日々雑感
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午後から外を歩く。今日は寒い。雪らしき白いものも舞っている。
空き地の横を通って行く。以前はここに団地が何棟も並んでいた。子どもたちが遊んだり、それをお母さんが眺めたりしていた光景を覚えている。ある日、ブルドーザーが入って取り壊しが始まり、コンクリートの塊ばかりになったと思ったら、それも片づけられて今はだだっ広い更地になっている。そして、がらんとした更地の中央にぽつんと残された三本の桜の木。人がいた痕跡は何もなくなり、ただ、木だけがそこに残っている。今度の春もその桜は咲くのだろう。周りで眺める家族たちはいなくとも。
ある春のことを思い出す。ちょうど実家への帰省と桜の時期が重なったので、母親の運転する車で桜並木まで出かけた。北の地方の桜は遅いのだ。遠くに見える山にはまだ雪が溶け残り、それを背景にしてまっすぐな道の両側に桜の木がつづいている。まだ若い桜だが、淡い白色をした花をいっぱいに咲かせている。「あと5年も経てば、もっと見事になるよ。」母が言う。
そのとき私は、どんな想いでその桜を見るのだろう。そして、今隣に座っている母親は、私の周りにいる人たちは皆どうしているだろう。
何十年と時間が経ち、この桜が大木になってトンネルのように車道を覆うとき、ひょっとしたら自分も、周りの人も、誰もこの世にいないかもしれない。それでも桜は変わらず咲くだろう。時間を養分にするように、ますます美しく咲くだろう。
夜、休日出勤だった友人と待ち合わせて夕食。そのあとお茶。友人はかぼちゃのプリンをたのむ(味見させてもらったら美味しかった)。駅で別れ、歩きながらの帰り道、夜空にはまだ冬の星座がある。6つの一等星が遠いところで光っている。人をまばらに乗せた終バスが行く。
気づくと、ガラス店だったはずの建物が煙草屋に変わっている。夜に通りかかると、よく仕事を終えた店員さんたちが食べ物や飲み物を持ち寄って一杯やっていて、その光景をいいなあと思いながら眺めていたのだ。いつの間に煙草屋になったのだろう。ほんとに街の風景はあっという間に変わってゆく。家路を急ぐ。
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