Opportunity knocks
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2006年12月07日(木) 無題

フェルナンド・メイレレス 「ナイロビの蜂」
今年はほんとうにどうでもいいようなことで忙しすぎて、あまり劇場まで足を運べず見逃した映画がいっぱいあった。これもその中のひとつ。
公開の時から良さそうだなあと思っていたのだけど、その期待以上に素晴らしかった。

一見、相反するもの、例えれば善人と悪人、新しさと旧さ、進歩するものとそうでないもの、イギリスとケニア、白人社会と黒人社会などなど、それらは相反するようでいて実はお互いがお互いを内包している。つまり、善人の中に悪があり悪人の中にも善があるというか、新しさの中には必ずそれを阻害しようというものが存在し、旧さの中にも新しさを求めようとするものが存在するというか。世界はこれはこれ、あれはあれ、という感じできっちりわけられるものではなく、幾重にも幾重にも内包されているものなんだな、とそんなことをおもった。

あとこの映画は、政治や経済の暗部が絡んだ事件を軸にしながら主人公の男女の生き方をそれに沿わせているのだけど、それがへんに安っぽいものでなくてそれもまたよかった。(以下はかなりねたばれです)
最後のシーン、男があの結末を選んだのは、たぶん、ずっと自分と相手の間にあった気持ちのずれみたいなもの、最後までわかりあうことのなかった部分に対して、自分は何ができるのかと考えた末にとった手段だったんだろうとおもう。
ただ単に、愛してたからとか、さびしくてとか、生きる希望をなくしてとかではなく、あくまで能動的にそういう行動を選んだんじゃないかな。
だから最後が悲劇にならずにすんだというか、わたしはなんとなくそうおもった。そしてそんなところがすごく共感できた。

監督は「シティ・オブ・ゴッド」を撮った人らしく、ざらっとした質感の残るような映像がすばらしかった。
できればもっと大きなスクリーンでみたかったな。ほんとうに。


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