日々雑感
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2001年12月18日(火) 静かな声で歌う

風邪をひいたのか熱っぽい。持ち帰りバイトを広げたり、コタツの周りに積んである本を手にとってめくったりしながら、一日中家の中で過ごす。

『小山清全集』をやっぱりいいなあと思いながらぼんやりと読む。短編と随筆ばかりが収められているのだが、はじめから順番にではなく、パラパラとめくって気の向いた所から読んでいる。街で見かけた風景。懐かしい友人からの便り。ひとりきりの生活。日々の何でもないことが書かれていくのだが、湿っぽさや暗さはなく、淡々とした描写の向こうに何か静かで遥かなものの存在が透けて見える。ささやかだが遠くまで聞こえるような声で語る人だ。

「君の歌はひどく静かだ。人目につかない所で、人目につかない心だけが耳にするやうな歌だ。」(「風の便り」)

「誰かに贈物をするやうな心で書けたらなあ。」(「落穂拾い」)

夜遅くに地震があった。地震がくると必ず、外でカラスがいっせいに鳴き出す。ふと、夜にはカラスはどこで何をしてるのだろうと考える。木や電線の上に止まって寝ているんだろうか。闇にまぎれて見えていないだけか。そういえば明け方近くになると近所の猫や野良の猫も妙に活発に動き出す。夜はずいぶん明るくなったけれど、見えていない部分もまだまだあるのだろう。


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