自転車に乗る夢を見る。海辺の道をひた走り、やがて、なつかしい場所に出た。ずっと前から知っているのに今ようやく辿り着いたような、そんな雨上がりの港町だ。白っぽい蛍光灯のともる土産物屋には干物や貝殻のネックレスなどが並ぶ。嵐のあとの青黒い海と、強い潮の匂い。夢で見たのか、実際に知っているのか、ひどく曖昧な場所の記憶がたくさんある。