日々雑感
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渋谷のスタジオで練習。今日は主に歌の練習をする。スペイン語の歌がほとんどなのだが、発音が難しい。どうしてもカタカナ発音になってしまう。難しいけれど、スペイン語の響きは好きだ。歌にしても映画などの台詞にしても、スペイン語を聞くとなぜだかしっくりきて耳に心地いい(意味はとれなくとも)。
夕方、スーパーで買い物。甘夏とはっさくと伊予柑が並んでいる。どれも同じくらいの大きさで、皮の色や匂いなどが微妙に違う。迷ったすえ、甘夏を一個買う。他の二つにくらべて、名前の通り少し甘い匂いがする。
そういえば、小学校の教科書に夏みかんの話があったと思い出す。確かタクシーの運転手が出てきて、車内に夏みかんがあってというような話だった。他の内容は全然思い出せない。気になって友人に電話で尋ねてみるが、覚えていないという。
パソコンに向かい「タクシー」「夏みかん」で検索をかけてみる。何と一発で出てきた。あまんきみこさんの『白いぼうし』という作品らしい。松井さんはタクシー運転手。ある日、小さな男の子が白い帽子の中に隠していたモンシロチョウをひょんなことから逃がしてしまう。代わりに実家から送られてきたもぎたての夏みかんを一個、帽子の中にしのばせる松井さん。車に戻ると、小さな女の子がお客さんとして乗ってきて。こんなお話。インターネットの威力を思い知る。あまりにも簡単にわかって、何だか物足りない気もする。
小さい頃に読んだ物語や目にした風景が、前後の脈絡をなくしても、こんなふうにしっかりと刻まれていたりする。それを手がかりにして、どこまでたどっていけるだろう。
甘夏を机の上に置くと、とたんに部屋中に匂いが広がる。夏みかんをいっぱいに積んで走っていた松井さんのタクシーにも、きっとこの匂いが満ちていたのだ。食べるのはもう少し待つことにする。
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