日々雑感
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電車の中で『文学交友録』庄野潤三(新潮文庫)を読む。交友のあった文学者やについて語ったもの。井伏鱒二、三好達治、佐藤春夫といった大先輩から、吉行淳之介や安岡章太郎、最近亡くなった近藤啓太郎などまで。
河上徹太郎についての記述がいい。庄野家と河上家は家族ぐるみのつきあいがあり、クリスマスにいっしょに過ごすのが年中行事になっていたらしい。みんなが一つの部屋に集まり、食事したり、おしゃべりしたり、歌をうたったり、ピアノをひいたりする。そうしたある日のことを、小さかった庄野の長女が書いたもの。
相当酔ったてっちゃん(河上徹太郎)が、お父さんに、 「おい! 庄野」 と怒鳴って、握手してから急に真面目な声になって、 「お互いにいいものを書きましょう」 とおっしゃったことがあります。お父さんが、それに対して、本当に是非お互いに元気でいい仕事を残したいという意味のことをいっていると、今度は私たちの方を向いて、 「何かもしょもしょいっているよ」 といわれ、おかしかったです。
庄野潤三が書き記す光景はどれもほんとうに幸せで、だからこそ読んでいて泣きそうになることがある。それが、どんなに奇跡的でかけがえのないものであるか。儚く、それでいて強いものであるか。「幸せ」というのは、何も欠けていない状態を指すのではないと思う。
夜、「ミュージックステーション」で奥田民生をボーカルに迎えた東京スカパラダイスオーケストラの新曲を聴く。ギターを手にしていない奥田民生を見るのは久々だが、お揃いのスーツ姿もなかなか似合って、いい感じだ。そしてボーカルがすばらしい。この人はやっぱり稀有な歌い手だと思う。どんな歌にでも生命を吹き込むことができる。CDがほしくなる。
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