騒動を起こす家族に頭を悩ませながらも結果的にそれを助長させることしかできないというような構図)がそういう世界を作り上げているんだなというのを感じて、ちょっと面白いなと思った。
話題になっている作家らしくて確かに上手いなあと思うのだけど、 個人的にいうと、こういうタイプの文体ならイーサン・ケイニンの方がずっと好き。 それにレイモンド・カーヴァーも同じようにブルーカラーの人たちのことを書いているけれど、レイモンド・カーヴァーが愛情を持ってそういう人達を書いているのに対して、この作家はたぶんそうじゃない、という気がする。あくまで個人的な好みなのだけど。
それでもやっぱり面白いし、いろいろ勉強になる本だとは思う。 6篇の中では「シーオーク」がいちばん印象に残った。
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