日々雑感
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2002年01月03日(木) 氷の上を行く人馬の群れ

温泉へ行く。実家から車で1時間弱の町にある温泉だ。その町までは、大きな湖を干拓した道を通っていく。海へとつながる残存湖は凍り、その上にも雪が積もってどこまでも真っ白で平らな景色が広がっている。

そこは市の立つ町だったので、月に二度の市の日には各地から人が大勢集まったらしい(今でも朝市で有名である)。かつて、まだ湖が広がっていた頃は、実家のある町からも人々が馬をひいて凍った湖面を渡り、市を目指したという。氷の上に群れをなす人や馬の長い列。そこを、今は車で渡っていくのだ。

目当ての温泉は、名前を知る人は少なく、地元の人びとが集まってくるような所である。山間なので雪が深い。町の中に川が流れていて、それに沿って走っていくと温泉場が見えてくる。

何の飾り気もない、お湯と簡単な宿泊施設があるだけの温泉である。けれど、お湯の質が抜群にいい。ほのかに硫黄の匂いがする乳白色のお湯で、身体にやわらかい。ぬるめなのでいつまでも入っていられるのだが、上がると身体がすっきりしているのに驚く。なぜか体重も1kgほどは必ず減る。湯気でけむった窓の向こうには雪山。軒下につららも下がっている。

「湯の又」などの地名があるように、ここは古くからの湯の里である。氷を渡って市にやってきた人びとも、お湯につかって温まっていったかもしれない。今、目にしている眺めのうしろに、様々な時代の人々の暮らしや思いが層をなしているのだ。

お湯から上がり、再び実家まで車を走らせる。湖面の氷に穴を開けてワカサギ釣りをしている人が見える。寒そう。温泉で減った分の体重は、帰ってからのおもちですぐに戻る。


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